Global Wind (グローバル・ウインド)
ミャンマーの新聞事情についての見聞録

中央支部・国際部 油谷 博司

始めに
 昨年の11月22日から29日の日程でミャンマー・タイ海外研修ツアーに参加しました。その結果は、別途報告書にまとめられますが、恐らくそこではカバーされないと思われる点で個人的に見聞したことを、特に現地の新聞について、番外編のつもりでまとめてみました。
なぜ現地新聞か?
 以前、仕事の都合で特にアジアに出張する機会が多く、また一度出張すると1箇所に2~3週間と比較的長く滞在することが多かったため、うっかりすると世の中の動きに疎くなることがよくありました。そこで現地のニュース源に関心を持つようになりました。ニュース・ソースとしては、TVや新聞、最近ではインターネット等の電子版でしょう。
 TVの場合、ビジネス目的で外国人が滞在するようなホテルであれば部屋のTVでCNNやBBC、CNBC、Bloomberg等が見られます。うまくするとNHKも見られるかもしれません。だが、それらから得られるのは、主要国や日本のニュースが主であって、その他の地域は何か大きな事件でも起こらない限り報道されません。実際に、特にアジア諸国に出張した場合、今滞在している国で何が起きているのか分からないことになります。地元TV番組なら、問題は解決しますが、特に英語圏でなければ言葉の問題が残ります。更に、こちらが見たいときにTVでニュース番組をやっているとは限りません。インターネット等の電子版なら時間の問題は解決されますが、地元のニュース・サイトを検索する手間があり、またホテルによってはインターネット接続に追加料金が課されたりします。
 そこで、現地の新聞が一番手軽なニュース・ソースであると(勝手に)結論付けています。また、日本について現地でどのように報道されているかも見ることができ、話題の種にも使えるという利点もあります。やはり言語の問題があるので、関心の中心は、現地語ではなく英字(英語)新聞になります。香港ならSouth China Morning Post、ソウルでは、Korea Times、シンガポールでは、一般紙のStraits Timesやビジネス紙のBusiness Times、バンコクでは、Bangkok Post やNations、クアラルンプールでは、New Straits Times、ジャカルタでは、Jakarta Postなどです。これらなら、ホテルのギフトショップや街中のコンビニ、書店、新聞・雑誌の売店などで簡単に購入できます。また、ホテルのビジネス出張パッケージに新聞配達サービスが含まれていれば、毎朝配達してもらうこともできるでしょう。
 日本語の場合、政治・経済・社会・スポーツ等のニュースを掲載する「総合紙」レベルと言える刊行物は、インドネシアの『じゃかるた新聞』(日刊)を例外として、ほとんどが週刊で、入手できる場所も、大抵は日本人が多く集まる場所に限られると思います。尚、もし中国語が読めれば、特にアジアであれば、大抵の国で中国語の日刊新聞が発行されているようです。
ミャンマーの新聞
 さて、ミャンマー、特にヤンゴンの新聞事情です。今回はヤンゴンでの滞在が2日間のみで、かつ団体での移動であったためバスでの移動が中心という極めて限られた状況下で新聞を探すこととなりました。まず、文献等で調べると、ミャンマーで日刊紙は現在3紙あるようです。内1紙は、New Light of Myanmarという英語の新聞(写真1)で、残りの2紙がミャンマー語です。これらは全国紙で、これらの他に日刊の地方紙が1紙(ミャンマー語)あるようです。日刊紙の数が少ないにもかかわらず、英語の新聞が1紙あることに少し驚きます。
                      写真1
                  01_New Light of Myanmar 3(写真1).jpg
       (この日は、たまたま東京スカイツリーの記事が掲載されていた。)
 新聞を手に入れるには、ホテルにビジネスセンターがあれば、そこで読むことができるでしょう。今回のツアーで宿泊したセドナ・ホテルでは、New Light of Myanmarを部屋に配達してもらいました。但し、セドナ・ホテルは、ヤンゴンでは外国人ビジネス客が多く利用する高級ホテルの部類だそうなので、他のホテルでは事情が違うかもしれません。(今回のツアーで、ミャンマーの地方都市バガンからヤンゴンへ向かう飛行機の中でも本紙は配布されていました。)
 街中で新聞を手に入れるには、路上で、台に新聞や雑誌を並べて売っている売店(殆ど露店に近い)で買うことになります。売っている様子を見ると新聞らしき物が多数並んでいるようにも見えます。しかしながら、ヤンゴンでのツアー・ガイドに聞くと、ほとんどが週刊紙とのことでした。そこで、ヤンゴン商工会議所向かいの売店で売られていた中で日刊紙と言われるMyanma Alinn Daily(ミャンマー語、写真2)を買ってみました。価格は100チャット(1チャット=約0.1円)でした(この時はNew Light of Myanmarは滞在しているホテルの部屋に配達してもらうことになっていたので購入しませんでした)。本来、もう1紙日刊紙があったはずですが、その時出されたのはこれだけでした。また参考に週刊紙でWeekly News Eleven(600チャット、写真3)とZay Gwet(400チャット、写真4)(共にミャンマー語)を買ってみました。一応、総合紙と経済紙の代表として、それぞれツアー・ガイドに選んでもらったものです。
                      写真2
                   02_Myamma Alin Daily(写真2).jpg
             写真3               写真4
         03_Weekly News Eleven(写真3).jpg         04_Zay Gwet(写真4).jpg
 また、そこの売店にはありませんでしたが、Myanmar Timesという週刊紙ながらもう1紙英語の新聞があります(写真5)。これには、同じタイトルでミャンマー語も出ています(写真6)。ツアー・ガイド経由でそこの売り子に聞くと(信憑性は計りかねますが)、Myanmar Times英語版は部数が少なく、すぐに無くなるとのことでした。尚、写真5及び6は、地方都市バガンのホテルのロビーで見かけたものです。
            写真5                写真6
         05_Myanmar Times (E)(写真5).jpg          06_Myanmar Times (M)(写真6).jpg
ミャンマーの新聞の内容
 New Light of Myanmarは、文献によると国営の日刊新聞です。実際、Ministry of Information(「情報省」とでも訳すのでしょうか?)のNews and Periodicals Enterprise(新聞及び定期刊行物事業)が印刷・発行しているとの記載があります。従って記事の内容は、政府寄りにバイアスがかかっている可能性があります。また、ミャンマー語の他の日刊紙も2紙とも国営とのことで、結局、日刊の新聞は全て国営ということになります。紙面には特に経済面は無く、地方及び国レベルの記事から経済やビジネスに関するニュースを拾うことになります。
 一方、週刊紙では、Myanmar Timesも『ウィキペディア』(2012年12月31日現在)によると準国営とあります。結局、英語の新聞は内容的に政府寄りとなっている可能性を拭いきれません。それでも、他に英語の新聞が無い以上、ミャンマーの現地の情報を得る上で貴重な情報源でありましょう。それに対し、他のミャンマー語の週刊紙は、少なくとも国営ではないらしく、国営新聞よりは政府から距離を置いていることが期待されます。
 今回購入した週刊紙2紙の内、Weekly News Elevenはスポーツやエンターテイメントまでをカバーする総合紙ですが、やはり経済面は特にありません。但し、商品市況(Commodities Prices)と題する紙面はありました(数字もミャンマー文字)。ちなみに、ミャンマーには証券取引所は未だ無い(日本の協力によりこれから整備する)ため、株価面もありません。Zay Gwetは、経済紙ということで選んでもらったつもりでしたが、こちらも、Weekly News Elevenと比較してスポーツ記事が無いくらいで、記事の内容はあまり変わらないようです。但し、Zay Gwetは、今回買った号がたまたまそうだったのかもしれませんが、広告(Classified Ad)が半分以上を占めていました。その殆どは、どうやら不動産情報のようでした。
 最後にNew Light of Myanmarの配達時間について付け加えますと、早朝の配達というのは無さそうで、セドナ・ホテルのビジネスセンターによると午前10時半頃とのことでした。これは、配達を頼むのが遅かったせいか、または、そもそも配達対象でなかったのか(或いは単に融通が利かないだけか)もしれませんが、日本や他の国のように朝出かける前にニュースを確認して仕事に掛かるというような用途には使えない懸念があることになります。
終わりに
 以上、限られた時間と行動範囲内での見聞なので、実態と異なる点も多々あるかもしれませんが、今後ミャンマーに行かれる際の参考になれば幸いです。