Global Wind (グローバル・ウインド)
シリコンバレー 1泊4日弾丸出張記

中央支部・国際部 小泉 岳利

 2015年12月に仕事でシリコンバレーに出張した。感謝祭直後のためか飛行機もホテルもいっぱいで、選択肢がほとんどない。結局1泊4日という弾丸ツアーとなった。
 当然観光なども行えなかったが、現地で若干見聞きしたことを交えて、以前テレビで放送されていた「世界!弾丸トラベラー」になぞらえながら旅行記をしたためてみた。お読みいただければ幸甚である。

【シリコンバレーについて】
 シリコンバレーは、北米カリフォルニア州のサンフランシスコ市の南東約70km辺りに位置する、サンタクララ(Santa Clara)、サンノゼ(San Jose)周辺エリアの通称であり、正式な地名ではない。当初はこの地にインテルなどの半導体企業が集まっていたために、半導体の基幹材料である「シリコン」を冠したそうだが、現在はグーグルやアップル、IBMなど、IT系の企業が多いように思う。

 日本との時差は-17時間。今回の出張では、現地に到着した日が日本を出発した前日となったため、曜日の感覚がおかしくなった。

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【1日目】
12/1 21:30
 18時に通常の仕事を終えた後、中央支部の研修部主催の「知のホットコーナー」に出席。セミナー終了後はそのまま羽田空港国際線ターミナルに移動してチェックイン。フランスでテロがあったばかりだが、セキュリティレベルは極端には上がっていなかった。イミグレーションを通過後は、会社支給のゴールドカード(海外旅行保険の保険証代わり。カードとして使ってはいけないことになっている)を使ってラウンジに入り、時間つぶし&お仕事。

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<出発ロビーのイルミネーション>

00:05 羽田空港 発
↓ 約8時間 (飛行機)
07:00 現地到着の約1時間前に起こされ、機内食を食べる。洋食を頼んだら、フルーツとオムレツだった。

【2日目】
12/1 15:15
サンフランシスコ国際空港 着(日本時間 08:15)

カレンダー的には前の日の午後に戻ったことになる。タイムマシンに乗った気分。

16:00 サンフランシスコ国際空港 発
↓ 約1.5時間 (タクシー)
 高速道路を走っている車は、アメリカらしく大きなものが多い。日本でいうと、エルグランドや1.5tトラックくらいの大きさのように思う。そんな中で日本車の割合は思ったよりも多く、2割くらいかも。メーカーはトヨタ、ホンダが目立つが、相対的にスバルの割合が多いようで、「北米で好調」というニュースを実感した。車種別ではプリウスが目立つが、リーフ(電気自動車)もよく見かけた。環境にうるさいカリフォルニア州故か。
 この日のタクシーのドライバーさんはとっても無口で、移動の間はほとんどお話しせず…。

17:30 クパチーノ(Cupertino) 着
 ホテル(Cupertino Inn)にチェックイン。

 ここは4階建ての小ホテル(Inn)。近郊のビジネスホテルには全く空きがなかったため選択。おまけにキングサイズの部屋しかなかったため少々お高い(一泊約3万!!)。
 中庭にはライトアップされたプールがあるなど、ややリゾートホテルに近い趣だった。

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17:45 ホテル 発
↓ 約10分 (徒歩)
17:55 ホームステッド・スクエア・ショッピング・センター

 この付近の飲食店はドーナツ屋とベーグル屋とステーキ屋しかない。さすがにガッツリと食べる気にはならず、散歩がてら、ビールとつまみを買いにスーパーマーケットに行く。
 スーパーの中は予想通りドラマなどで見たような作り。一昔前ならともかく、今となってはコストコなどが身近になってきたので、店のスタイルには物珍しさはない。でも、売っている商品は日本では見ないものが多いので、思わずキョロキョロ。そんな中、棚の一角に「グルテンフリー」のコーナーを発見。米国のセレブがやっているとかで、日本でもテレビで特集されているのを見たことがあるが、町のスーパーの棚の一角を占めるような陳列は見たことがなかったのでビックリ!これから日本でも浸透していくのかな…。

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<通路の広いスーパー>

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<スーパーの“グルテンフリー”コーナー>

 店員さんに英語がうまく通じずに四苦八苦しながら、量り売りの惣菜と缶ビールを買ってホテルに戻って飲食しながらお仕事。

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02:00 就寝 (日本時間 19:00)

 ようやく眠くなってきたので、シャワーを浴びて寝ることにする。部屋の中には暖炉もあり、ハイソなイメージを醸し出していたが、ジャグジーが壊れていて使えなかったのはご愛敬。

 ベッドはさすがのキングサイズ、4帖くらいありそう!おまけに高さが高い!!この広いベッドの真ん中に寝る勇気はなく、端のほうで寝た。

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<暖炉(使用可能!)とキングサイズのベッド>

【3日目】
12/2 09:00
起床 (日本時間 02:00)

朝食付きプランだったが、メニューは大きなパンとお肉が中心。おいしそうだったが、時差ボケもあって食欲なし。朝食はパスすることにする。
部屋の窓から外を見るが、やはり「バレー」というイメージではない。

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<部屋から見たシリコンバレーの風景>

10:00 チェックアウト
 顧客とのミーティングは15:00のため、フロントの許可をもらって、しばらくホテルのラウンジでお仕事。コーヒーが飲み放題なのはうれしい。

12:00 ホテル 発
↓ 約20分 (徒歩)
12:20 マクドナルド 着

 小腹が空いてきたのでGoogle Mapを見ていたら、2ブロック先にマクドナルドと中華料理屋があるのを発見。せっかくアメリカに来たので、本場のマックに行くことにした。

 ビックマックやフィレオフィッシュといったお馴染のものに混じって、「Buttermilk Crispy Chicken」という見慣れないハンバーガーを発見。これの「Meal(日本で“セット”に相当)」にする。

 注文すると番号のついたレシートを渡され、呼ばれるのを待つ。商品は、日本のようにレジ横ではなく、専用の受け渡しカウンターから渡される。注文方法は“ほっともっと”、商品の出し方は“スターバックス”に近い。

 冷たいドリンクはセルフサービス。日本で「LLサイズ」に相当する空容器を渡されるので、自分で氷とドリンクを入れる。コーヒーは店員さんが入れてくれるが、いずれにしろコップは日本よりはるかに大きい。記憶だけだが、台湾やマレーシアはアメリカと同じ大きさ、中国と韓国は一回り小さいような気がする。フライドポテトは「Lサイズ」程度がデフォルトの様子。長さは変わらないが、日本より太いように感じた。

 肝心のハンバーガーはバター風味のフライドチキンとトマトをはさんだ感じ。バンズ(パン)は普通のハンバーガーより2まわりは大きい。ビックマックが小ぶりに見える。バンズの大きさは佐世保バーガーに近いかも。

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14:00 ホテルに戻る

 通訳さんとの事前打ち合わせのため、ホテルに戻り、ラウンジで打ち合わせ。顧客指定のミーティング場所には歩いても行けるが、通訳さんの車に乗せていただけることとなった。

15:10 ホテル 発
↓ 約5分 (車)
15:30 顧客とのミーティング
   買いたたかれた。(泣)

18:00 空港に向けて出発…する前に、すぐ近くにあるアップルの新しい本社を見に行く。でも暗くてよくわからない。

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<アップル本社入り口>

18:30 気を取り直して、空港へ出発
↓ 約1時間 (タクシー)
今回のタクシーの運転手さんはおしゃべり好きで、シリコンバレーの今についていろいろ雑談。

~ 要約 ~
「シリコンバレーはITバブルとともに終わった」という論調をたまに聞くが、実感はない。アップルの新本社ができるなど、人口もどんどん増えている。いなくなった会社もあるが、入ってくる会社のほうが多いのではないか。その結果、交通量が増えて交通渋滞がひどくなった。お店も繁盛しているところが多い。仕事をしていても、何かが悪くなったようには感じない。それよりも、次期大統領が誰で、どのような政策を打ち出すのかのほうが影響は大きいと思う。

 中国人が投資目的で不動産を購入している。相場よりも高い価格で買っていくので、売買物件も賃貸物件も大幅に値上がりしている。ただ、本人は住むわけではなく、他人に貸したりすぐに転売したりしているようだ。これらの物件の多くは空き家になっており、治安上はあまりよろしくない。

19:30 サンフランシスコ国際空港 着

 入り口はクリスマスカラーのイルミネーションになっていた。ここは何かにつけてイルミネーションを変えるらしく、先日フランスで発生したテロの後はフランス国旗カラーだったそうである。

 チェックインは21:30からなので、空港内で軽食をとりながら時間をつぶす。一品の量が日本でイメージする2~3倍もある。これがアメリカンサイズ?

 空港内にはフードコートやカフェバーなどが若干あるが、お土産屋さんはあまり見つからない。ビジネスの利用客が多い空港なのかもしれない。

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21:30 チェックイン

 ロサンゼルス近郊で発生した銃撃事件(後にテロと断定)の影響でセキュリティがとても厳しくなっていた。靴を脱いでボディチェックされた上に、透明な円筒形の筒の中で何かのチェックをされてから通過。手荷物も検査装置を2回通された。
イミグレーションを通った後も、お土産屋はほとんどなし。お菓子や酒類は日本でもよく見るものばかりで、目新しいものが少なくてちょっと残念。逆に言うと、それだけアメリカのものが日本に入ってきているということ。

 出発時間までラウンジで仕事しながら過ごしていたら、予定時間より前に搭乗開始するとのアナウンス。慌ててゲートに向かう。

00:05 サンフランシスコ国際空港 発 (日本時間 17:05)
↓ 約12時間 (飛行機)

【4日目】
12/4 04:50 羽田空港 着
 12/3がどこかに行ってしまったので、ちょっと浦島太郎になった気分。

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<荷物受け取り場付近>

 この日は朝から子供の幼稚園のお遊戯会があるので、座席取をするために空港で朝食を食べてから大急ぎで幼稚園に直行。並びながら仕事をしつつ開始を待つ。
お遊戯会が始まって会場が暗くなると、急に襲ってきた睡魔との戦いに負けそうになったが、仕事のメールを書きながら必死に耐えた。時差ボケ解消のため、今日は頑張って夜まで起きているぞ! (おしまい)

【出張を終えて(雑感)】
 どこが「バレー(谷)」なんだろう?というのが地理的な印象だった。名前を聞いただけでは、周囲を急峻な山に囲まれているイメージを持つかもしれない。私も当初は松本や甲府のように高い山に囲まれている風景を想像していた。地図では確かに3方を丘陵に囲まれているが、盆地・台地という感じのほうが近いかもしれない。
 おもな産業は、今では半導体企業のイメージが薄くなってきているので、シリコンバレーというよりはITバレーといった印象。ただ、中小の製造メーカーが現地から撤退し始めているという情報もある。タクシーの運転手さんは強くは意識していなかったようだが、何らかの変化の兆しはあるように思う。
 シリコンバレーの今後を占う上でのキーワードは、月並みだがIoTだと思う。今回はお目にかかれなかったが、グーグルの無人運転車は現地では珍しいものではないそうだ。これはソーシャルイノベーションでいうところの「社会実験」を行っていると言える。そういう目で見るとApple WatchやGoogle GlassもIoTを具現化するツールの社会実験のようにも思えてくる。「モノからコトへ」というイノベーションを推し進めながら、シリコンバレー自身も変化していくのだろう。
 そして、その変化は早いと思う。この地には「ドッグイヤー」という人間の4倍のスピードで時間が進む市場を生き抜いてきた会社が多い。数年後にはもうIoTバレーになっているのかもしれない。

■小泉 岳利(こいずみ たけとし)
1966年生まれ。千葉大学工学部工業化学専攻修了後、総合化学・アルミ加工メーカーを経て工業用接着剤メーカーに勤務。工場で品質保証・環境管理を長く担当後、生産技術,購買,総務等の間接部門の業務に従事。中小企業診断士合格を期に本社に異動して管理会計や海外現法の管理業務を担当。企業内診断士。2015年5月中小企業診断士登録。