Global Wind (グローバル・ウインド)
国際交流会に参加して

中央支部・国際部 宮川 公一

はじめに
 グローバルウインドは、海外の諸外国に関する報告が主ですが、今回は、日本国内でのグローバルな視点からレポートします。
 2月2日(土)、学士会館で開催された東京都中小企業診断士協会国際部主催の『外国人から直接学ぶ国際ビジネス・コミュニケーション』に参加してきました。50名近くの参加者が出席し、とても盛況なセミナーとなりました。
セミナーの構成
 セミナーは全3部構成であり、プレゼンテーションとパネルディスカッションの第1部は、プレゼンターの米国人マックファーランド氏が4つのテーマを展開し、それに対し、パネリストの方々がコメントする形式で進められていきました。パネリストは米国人ボールデン氏、インドネシア人ソエタント氏、中国人の城島氏、ベトナム人フィン氏、そして、マレーシア人の許(こう)氏の5名でした。パネリストの皆さんは、ご自身の会社を経営されている方々でした。
 第2部は、ケース・スタディとパネルディスカッションで、まず、城北支部診断士チームによる「海外にかぼちゃ焼酎を売る」というケースが提示されました。その後、プレゼンターとパネリストから、この事例に関して母国ではどのような市場性があるかについてコメントをいただく形式で進められていきました。本物の「かぼちゃ焼酎」もグラスで会場の全員に配られるという面白い試みでした。
 第3部は、外国人パネリストとの交流でした。国ごとに丸テーブルに分かれて、参加者は興味のあるテーブルに組分けされて着席形式での懇談になりました。ビュッフェの料理とお酒も用意されており、各テーブルで会話が弾み、盛り上がっていたようでした。
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              プレゼンター・パネリスト・幹事の集合写真
全体として学んだこと
 全体として、形式の違う内容のプログラムが組み合わされており、飲食や懇談の時間もあり、非常にクリエイティブで活気のあるセミナーであったという印象を受けました。外国人のプレゼンターやパネリストの方々が日本語で自信を持って私たちに語ってくださり、皆さんが日本文化に溶け込むために、惜しみない努力を払ってきたことが感じられました。また、所々で笑いがあり、コミュニケーションにはユーモアが潤滑油として大いに働くことを実感させてくださいました。私自身、米国留学中に現地の聴衆の前でパネラーとして英語で語る機会を与えられたことがありますが、緊張のあまり語るのが精一杯で、ユーモアを織り交ぜるなど不可能だと感じたことを思い出します。
 「日本の中小企業が海外の国々に進出するときに大切な要素は何か」という問いかけに対して、「現地の言葉を少しでも学んで、話してほしい」という回答がありましたが、パネリストの皆さんはそれを日本で実践しています。親近感や信頼感が醸成されるのに言語が果たす役割は大きいと言えます。特にアジアでは、英語だけではなく、現地の言葉でコミュニケーションを図れたら、ビジネスパートナーとしての距離もぐっと縮まるでしょう。今後、中小企業が海外進出する中で、言語、そして、ユーモアのあるコミュニケーション力を磨いていかねばなりません。
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                    質問に答えるパネリスト
 第2部のケーススタディーで面白かったのが、かぼちゃの焼酎の事業展開に関するコメントでした。同じアジアでも、ベトナムと中国は市場性があるとの見解に対して、マレーシアとインドネシアではノーでした。その理由は、マレーシアとインドネシアは、イスラム教国であり、アルコールがご法度だからです。一口に”アジア市場”と言ってはいけないのですね。また、中国でビジネス展開を図る上での秘訣を問われたパネラリストは、「中国と言っても、56の民族、13億の人がいます。場所によって考え方が大いに違います。まず、中国のどの都市に進出したいかによってアドバイスが全く違います」という答えを返していました。なるほど、”中国マーケット”として、十把一からげに考えていた私のイメージは間違っていたことに気づかされました。日本という国土の小さな国でさえも県や地域によって文化が違い、ビジネスの進め方が違うのに、ましてや広大な中国では言わずもがなであると再確認しました。同じことを米国のパネリストも話していました。東海岸と西海岸、また北部と南部でも大いに異なるとのことでした。
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                   かぼちゃ焼酎のプレゼン
 インドネシア人のパネリストは、インドネシアにおいてビジネスを進める上で、最初に会食やゴルフをし、家に招いて関係を築いてからビジネスの話に持っていくとスムースだと話していました。ベトナム人のパネリストは、ビジネスの相手を自宅に招いて家族も知ってもらい、信頼関係を築いていくとよいと話していました。
 米国人のプレゼンターがプレゼンテーションにおいて、ビジュアルに訴えるプレゼンテーションを作ることがより効果的であると強調していました。テキストベースのプレゼンにとどまらず、より印象に残るコンセプトを伝えやすいイメージがグローバルには大切だということです。
 万国共通のこととして、相手との信頼関係が何より大切であることが取り上げられました。信頼なくしてビジネスなしと言っても過言ではありません。日本の中小企業が現地に進出していくためにも、日本のやり方の押し付けではなく、現地をよく理解してルールを作ること、また、信頼できる相手を見極めるコミュニケーション力を磨くことが大切であることを学びました。
 一つ面白い質問がありました。「日本から母国に持っていきたいもの(輸入したいもの)は何か」という問いです。インドネシア人のパネリストは、「おもてなしの心」と言われていました。旅館やレストランでの日本独特な「おもてなし」です。マレーシア人のパネリストは、「ラーメン」とのことでした。ラーメンは今、マレーシアで大ブームのようです。日本のラーメンが人気あるのですね。ベトナム人パネリストは、「スーパーの会計時に用いるレジの機械」とのことです。ベトナムは、まだ紙に書いているようで、大きなビジネスチャンスを伺わせました。米国には、「MKタクシー」がよいとのことでした。特にニューヨークのイエローキャブの世界にMKタクシーのサービスを持ちこんだら、インパクトがあると話されていました。
おわりに
 今回、友人をパネラーの1人として呼んでいたこともあって、セミナーに参加させていただき、大いに刺激を受けた有意義な時間となりました。日本にいながらにして国際感覚の一部を磨かれたように感じました。外国人のパネリストの方々が、今まで大変なご苦労をされながら日本でビジネスを培われてきたと察しますが、彼らのエネルギッシュでユーモアあふれるスピーチからは、苦労など微塵も感じられませんでした。このバイタリティこそ、私たち日本人が、今後グローバルに展開していく中で身につけていかなくてはいけない要素かもしれません。これから中小企業が海外に進出していく中で、今回のようなセミナーが現地で開催された折り、現地語で躍動感あるスピーチや討論ができる日本人パネリストが豊かに輩出されていくことをビジョンとして描いていきたいです。
 素晴らしいセミナーを企画してくださいましたスタッフの方々と、プレゼンター、パネリストの方々に感謝いたします。
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                   盛り上がる懇親会の様子