Global Wind (グローバル・ウインド)
フィリピンの日本食品事情
~日本食の良さや健康イメージを活かした現地向けの食品開発~

中央支部・国際部 山本 邦雄

 
 フィリピンにおいては、中・高所得層をターゲットとして、健康によく、安全であることをアピールしたパッケージの商品を開発することが有効です。また、インターネットでのネット販売も、今後は注目される販売方法です。
 フィリピン共和国は、人口約9500 万人、面積は約300k㎡と日本の約80%の国土を持ち、ルソン島を中心に大小の島で構成される島国です。気候は亜熱帯性で温暖ですが、しばしば台風などの被害にみまわれています。
 主な産業は、温暖な気候を利用した果実を中心とした農業で、全産業の約15%を占めています。また、製造業も30%と高い比率にあり、工業製品の他、豊富な農産物を原料とした食品加工業も製造業の約40%と、比較的高い比率を占めています。
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【比較的堅調な経済成長】
 フィリピンの国内総生産は約20 兆円で、日本における埼玉県に匹敵します。GDP 成長率は、フィリピン国家統計局によれば、2011 年こそタイの洪水による製造業への影響や日本の東日本大震災による日本との輸出入の鈍化などで、3.9%と低調であったものの、2010 年は7.9%、2012年は6.4%と、高い伸びを示しており、リーマンショック以降も比較的堅調に推移しています。
 貿易の観点から調査すると日本が輸出入ともに最大の相手国であり、かつ親日的であることから両国の密接な関係が続いています。
【国内消費】
 フィリピンの一人当たりのGDP は、2,345 米ドルですが、一日2 ドル未満で生活する国民は約4 割に達しており、特に島嶼部に貧困層が集中しています。
 一方、首都マニラを中心に、都市化が進んでおり、人口の約12%、約1200 万人が集中し、中・高所得者が増加しています。この中・高所得者を中心に消費が伸びており、国家統計局によれば、民間消費支出は、年6%程度で伸張しています。その中でも、Philippine Food & Drink Report 2012によれば、食品市場は2016 年までに年5.6%の成長が見込まれており、有望視されています。実際に、都市部においては小売店舗の開店も相次いでいます。
 出店の形態としては、総合スーパーマーケット、コンビニエンスストア、公営市場などですが、日系のコンビニエンスストアの出店が旺盛であり、日本製品、特に日本製食料品が数多く紹介されており、フィリピン国民に受け入れられています。
 また、ネット通販も普及しており、国民の約30%が利用していると言われています。
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【安心・安全指向】
 経済が成長する中で、中・高所得層が増加するのに伴い、商品の安全性や品質に対する意識も高まっており、特に食品に対して、品質面での安全性や健康によい成分を求める国民が増えています。またフィリピンは、他国と比べてみてもライフスタイルにあった品質の良いものを買うという国民の消費意識が高いことが、下表でわかります。
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 このような傾向は、元来、品質面で評価が高かった日本製食品の人気をさらに高めています。味の素の「AJI-NO-MOTO」の調味料、「ヤクルト」や大正製薬の「リポビタン」などの飲料、日清食品の「カップヌードル」などの麺類など、日本でもおなじみの食品を始め、中小メーカーの食品にあっても、日本製品ということで、少々価格が高めでも好調な販売が続いています。
 中には、日本製ではないにもかかわらず、日本を連想させる名前や、漢字、カタカナを表記した製品が出回るなど、日本製品のブランドにあやかった商法も見受けられます。
近年フィリピンにおける中・高所得者層が日本ブランドの食品として求めているのは、
① 日本の安全な加工技術で製造された商品
② 日本の伝統的な食材を利用した美味しい商品
③ 健康を考えた商品
であると考えられます。
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【フィリピンに受け入れられる食品とは】
 以上のような傾向を考えると、フィリピンに進出する企業は、下記のように、日本食の良さや健康イメージを活かした現地向けの食品開発を行うことが重要だと思われます。
① 製品開発
 中、高所得層は健康志向であり、調味料を使わずに素材の味を活かす、またはカロリーの低い食材や調理法にしたフィリピン人の嗜好に合わせた美味しい製品を開発すること。
 また、フィリピン人は、新しいもの好きなため、常に海外や飲食業以外の動向も見ながらフィリピン人に人気のあるエビを使用した新しい美味しいメニューなどを開発すること。
② パッケージ開発
 「健康」や「安全性」に対する意識も高まってきており、日本食は他国産に比べ健康によいという一般的なイメージがあるため、健康に良い、安全に配慮している等具体的な商品価値(イメージ)がわかる日本語文字の表記や日本語らしいアクセントの商品名を使用した消費者にアピールできる商品パッケージを開発すること。
山本 邦雄(やまもと くにお)
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