Global Wind (グローバル・ウインド)
南ア便り第2号

JICA短期シニア海外ボランティア 五十嵐 至

 今回は2か月が過ぎ、生活のリズムも定着してきましたので、これまでの体験や、感想などを交えて現地事情をお知らせします。
           01_マイカーとともに.jpg
                 写真:マイカーとともに
 こちらは秋に突入したところですが、南アフリカでも私のいるところは北方の内陸性気候と高地であること、それに雨量が極端に少ないことから、毎日朝夕は10度ぐらいに下がるようですが、日中は外にいる限りとても暖かく、暑いと感じることもあります。
 日本で言うところの、実りの秋がピッタリでしょうか、お店では、オレンジ(いろんな種類があるようで、日本の蜜柑に相当するものも売られています)、アボカド(日本で売られている標準サイズやら、大きなサイズもあります)、グレープフルーツ、パパイア、リンゴ(極端に小さくテニスボールよりも一回り小さい)、葡萄などが並んでいます。アボカドなどは多くの家で日陰にもなることから庭木として育てているようです。参考までに写真を添付しますのでご覧ください。パイナップルなども小ぶりですが100円位で手に入ります。食べ物に関しては概ね日本よりも遥かに安価です。
               02_果物.jpg
                      写真:果物
 季節の花は、未だバラが咲いていますが、日本にもある花が結構あるようです。先日理事長宅の庭でハイビスカスが咲いていました。
 赴任後1か月目、4月30日に職場のスタッフ全員向けに、日本食を味わっていただこうと考え、肉じゃが、いんげんの胡麻和え、ペペロンチーノ(日本のコメが手に入らないので、イタリアンにしました)のメニューを約30人分用意しました。
 準備は前日が日曜だったので、下ごしらえをしたうえで、当日は朝から調理を始め、昼時(13時)にちょうど間に合うことが出来ました。
 味のほうは、大量の為少々不満足でしたが、環境を考えれば上出来と自分を納得させて提供したのです。目的は、職場の仲間たちと早く仲良くなれることだったのですが、一方では自分も時々は日本食を食べたいからです。
 JICAの調整員の方が話を聞いて、ニュースのネタが乏しいせいでしょうか、早速掲載してくださることになり、添付の通り5月号のJICAニュースレターに掲載されました。お蔭で、一躍私の組織が有名になることができ、関係者一同大喜びとなりました。
         03_JICAニュースレター.jpg
                 写真:JICAニュースレター
 日本食の提供は、この時までに3回、その後、カレー粉からルーを手作りで用意したカレーライス、私流の盛り付けサラダ、天ぷら、茶碗蒸し、日本そば(こちらはボランティア仲間から乾麺をもらっていたもの)などを含めて3回と7週間の間に6回の実績となりました。考えてみると毎週調理しているような感じです。
 ある時、この家のおばさんの兄弟家族一同が私の手料理を食べたいというので、カレーに挑戦したのですが、盛り付けサラダを8人分なので大皿2枚に、レタス、キュウリ、ブロッコリー、ツナ缶、ゆで卵を加工カットしたものとリンゴのウサギタワーをカットして添えて提供したところ、大きい方の皿は、現地の習慣で持ち帰ることになっているとかで、一皿を皆で食べることに。習慣というのが可笑しくて、また不思議に思いました。
 毎日の主菜といえばほとんどがチキンで、牛肉や豚肉が登場するのは10日に一度ぐらいでしょうか。牛肉などは高価であることが理由のようですが、日本のように柔らかくないので、チキンの方が有難いのかもしれません。私にとっては魚を食べたいと思うのですが、めったに食する機会はありません。それも当然ですが、フライだけです。たまに自分で缶詰(ツナフレーク缶、イワシの味付)を購入してサラダに添えたりして食べることを勧めています。スーパーに、アジの冷凍が置いてあるので、いずれアジフライに挑戦しようと思っています。
 先日30kmほど離れた、マカドという町へ出かけた折に、スーパーでノルウェー産のキングサーモンと生ガキ(小ぶりです)を見つけました。生ガキ(1個80円位)はとても魅力的でしたが、食あたりが怖いのでとりあえずパスして、キングサーモンの切り身を買ってきて塩バターで炒めて食べましたが、とても美味しく感じました。(写真添付)
            04_カキ.jpg
                       写真:カキ
 同居中のおばさんと、隣のおばさん(しょっちゅう訪ねてきている)が居合わせたので、見せたら食べたことも見たこともないというので2切れ(予め2人分用意)を3人で分けて食べましたが、美味しいと言ってくれました。ただ値段的には一切れ500円ぐらいに相当するので庶民には高嶺の花というところでしょう。むろん日本でもこの値段なら手が届きませんよね。
 ケンタッキーフライドチキンが結構普及していて、私のいる小さな町でも2軒あります。
 一度味見の為に購入してみましたが、現地に合わせているのか不明ですが、日本で食べるのとは違い、味は今一でした。
 衣類について、着任前の案内では、問題なく入手可能とありました。でも日本ではユニクロが価格リーダーとなっていますが、現地にはありません。その所為か、何でも高く感じます。先日スポーツをと思って、ティーシャツ、短パン、運動靴を購入しようとしたら、ティーシャツ、短パンとも結構な値段でした。それぞれセール対象でしたが1500円位なので、日本からもってくれば良かったと思ったぐらいです。ただ、靴は安いと感じます。セール対象だと、日本の半値以下で購入可能かもしれません。普段履きの純正皮が1500円、運動靴が1000円位です。もっとも結構探した結果ですので全てがこの値段ではありません。
 住宅の価格は、ここは小さな田舎町ですが、1200万円ぐらいで2-3ベッドルームのものが広い敷地付で購入可能のようです。
 5月末に初めて、美容室に行ってカットしてもらいました。理容室は見当たりません。どのようにカットすれば良いのか聞かれ、短めに頼みますと言ったら、バリカンで髪を梳くようにカットされ坊主に近いような感じになってしまいました。でも後で皆がよいというのでまあいいかと思うことにしています。シャンプー込で300円でした。
 国連のミレニアム開発目標(MDGs)というのがあって、2015年までに8つの課題があり、南アフリカもこの課題に向けて努力し、日本のODAもその一環として、JICAの青年海外協力隊やシニアボランティアが派遣されています。私もその一人です。
 この国では相互互助の精神が定着しており、職業がなく食べるものがないような場合の救済策は、私の職場でもドロップインセンターというところで提供されていて、生活困窮者、孤児等の食事などを担っています。私の同僚を毎日一緒に近くのモールまで送ってあげていて、(私の運動の為です)、いつも携帯のトラブルやその他の面倒を見てもらっているので、ある時ウィスキーをプレゼントしたのですが、その翌日に私を含めて職場の仲間6人が彼の家を訪ね、夕方からバーベキューパーティーを開くことに。そうしていたら、彼の近所の友人たちが入れ替わり参加することになって、いつの間にか食料も、そのウィスキーも空になってしまったということに。せっかく彼に買ってあげたのにと少々残念な気持ちになりましたが、これも互助の精神なんですね。
 着任後鼻炎と咳が抜けなくて、持参した薬やら、現地で職場の人のアドバイスを得て購入したシロップなどを服用してみたのですが、中々抜けないでいたら、ここのおばさんの兄弟が、自分の知り合いに診てもらうよう勧めてくれ、(時間をかけて処置する設備がありこれを処方すると治るというので)お願いして、行ったのですが、受付で彼の名前でカルテを作り、受診したらドクターはそのカルテを見ながら、私の名前を記載し、問診と処方を丁寧に(都合20分位)診てくれたのでした。前の患者さんが8人は居ましたから2時間は待たされました。またこの診療所は24時間体制でいつでも受診可能なのだそうです。次回診療の日まで指定されて帰ってきました。ここまでは当たり前といえば当たり前ですが、実は健康保険は、連れて行ってくれた知人のものを利用していたようなのです。彼は私を待たせて、受付でカルテを作ってもらうと出張なので、すぐにいなくなりました。
 いざ処方薬をいただいたのですが、治療費の請求がないのです。後で聞いたら、このような行為は非合法ではあるものの、ドクターが了解すれば出来ることが解りました。でも不思議な体験です。医療技術レベルは、信頼できそうです。24時間診療の方法は何人かのドクターたちが交代で勤務するのだと教えてくれました。症状は4日目で、ほぼ治癒しました。
 現地の人たちはキリスト教会のいずれかに属しています。或る人が亡くなると、1~2週間は毎日儀式があり、夕刻には近所や関係者が集まって、何やら儀式(故人をたたえる、聖書を引用しての弔い、聖歌)などが2時間近く続きます。私も会長の兄(64歳で逝去)のお通夜に参列して知りました。3週間目でも早朝から儀式があり、3時ぐらいからは法事の後の会食に相当する機会があり、そのパーティーに私も招待されました。
             05_パーティー.jpg
                     写真:パーティー
 JICA現地事務所で安全教育を受けて、犯罪の発生率が高いことは知っていましたが、こちらでは田舎なのかあまり感じずに生活が出来ています。もっとも玄関や寝室の施錠、家の中はセンサーが働いていて、不審者が侵入すればアラームが鳴るようにできています。不慣れもあって深夜にトイレ以外の水飲みに行こうとして3度ぐらい警報を鳴らしてしまいました。門の施錠は厳重ですが、それでも日中は門の施錠はせずにいるようです。この町に来て2か月を過ぎると、99%以上が黒人なので、目立つのと、皆に顔を知られるようになったと見えて、多くの人が挨拶してくれるので、あまり不安を感じるようなことはなくなりました。
 ただ先週、ご近所の家で、ガレージにおいてあったタイヤが盗まれたとのことなので注意は必要です。
 こちらでは、もともと給与水準が低いせいでしょうか、副業が当然のようです。それも公然と勤務時間内に行われています。むろん休憩時間などが多いのですが、私の職場の副理事長までもが化粧品の販売をやっているのを見てびっくりです。日本のような兼業禁止規定はないのだそうです。但し公務員は別だそうです。
 現地の人と私との会話でよく出るのが日本までどのぐらいの費用で行けるのかという質問が多いです。皆さん日本には親しみを持ってくれていて行きたいという願望が強いようです。ただ対中国人の感情は決して良くありません。困るのは日本人はほとんど見かけないのでよく中国人に間違えられることです。最安値で日本からの往復ですが15万円ぐらいのようですが、逆コースは不明です。
 概ね満足な生活を送っていますが、2つだけ解決できずに苦心していることがあります。
1.携帯でのe-Mailが未だに完全開通できていないこと。
 現地の販売所はあっても、技術が解る人がおらず、ネット上からの案内だけでは意思疎通が思うようにいかないこともあって、同僚に助けてもらってはいるのですが肝心の通信技術(TCP/IP)を同僚が解らないため1か月以上にもなるのに、未だにです。割いた時間のロスは相当なものです。
2.日本のTVや動画をネット上から見られるようにできない
 出発前には調べても来なかったので当然ですが、日本国内ではネット上から配信されている録画番組や動画も、海外では著作権上の問題で視聴できないことです。以前はそれどころではないほど、帰宅後も仕事に没頭せざるを得なかったのですが、そろそろ、気分転換も必要と調べ始めたところ、この壁にぶつかってしまいました。他に何も用意してこなかったので、先週ぐらいから解決方法を模索し始めました。ただ回線が無線による通信回線なので、3Gと、下りでせいぜい1Mbps程度なのでこちらも障害になっています。
 ミジャーニ(お元気ですか?)ポケーニ(元気です)実は殆どの会話はツォンガ語です。
■五十嵐 至(いがらし いたる)
大学卒業後、日本IBMに勤務。中国駐在などを経て、2000年に50歳で早期退職して郷里山形県米沢市に帰郷。国際協力機構(JICA)の短期シニア海外ボランティアとして2014年4月から南アフリカ共和国に派遣されている。職種はPCインストラクター。