Global Wind (グローバル・ウインド)
LAサルサ・フェスタレポート

中央支部・国際部 松島 大介

 2015年5月20日から24日までに開催されたLA(ロスアンゼルス)サルサ・フェスタに出場してきましたので、その様子をご報告します。

【ラテンダンスとは】
 日本の踊りにも、日本舞踊、阿波踊り、エイサー、盆踊りなど、いろんな種類があるのと同じように、ラテンダンスも、サルサ、バチャータ、キゾンバ、チャチャ、マンボ、メレンゲ、レゲトン、ルンバ、ズークなど、いろいろと種類があります。今回私が参加したLAサルサ・フェスタでは、サルサ、バチャータ、キゾンバが多く踊られていました。
 サルサは、基本的に男性と女性でペアとなって踊る比較的早いリズムで踊るラテンダンスの1つです。サルサソースのサルサと同じ語源で、いろいろなダンスが合わさったダンスです。そのため、男女ペア以外にも、男男ペア、女女ペア、女性だけで踊ったり、実に多様性をもって進化しています。 
 サルサダンスの起源は、キューバのソンといわれています(ほかにも諸説あります)。サルサにも、ステップの仕方などの違いで、LA on1(エルエーオンワン)、NY on2(ニューヨークオンツー)、キューバンと大きく分けると3種類に分けることができます(細かく分けるともっとあります)。
 サルサバーでは、サルサの次に多く踊られているバチャータというラテンダンスの起源は、ドミニカ共和国の踊りといわれています。サルサとの見た目の違いは、サルサは前後の動きに対して、バチャータは、左右の横の動きになります。その他、ステップも違いがあります。サルサの場合は、8拍子(これを1クラーベと呼びます。)で考えると、LAon1の男性の場合、ステップは(正確にはちょっと異なりますが、便宜上簡易的に説明します)左足ステップ(1拍)、右足ステップ(1拍)、左足スロー(2拍)、右足ステップ(1拍)、左足ステップ(1拍)、右足スロー(2拍)となります。タイミングもクイック・クイック・スロー、クイック・クイック・スローという風にスローが入ります。
 一方、バチャータは、男性の場合、左足(1拍)、右足(1拍)、左足(1拍)、右足タップ(1拍)、右足(1拍)、左足(1拍)、右足(1拍)、左足タップ(1拍)という風に、サルサのスロー部分が、体重を足に乗せきらないタップに変わります。
 比較すると、以下のスローとタップのところがステップ上、異なります。
 サルサ   (前後に) 左>右>左~~>右>左>右~~ (男性on1)
 バチャータ (左右に) 左>右>左>右>右>左>右>左

 私のイメージではバチャータのほうが、失恋歌が多いためかどうかわかりませんが、男女の密着度がサルサよりは高く、官能的な印象です。もちろん、サルサと同じく、バチャータにもいろいろと種類があり、密着が少なく、軽快な踊りも当然あります。
 こういう密着が高いのを見て、周りからはいろいろとうらやましいね~といわれるのでしょうか? たしかに、初めて会った女性の腰に手を回すことは普通ないですからね。
 ちなみに、少し前までは、サルサバーでバチャータの曲がかかると踊らず(踊れず?)に休憩時間のようでしたが、最近ではサルサと同じく普及しており、バチャータだけもイベントも増えてきています。

 そして、最近、キゾンバというダンスも日本では普及し始めてきています。キゾンバは、もともとは南アフリカのアンゴラのダンスから派生したといわれています。このアンゴラのダンスはいろいろなダンスの起源といわれています。たとえば、アンゴラの伝統的な踊りであるセンバが、ブラジルに渡りサンバになっています。なお、サンバというと浅草のサンバ祭りのセクシーな衣装を着て踊っている人たちを思い出す人が多いと思います。サンバにもペアダンスがあり、ペアの場合はSamba de Gafieiraといわれ、日本ではガフィエイラ、ガフィエラなどと呼ばれています。
 話を戻して、このキゾンバは見た目、チークダンス(?)のように、右のおでこ同士をつけることもあるため男女の密着が高く、サルサを踊っている人でも、あれは無理という人がいます。しかし、このキゾンバは、一定の踊りのルール(ステップ)はありますが、サルサ、バチャータ以上に踊りの自由度が高いため、音楽に合わせて気持ちよく踊りたいという人をはじめ、日本でも人気が出始めています。とはいえ、まだ執筆時点の2016年2月現在、東京ではイベントは増えてきましたが、全国的にはまだ普及していません。

【LAサルサ・フェスタとは】
 LAサルサ・フェスタは、サルサの世界的な普及に尽力しているアルバート・トレス氏が主催しているラテンダンスイベントの1つです。アルバート氏が世界各地で開催されているがサルサ・コングレスというサルサイベントに出場し、そこで選出されたチームたちが各国の代表として、LAサルサ・フェスタに出場することができます。そのほかにも、順位を決める、ワールドラテンダンスカップなどもありますが、今回は点数をつけない発表会的なイベントでした。
 私は、2014年10月に年1回開催される、日本で最大級のサルサイベントであるジャパン・サルサ・コングレスに、たかてん先生が率いる東京と仙台の合同チーム「TK allure & Salsa manias」の1メンバーとして出場させていただきました。この年は60チーム近くが参加し、約20チームがLAサルサ・フェスタの出場権を得ていました。
 しかし、旅費などの費用や仕事などのスケジュールが合わないなどの問題で、ペアダンスであるがゆえメンバーが揃わず出場を辞退するチームも多いみたいです。現地でほかのチームに聞いたところ、やはり、交通費、出演料(アマチュアなのですべて自腹です)等を含めると、それなりの金額がかかるので、2年に1回出られればよいということを話していました。たしかに、私も旅費、滞在費、出演料等を含めると20万円近くかかりました。
 そのためか、今回は8チームが参加しました。日本以外からも、アメリカ、カナダが多いのはもちろんですが、イタリア、キューバ、ドミニカ、プエルトリコ、メキシコ、UAEのほか、国を超えた混成チームなど、様々な国からの人が参加していました。

【LAサルサ・フェスタ当日】
 会場は、LAのダウンタウンにあるTHE WESTIN BONAVENTURE HOTELにあるカンファレンスルームの2フロアを貸し切って開催されました。
 会場前のスペースには、靴、衣装、CDなど物販販売があります。特に、LAサルサ・フェスタ公式Tシャツは大人気で、あっという間に品切れになっていました。品質も生地の薄く、それなりで、値段も20ドルとそれなりするのですが、やっぱり記念、お土産グッズはよく売れるのですね。
 イベントについてですが、前々夜祭は残念ながら参加できませんでしたが、会場のウェスティンホテルから無料フリーシャトルがあり、地元のサルサダンスバー&レストランで夜22時~26時まで開催されました。
 前夜祭から最終日まで、毎日、夕方から19時までの1部、20時から23時ぐらいまでの2部は、各国から参加されるチームの振付パフォーマンスが行われます。イメージとして、1部はアマチュア、2部はセミプロ、プロ、アルバート・トレス氏の推薦チームが出場します。当然、私のチームはアマチュアなので、1部です。
 そして、深夜から2時間ほど生ライブバンドが入り、その後は朝の6時まで開催されました。スケジュール上は23時からライブとなっていますが、実際は深夜0時半ぐらいからの開始と、ここらへんはラテン気質なのか、細かいことは気にしてはいけません。遅くなっても、文句を言っている人はいません。なんだ、まだ始まっていないのか~という感じです。

 今回、用意された夕方から朝までのフリーダンス用の部屋は、サルサルーム、バチャータルーム、キゾンバルームの3種類でした。ちなみに、日中は、ホテルのプールサイドでも踊れるのですが、今回は肌寒かったため、誰もいませんでした。個人的には楽しみだったのですが(笑)
 
 さて、パフォーマンスチームとして参加するにあたっては、基本的にはチームメンバーが全員揃ってから参加登録を正式に行います。その際、何が起こってもイベンターには責任がなく、自己責任で参加するような旨の契約書にサインします(舞台から落ちてけがする人もいますしね)。日本のイベントではここまですることはなかったのですが、さすが契約社会のアメリカですね。
 本番当日は、当然、午前中から出演順にリハーサルが始まります。当たり前といえば、当たり前ですが、すべて英語のためチームメンバーのほとんどは話を全く聞いていません。いろいろと、どんな状況になったら、出場できなくなるかなどと警告的な説明をしているのですが、みんな余裕ですね。単に英語を理解していないだけのことかもしれませんが。
 このリハーサルでは、チームが踊る1曲分しか持ち時間はありません。よって、状況を知っている人は、事前にステージに立ち、自分の踊るポジションがどこになるのかなど、チェックしています。しかし、日本のほとんどのチームはおとなしいもので、ステージの端とかで他のチームに迷惑をかけないようにチェックしていましたが、我がチームは他国のチームと同じく、堂々と真ん中で、説明を始めるので、ステージから降りなさいと言われるまでしぶとくやっていました。
 あとで話を聞いてみたら、ほかのチームは前日にチェックしていたらしく、初参加のため要領がわかっていないだけでした。でも、時と場合によって、郷に入っては郷に従えも必要だと感じたのも事実です。
 さて、リハーサルの順番が来て、曲がかかると全く違う曲。先生が持ってきたCDを間違えたようです。当然、このままだと、リハーサルできなくなります(これもアナウンスされています)。不測の事態に備えて、ステージ横においていた予備CDでなんとかリハーサルを行うことができましたが、やはりいろいろと考えて、最低限の準備しておくことは重要です。
 リハが終わると、リハの動画を見ながら、パフォーマンスの最終確認&女性たちは舞台化粧など、バタバタと準備を進めます。本番近くになると、パフォーマンスチーム控え室へ。そこでチームが揃っているかの最終確認を行い、本番まで待ちます。しかし、みなさん本番前でも緊張することなく、記念撮影などを行っています。リラックスをしていていいムードです。

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                控え室でチームメンバーと記念写真

 出演順番となり、ステージ横へ。さすがに、少し緊張していましたが、みんなでこのイベントを楽しむぞーと円陣を組み、本番へ。
 3分弱の演技ですが、本当にあっという間でした。多少の失敗もありましたが、みんな楽しく踊りきった、いい笑顔でした。
 その後は、他チーム演技を鑑賞。世界は本当に広い。我々が苦労した踊りを、難なくやっている。しかも、それを遙かに上回ることを見せてくれる。本当に良い刺激を受けました。このような人たちと同じ舞台に立てたとは本当に感激です。

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              メインイベント会場で、サルサを楽しむ

 深夜の生バンドでのフリーダンスでは、1000人以上がいると思われる会場で、言葉は全く話せなくても、年齢に関係なく初めて会う人たちと踊りを楽しみました。そして、南米の人たちと踊ると、リズム感とか体の使い方は本当にうまく、自分がうまく踊れているのではないかと勘違いするぐらいでした。
 踊りというと、昔の私と同じで尻込みをしてしまう人が多いと思うのですが、こういう踊りの場で、お酒を飲むだけではなく、ダンスを通じて、世界中の人と非言語コミュニケーションをとれるのは素晴らしいことですね。
 今後もより楽しく、気持ちよく踊れるように精進していきたいと思います。
 個人的には、貴族階級の踊りが起源の社交ダンスではなく、どちらかというと、サルサもバチャータも奴隷の人々が始めたダンスであるイメージがあるからなのかと思うときもありますが、サルサダンスをしている人の社会的な見方はまだまだ厳しいと感じています。このサルサダンスの地位向上にも何かしらを貢献したいと思います。

 話は変わりますが、昨年に行われたジャパン・サルサ・コングレス2015でも、2016年5月に開催されるLAサルサ・フェスタの出場権を得ることができましたが、チームメンバーの都合が悪く、今年は辞退することになりました。

 参考までに、チームメンバーが作成してくれた動画(LAの観光写真も入っています。)がありますので、ご興味あればご覧ください。私もときどき映っています。
https://www.youtube.com/watch?v=jKqyb3sgeV0

 サルサをはじめ、ラテンダンスをやっている方、興味のある方、話を聞きたい方はお気軽に声をかけて下さい。フラダンス、ベリーダンスなど、ラテンではなくてもダンスをやっている人もぜひ情報交換しましょう。

 最後に、今回のLAサルサ・フェスタでは、SHJ(Salsa Hotline Japan)の村上さんをはじめ、いろいろな方にお世話になりました。この場を借りて、御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

■松島 大介(まつしま だいすけ)
名古屋商科大学大学院マネジメント研究科修了。観光アシスタントコンサルタント、青年海外協力隊(タイ王国・コンピュータ技術)を経て、2016年2月現在、IT関連企業の総務課勤務の企業内診断士。また、東京都中小企業診断士協会中央支部国際部副部長として活動中です。
 daisuke@mtsm.jp