Global Wind (グローバル・ウインド)
ミャンマー・レポート2012 ~最近のミャンマーの状況について~

中央支部 高鹿 初子

 11月22日~29日に実施された今年度の東京都中小企業診断士協会ミャンマー・タイ ミッションで、ミャンマーを訪問しました。今回、私が訪問したのは、ミャンマー最大の都市であるヤンゴンと世界三大仏教遺跡の1つであるバガンの2都市です。最近のミャンマーの状況やその時に感じたことをご紹介いたします。
1.ミャンマー概況と最近の状況
 ミャンマー(正式名称はミャンマー連邦共和国、1989年までの名称はビルマ)は中国、ラオス、タイ、インド、バングラデシュと国境を接しており、日本の国土の約1.8倍の広さを持つ国です。首都はネピドー(2005年までの首都はヤンゴン(旧名称はラングーン))で、人口は約6000万人で公用語はミャンマー語です。識字率は高く、仏教が生活に根付いておりとても穏やかな社会です。2011年の1人当たりGDPは824ドルとASEAN諸国の中でも低く、人件費はベトナムの3分の1程度と言われています。
 政治的・経済的には、1988年以来の軍事政権によりアメリカ・EU諸国から経済制裁を受けて国際社会から孤立した状況が続いていました。
 2010年11月に総選挙が行われ、2011年2月にテイン・セイン大統領を選出し、3月30日に新政権が国会で承認されました。民主化・解放路線による経済成長が大きく期待されています。私達が訪問する数日前の2012年11月19日にはアメリカのオバマ大統領がミャンマーを訪問してテイン・セイン大統領と会談を行っており、世界的にも大変注目が集まっている国です。
2.ミャンマーへのインフラ支援
 ミャンマーへの企業進出など大きな期待が高まっていますが、交通網や電力などのインフラ整備がまだ十分でない面もあります。ヤンゴンでも、自家用車の保有者が増えたために朝夕に交通ラッシュが発生するようになった、ということで、私達も移動のために30分ぐらい余裕をみていました。また、ホテルでも何回か停電が起こりました。
 このような中、日本政府でもミャンマーへのインフラ支援を行っていく動きがあります。2012年2月、日本政府はヤンゴン郊外のティラワ港経済特別区の上下水道、道路、光ファイバーケーブル、次世代電力網といった最先端のインフラ整備を請け負いました。ティラワ港経済特別区はヤンゴンから南に23キロほどの場所にある約2400ヘクタールの開発です。さらに、2012年4月の日本・メコン地域諸国首脳会議で野田前首相が日本はミャンマーに500億円規模のサポートを行うと発言しています。これは、ミャンマーの電力施設の改修や、道路や橋等のインフラ案件が対象になります。
 また、2012年12月にICTインフラ整備としてミャンマー中央銀行の業務効率化のための初のクラウドシステムも日本企業によって構築されたとの報道がありました。
 日本以外にも、中国や韓国はじめいろいろな国がミャンマーへの支援を始めており、これからミャンマーという国は大きく変わっていくと思われます。
3.ミャンマーでの見どころ
 ミャンマーでは新旧様々な風景をみることができます。
(1) 仏教寺院群
 まず、ミャンマーでの見どころの1つ目はなんといっても仏教寺院です。ヤンゴンにもバガンにも数えきれないくらいの寺院があります。これだけの寺院を短期間に回ったことがない、というくらいに寺院をまわり、とても幸せな気分になりました。何年分ものご加護を受け取ったような気分です。ミャンマーでは、寺院の入り口で靴と靴下を脱いで素足でまわります。素足で歩くのがとても気持ちがいいです。寺院では日本語のガイドブックなども販売されているところもありました。
 ヤンゴンではミャンマーで最大のシュエダゴン・パゴダが圧巻です。エレベーターで上に上がると高さ約100メートルの黄金のストゥーパを中心に60余りの仏塔などが林立する空間に到着します。黄金が目にまぶしい空間でした。ミャンマーでは生まれた日の曜日が重視され基本的性格や運勢に影響を与えるとされています。曜日ごとにシンボルとなる動物と方向が決まっており、曜日の神様にお祈りします。
 バガンは、カンボジアのアンコール・ワット、インドネシアのボロブドゥールとともに、世界三大仏教遺跡のひとつとされており、イラワジ川中流域の東岸の平野部一帯に、2000個以上の大小さまざまな仏教遺跡・仏塔が林立しています。その中でも圧巻なのは黄金のシェエズィーゴン・パゴダ。青い空と白い雲、そして黄金の寺院がとても映えていました。
 外階段で上に登れるようになっているシュエサンドー・パゴダから見る風景、さらに夕日は絶景でした。このような風景を見てゆったりした気持ちになれる、癒しの空間だと感じました。
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(光輝くシュエダゴン・パゴダ)    (シェエズィーゴン・パゴダ)
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      (シュエサンドー・パゴダからの風景と夕日)
(2) 市場
 ヤンゴン、バガンでは昔ながらの市場があります。バガンで訪れた市場はとても活気がありました。野菜や果物も豊富で、食生活が豊かであることがわかります。食べ物のほかに衣類や雑貨も同じ市場で売られていました。
 丁度年末だからか、いろいろな種類のカレンダーも売られていました。ミャンマーのカレンダーでは曜日が重視されるからか、縦に曜日が書かれ、曜日にはシンボルとなる動物も描かれています。
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(活気あふれる市場)        (ミャンマーのカレンダー)
(3) ショッピングセンター
 ヤンゴンには新しいショッピングセンターができています。ジャンクション・スクエアは総売場面積約27,900m²で、館内には、ファッション、コスメ、ジュエリー、携帯電話関連などのショップ、銀行やシアターなども入っている日本にもあるような大型商業施設です。ミャンマーにもこのような商業施設があることにとても驚きました。
 このようなショッピングセンターで日常的に買い物をする富裕層がいる、ということで少しずつ貧富の差がでてきているのではないでしょうか。このような施設があることで、ミャンマーに進出してきた外国企業の駐在員も生活ができる基盤ができてきていることも感じました。
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(ショッピングセンター正面)    (ショッピングセンター吹き抜け)
4.おわりに
 私にとって、今回が初めてのミャンマー訪問でしたが、とても穏やかな国民性と心が落ち着く寺院群など、また訪問したいと思う国でした。ミャンマーは昔の日本を思わせる(そんな古い日本を知っているわけではないですが)、そんな懐かしさを感じる国でした。男性の中には巻きスカート「ロンジー」を履いている人もいるし、女性や子どもの中には「タナカ」と呼ばれる日焼け止めのおしろいのようなものを顔に塗っている人もいて、ほのぼのした雰囲気が残っています。
 12年ぶりに日本からミャンマー直行便がANAにより再開されました。今まではビジネスクラスのみでしたが、2013年1月からはエコノミークラスもできるそうです。ますますミャンマーに行くのが便利になり、訪問する日本人も増えることと思います。
 世界の注目を集めているミャンマーですが、視察や観光だけでなく、軍事政権下でも仏教寺院を大切にしてきた国民性、人件費が安いことや今後のインフラ整備の動きなどを背景に、ミャンマーへの進出を考える日本企業も増えてくると思います。私達、中小企業診断士としても企業からのミャンマー進出について聞かれることが出てくるのではないでしょうか。
 外国資本が入ってくることによる貧富の差の拡大や生活環境の変化など、変わってほしくないという思いがありますが、これから大きく変わっていくであろうミャンマーの動向について、今後も注目していきたいと思います。
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                   (ヤンゴン市内を眺めて)