Global Wind (グローバル・ウインド)
中国の難しさを実感

中央支部・国際部 小村知史

昨年4月より中国(上海)に赴任し、あっという間に一年が過ぎました。実際にこの地で仕事・生活をしていると、“ん~中国って難しいなぁ・・・”と感じさせられることが多々あります。今回のグローバルウインドでは、これまでに感じた・今まさに感じている“中国の難しさ”を書いてみることにしました。

 

 ~はじめに~

現在、中国は名目GDPで世界第二の経済大国です。過去10年での伸び率は300%超と驚異的な経済成長を遂げてきました。しかしながら、ここにきて経済成長にブレーキがかかり始めており、全国人民代表大会において、李克強首相が2016年の経済成長率目標を6.5%~7.0%と設定しました。もちろんこの成長率は日本に比べれば格段に高いものですが、中国の成長鈍化は世界経済的に大きな影響を与えることになります。この中国の“経済成長の不透明さ”はこの国の難しさひとつです。

中国経済に触れましたが、今回のグローバルウインドでは経済がどうとかを述べるつもりはありません。以下からは、私自身が仕事・生活を通して感じている個人視点での“難しさ”を書いていきます。

 

1.国土の広さからの難しさ

仕事上での難しさとして、仕事に対する日本人と中国人の姿勢があります。毎日この違いには苦戦をしていますが、それと同様に最近実感させられていることが「中国の広さ」です。この点を一つ目の難しさとして挙げたいと思います。

今更ではありますが、中国の国土は、世界第四位、日本の25倍以上で、とにかく広いです!!

私が働く会社は食品メーカーで、上海市内に営業所、上海から100kmほど西にいったところに製造工場があり、そこから中国各地へ配送をしています。昨年より上海を中心とする華東エリアから、北は北京、南は広州、西は成都とその販売エリアを拡大させてきました。下図は上海から各地までの距離を示したものです。

小村さん写真

この距離がイメージできますでしょうか?
成都までの2,400kmは、日本でいえば北海道の稚内⇔沖縄の那覇と同じぐらいの距離、北京までの約1,500kmは、東京⇔鹿児島間約1,350kmよりも長い距離となります。
物流手段としては空路・陸路・海路がありますが、弊社は製品の特性上から航空便や船便は使えず、陸路を走らざるを得ません。かつ、中国での陸送によるこの距離は、とにかく距離が長いということだけでなく、道路環境面もあり、商品の品質面へのマイナス影響は少なくありません。
この物流面の課題を少しでもクリアするすべがあれば、もっとスピーディーな事業展開、損益的な改善も図っていけるのになあと思わされております。

2.エリア特性の難しさ

二つ目に挙げる中国の難しさとして「エリアが違えば国が違う」ということを挙げます。上記1にもつながりますが、とにかく国土が大きく東西南北の各エリア・都市によって色々なことが異なります。
一番この違いが表れているのは言葉です。普段、テレビなどでは標準語が使用されていますが、各都市に行けばその地域の言葉が飛び交っています。関東・関西弁といったレベルの違いではなく全く別の言語です。私が生活する上海は中国の中でも一番の大都市で、他の地域から人が集まってきますが、やはり現地人同士では上海語を使ってコミュニケーションしています。

例) こんにちは
【標準語】你好 (ニーハオ)
【上海語】依好 (ノンホウ)

私の会社はほとんどが上海人ですので、会議等では標準語ですが、現地スタッフ同士は上海語です。我々日本人に不満や悪口を言う時には特に上海語を使っているかもしれません??
ビジネスの面からこの「エリアが違えば国が違う」ということを考えますと、生活レベルの違いが顕著だということが挙げられます。
上述しましたが、弊社では上海を中心として各地に販売を展開しております。流通先での売価は10元~25元(約160円~約400円)ですが、地域により生活レベルが異なり、そのエリアに住む消費者毎に価格の受け止め方が大きく違います。会社としての販売戦略とエリア毎の戦略をどうミックスさせていくか、現在この点が課題のひとつとなっています。

3.各種規制という難しさ

最後に挙げる中国の難しさとしては「各種規制」です。普段から経験するのが、テレビでの情報規制です。私の部屋ではNHKワールドが見られますが、ニュースなどで中国に関する情報が流れ、かつデリケートな内容の時には画面がその時だけ真っ黒になります。最近では、領土問題、パナマ文書などのニュースの時に数分間真っ黒な画面になりました。若干中国に関する日本の報道も偏った表現が多いのでしょうか?
インターネットでも同様の状況で、検索内容によっては“このエリアからは閲覧できません”という結果になります。
外人である私からすると、この規制はこの国の難しさのひとつだと思います。しかしながら、広大な国土、10億人をはるかに超える人口、エリアにより異なる言葉・文化があるこの国おいては、言葉の面では各地の方言はあるものの標準語の使用、情報についてはある程度の規制、政治面では共産党の存在など、やはり各方面での標準化・統制が重要なポイントなのかもしれません。

今回は「中国の難しさ」というテーマで書いてみました。駐在して1年余り、中国についてはまだまだ表面的な部分しかわかっていません。今後もアンテナ・感性を高め、もう一歩踏み込んだ中国生活を送っていきたいと思います。

 

■ 小村知史(おむら ともふみ)
大学卒業後、現在勤務する食品メーカーに入社、主に営業部門での業務に従事。
中小企業診断士資格取得後、2013年8月に中央支部へ入会。2015年4月より中国上海での勤務。