Global Wind (グローバル・ウインド)
企業内診断士の異業種交流会でホーチミン視察

中央支部 高鹿 初子

 2014年1月10日(金)の夕方に成田を出発して、1月14日(月)の早朝に成田に戻ってくる、という2泊+機中1泊の弾丸ツアーでベトナム ホーチミンを訪問してきました。今回は、2010年から活動をしている企業内診断士の異業種交流会(アサヒビールグループ、三井住友銀行グループ、NECグループ、富士通グループ、双日など10社に勤務する企業内診断士の集まり)メンバーを中心とした視察旅行で、20名ほどの診断士が参加しました。
 日本でのベトナムの注目度は高まっている、ということで今回のホーチミン視察が企画されました。実際のところ、ベトナムを訪問する観光客の数だけでも、中国、アメリカ、台湾、それに次いで日本、という順番になっており、「日本人に人気の海外旅行先ランキング2013」(ホテルズドットコム(Hotels.com)が発表)によると、ホーチミンが2012年の17位から3つ順位を上げて14位にランクインしています。日本からベトナムへの訪問者は2013年度60万人で、年々訪問者数は順調に推移しています。さらには、ベトナムには観光客だけでなく日本から進出している企業の出張者も多く、今回滞在したホテルでも多くの出張者や観光客の日本人を見かけましたので、訪問者ということではさらに多くの日本人がベトナムを訪問していると思われます。
 今回は、診断士の視察旅行、ということで、現地企業2社を訪問、さらに1月10日にオープンしたばかりのイオンのショッピングモールも訪問してきました。「百聞は一見に如かず」を体感する視察で、単なる観光旅行ではないところが、診断士ならではの視察旅行でした。
1.企業視察
 今回は訪問日が土日だったこともあり、企業視察としては土曜日も稼働している現地企業2社を訪問しました。ベトナムを代表する繊維関連企業と食品加工業の2社が訪問先です。
(1) 繊維関連企業 PHONG PHU CORPORATION
 ホーチミン市郊外の工業団地にあるPHONG PHU CORPORATION で、Ms PHAN KIM HANG副社長などから、約1時間に渡り会社内容について説明を受け、その後約1時間工業見学を行いました。
 PHONG PHU CORPORATIONは、1965年に国営企業として創業され、民営化された企業で、現在は、①本業の繊維業に加えて、②Real Estate:不動産業(開発事業、従業員の住居など)、③Financial Investments:財政投資(専門家グループによる株式投資、M&Aなど)を3本柱とする経営多角化を推進しています。
 多彩な紡糸から、タオル、デニム生地、衣服の生産・販売まで一貫して行うことができ、顧客のニーズを満たす高付加価値生産物、サービスの提供を志向しています。売上高は、1.66億ドルです。販売先は、アメリカ、日本、EUなど先進国を主なターゲットとしており、日系企業の紹介、取引拡大を希望されていました。
 ベトナムというと、廉価な労働力を活用して工員が多い工場をイメージしますが、日本から輸入した織機をはじめとした大型機械が大量に導入されてオートメーションが進んでおり、手作業は少ない工程となっていました。
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   会社役員からのレクチャー              機械化された工程
(2) 食品製造業のBINH DUONG FOOD PROCESSING&IMEX CO
 2社目の視察先は食品材料の「でんぷん」をキャッサバ(芋)から生産しているBINH DUONG FOOD PROCESSING&IMEX COです。ホーチミン市からバスで約2時間のゴム園やザボン園の多い農村地帯(ビンズウン省)にある中小企業で、従業員50名余りです。
 1日の生産量は120トン。販売先はほとんどがベトナムの味の素で、日本企業の高い品質要求に応えています。
 仕入れたキャッサバは、工場に搬入後、ベルトコンベアーに乗せて皮むき工程を経て、近くの川の水を浄化した水を加え、加熱して水と分離後、乾燥工程を経て粉末のでんぷんとなります。24時間・3交代で生産をしていました。
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       キャッサバの山                   皮むき工程
2.イオン視察
 2014年1月10日にイオンタンフーセラドンショッピングセンターがオープン。ホーチミン市の中心地から西へ7kmのタンフー区にあります。出店地周辺は、住宅や商店も多く、開店間際ということもあり、バイクの交通量も半端なく多かったです。
 1月10日にイオンがオープンした、ということを聞いた私達は、中小企業診断士としては、ホーチンでオープンした日本のショッピングセンターがどういうものなのか、を視察しないわけにはいかない、ということでさっそくイオンを視察しました。
 オープンしたてのイオンへの道は混雑を極め、観光バスでは入っていくことができない状況になっていました。途中でバスを降りて、地元の人達が普通に生活している町中を、イオンに向けてバイクが走る抜ける中を歩いて、やっとイオンに到着。途中の町中にもイオンの広告を目にしました。
 イオンの建物も、イオンの内部も日本のイオンと同じような印象です。ただし、バイク率が高いためかバイク4000台+車500台の駐車スペースとなっています。
 1階には生鮮食品・加工食品・日用消耗品など1200品目を取り揃えたスーパーになっており、ダラット高原から農場を厳選して30種類の野菜を毎日直送しており、商品が多い、という印象です。120の専門店が入り、アミューズメントコーナーもありました。イオンカードも作れるようになっており、ポイントがたまる方式も日本と同じです。
 日本では目にしない風景としては、ホーチミンのデパートでは、荷物をあずけるロッカーが設定されているのですが、イオンではプラスチックのテープでバックの口を開かないように止められて、お店の出口でテープを切ってもらう、という仕組みになっていました。これは日本にはないルールなのでちょっとビックリしました。
 オープン間際、ということで休日だったこともあり、6万人もの人が来店、という状況だったようです。品揃えは豊富ですが価格は安くないイオンが、このままホーチミンに受け入れられるのか、半年後、1年後にまたホーチミンのイオンを視察にいってみたいと思いました。
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 イオンモールタンフーセラドンの広告     オープン2日目で混雑している店内
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       タブレット売り場                品数豊富な野菜売り場
3.ホーチミン市内観光
 やっぱり、初めてのホーチミンで、市内観光もしないわけにはいきません。ホーチミン市内観光では、一般的には、ベトナム戦争終結の場所である南ベトナム政権時代の旧大統領官邸である統一会堂、赤レンガ作りのカトリック教会のサイゴン大教会(聖母マリア教会)、聖母マリア教会の横にある中央郵便局、そして、庶民の市場で2000軒を超えるお店が並ぶベンタン市場などを回ります。今回は訪問しませんでしたが、ベトナム戦争関係の観光スポットも点在しています。これらは、古くからのベトナム文化を伝える場所です。
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  ベトナム戦争終結地 統一会堂          活気あるベンダン市場
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        アオザイ美女
 新しいベトナムの象徴は、ビテクスコ・フィナンシャルタワーです。2010年10月末に完成した265.5メートルの地上68階・地下3階建のビルで、2011年2月に49階が展望台としてオープンしています。展望台からはホーチミンが一望でき、街の大きさが実感できます。
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      ホーチミン市内を望む
4.終わりに
 ベトナム戦争から市場、イオンといろいろな顔をみせてくれる場所を観光できます。観光には日本語をしゃべれるガイドさんの存在は大きく、ガイドさんの良し悪しでベトナムの印象が大きく変わってくると思います。今回のガイド Nho La Dunさんは親日派で日本語を流暢に話されますが日本で勉強したわけではないそうです。日本語のできるガイドはベトナム全体では430名で、2015年には1000人の育成を目指すそうです。
 ベトナム観光総局(VNAT)は2015年に日本人旅行者数を100万人とする目標を設定し、ベトナム側の受入体制として、日本語ガイドの質と量を改善していく計画を立てており、観光情報の提供方法やトイレなど衛生面も改善される予定です。
 今後、ますますベトナムに行きやすくなってきそうです。活気あふれ、どこか懐かしさを感じるベトナムに、ぜひまた行ってみたいと思いました。
高鹿 初子(こうろく はつこ)
 2009年中小企業診断士登録。IT関連メーカーにてSEとして製造業を担当。女性創業支援や化学物質管理、さらに企業内診断士の異業種交流会の活動で、気仙沼の仮設商店街支援や千葉商科大学との連携などで活動中。技術士(総合技術監理部門・情報工学部門)。