Global Wind (グローバル・ウインド)
ミャンマー進出の可能性

中央支部・国際部 加賀城 剛史

 去る2014年11月2日から11月8日の日程で、建設業を支援する中小企業診断士4名で首都ヤンゴン市を訪問、JETRO並びに現地進出の日系建設業・サービス業並びにODAにて開発が進むティラワ工業団地を視察しました。
 このコラムでは、現地滞在の状況や訪問先へのヒアリングの感想についてまとめます。ミャンマー進出企業やその支援者の一助になればと思います。
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                    図表1:ミャンマー国地図
1.日本企業にとっては残されたフロンティア
 ミャンマーは人口5,141万人(2014年9月(ミャンマー入国管理・人口省暫定発表))、面積が68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)で、天然ガスが豊富に採取しており、隣国タイや中国に輸出しています。
 これまでは、軍事政権時代が長かったこともあり、外資が導入されてきませんでした。タイやベトナム、マレーシアなど隣国が順調に経済発展を遂げる中、これまで目が向いてきませんでしたが、訪問先で口々に聞くのは、「ヤンゴンはこの3年で加速的に発展してきている」というセリフでした。
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           出典:IMF “World economic outlook databases 2014.10”
                    図表2:隣国との比較
 ヤンゴンでは、都市部の人口流入や商用で訪問する外国人増加で、中心部では交通渋滞が非常に深刻でした。またコンドミニアムや外資ホテルの建設も続いています。現地日系進出コンサルタントの話では、不動産バブルの調整段階とのことでしたが、賃借料は先進国並みの高さです。
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                  図表3:ヤンゴン市街の道路
 さて、既に進出している大小規模の日系企業にヒアリングした結果、日本企業にとって、残されたフロンティアというイメージを強く持ちました。その理由は
 1.日本人と非常によく似た気質です。YES/NOをはっきり主張し、責任範囲を決め行動をする欧米諸国・中韓と比べると、NOは中々言わないという面も持ち合わせているのです。識字率も高く、教育が行き届いています。仏教国であり、日本人には非常に好意的です。日本製品による信頼度の高さは、日本車(中古)が殆どを占めている事からもわかります。
 2.北部(マンダレー、ネピド)は中国からの投資が盛んです。日本が力を入れるのは、ヤンゴン周辺の経済力アップです。
 円借款の内の一つとして、ティワラ工業地域のインフラ開発がメニューとしてあります。ティワラ工業団地は、日本の商社3社による開発で既に立地を進める事業者との契約が進んでいます。
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               図表4:ティワラ工業地域 案内表示
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               図表5 ティワラ工業地帯(土地造成中)
2.経済発展のスピードに対応できるか
 日本の中小企業が進出する際の注意点も訪問先では伺うことが出来ました。
 まずは、「意思決定の速さについていけるか」です。
 中韓あるいは欧米企業との競争では、素早く意思決定し、行動を起こせるかが、機会ロスを防ぐために重要で、進出企業からお聞きするのは、「日本企業は総じて意思決定が非常に遅い。社長にお伺い、などと流ちょうな事を言っていると、契約を他企業に奪われてしまう」とのこと。
3.経済インフラの現状
 スピードに対応、については、別の見方もできます。
 経済の発展スピードに比べてインフラ面の整備が実は遅れております。
【ハード面】
 出張時期にちょうど台風の直撃を受け、道路排水の問題で道路に水たまりができ、交通に支障が見られました。また、電力事情の問題で、停電が発生、滞在中もネットが使えなくなるなど影響を受けました。自家発電装置がなければ工場は大きな影響を受けます。
【ソフト面】
 製造業では、現地に下請業者となるような裾野的企業群がまだ揃っていないということもあります。
 また法制度の未整備が問題です。外資企業が現地で法人を立ち上げる際には、外国投資法の適用を受けます。輸出入にあたっても免許が必要で、中々下りないとのこと。
 日系企業が現地に進出した際の資金需要に応える体制も問題があります。外資の銀行、たとえば日本のメガバンク3行は進出しておりますが、現地銀行は大手4行で、まだまだ日本との輸出入取引で不便が生じます。
4.では、今後進出に向けてすべき事は何か。
 今回の訪問での、私の気付き3点を書かせて頂きます。
1)進出リーダーに適任者を置く
 海外進出にあたっては、進出リーダーの素養が非常に重要で
 〇進出の成否
 〇時期尚早とわかった時の撤退による損失の最小化と、進出再開時のスピードが大きく変わり、会社の業績が大きく変わってきます。
 海外経験があるからよい、とは言えず、大手企業の海外担当者を経験だけで素養を見ずに中途採用し、現地所長に据えた末の成功とはいえない例も非常に多いとの事です。
 代表者が現地で行動し、事象が起こるたびに早く対処するのが実は一番いいのですが、現実的に代表者がミャンマーに長期滞在するのではなく、後継者の経営者教育として、ミャンマーなど途上国で人事・財務・組織形成・ネットワークづくりなど経営技術を実地で学ばせる、などといった方法で海外事業をうまく活用できる例もあるようです。
2)最新情報を常に獲得し続ける
 ソフト・ハードともインフラが足りていない状況で、常に情報を持ち続け、来るべき進出時に向けて準備をする、というスタンスを持つべきとのこと。意思決定をし進めていく、という行動と、日々変わりゆく法制度を素早く理解し、現地にネットワークを貼り、進出時に素早く行動をとるという、必要があります。
3)ミャンマー人気質を十分に理解し、経営の主力人材として活かすべく、準備する
 ミャンマー人は非常に穏やかでどこかしこで落ち着いている印象を受けました。言われたことは何とかしてこなそうと努力するようです。しかし、自己改善によって成長していく、といった能力は、中国などと比べて足りない、ともおっしゃっています。こうした特性を理解して、うまく育成する事で、主力人材とすることも可能な様です。
5.おまけ
 今回、1日だけ現地でオフがありましたので、パゴダと呼ばれる寺をいくつか周り、改めて人々の生活の中にも仏教が根付いている、という印象を受けました。
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                 図表6:代表的な寺院(パゴダ)
■加賀城 剛史(かがじょう たけし)
建設コンサルタントでODA調査計画業務に従事。2013年中小企業診断士登録。同年独立後、建設業、製造業の補助金活用、海外進出等支援を行う。
(連絡先)kagajo@phoenix-bl.com