Global Wind (グローバル・ウインド)
「国際会議の議事進行と、そこで使われる英語表現」

中央支部・国際部 三上 彰久

 私はこれまで、海外の現地Distributor と一緒に顧客を訪問する、または、海外の展示会に出かけて自社ブースの設営や商談にあたるといった、いわゆる海外営業としての出張を多くこなしてきました。しかし最近は国際渉外業務の一環として、国際会議の事務局としての会議運営や、あるいは自ら国際会議出席者として発言やプレゼンをする機会があります。

01_会議場

 国際会議の議事進行は日本の会議と大差ないと思うのですが、英語で行われる分、用語等で戸惑うことが多いのが正直なところです。
 そこで今回は、国際会議の進行とそこで使われる英語表現をまとめてみました。
 下記は10数ケ国から数十名程度が出席するレベルの(それなりにフォーマルな)国際会議の典型的な議事次第 (Agenda) を、説明の便宜上加工したものです。皆さんが参加している国際会議や、一般のビジネスミーティングとは構成や進行方法、進行順序、役割名称などが異なる場合もありますので、ご了承ください。また、ミーティングにおけるファシリテーション (Facilitation) には、今回は言及していません。

20170405

 では、Agendaにしたがって見てゆきます。

 Plenary Meeting とは全体会合のことで、分科会(Subcommittee) や作業部会(Working Group)を設けている場合、これらのメンバーも入れて会合を行うものです。会議日程が数日にわたる場合は、初日に開催されるのが通例です。

1. Call to Order 
 議長(Chair)が開会を宣言します。
 通常は、Are we ready to start? などと気さくに開会しますが、議長が小槌(ガベルGavel)を2回打って、開会宣言 ”The meeting will come to order.” をする場合もあります。

2. Roll Call 
 議長がメンバーの出欠を確認し、事務局(Secretariat) が定足数充足の報告 (“The required quorum is present”) をします。

3. Approval of Agenda
 会議招集の時点では表題は ” Proposed Agenda”となっています。そこで、議論に入る前に今回の議事次第の同意を、議長が求めます。
 議事次第を変更するとか、議事の追加を求める場合、参加者から動議 (Motion) が出される場合があります。この場合議長は、その動議を認めるかについて参加者に賛成支持(セコンドSecond) を問い、一人でも支持(Second a motion) する人がいると、その動議も議題に追加されます。

4. Ratification of Minutes 
 前回議事録の確認です。
 通常、前回議事録は前回の会議終了後速やかに事務局が取りまとめて、コメントを求めるために (for comments) 出席者にメールで事前に回覧しています。その時点でコメントがあれば修正を求め、それらの修正が反映されたものが、会議資料一式として事前に配布されます。したがって、Ratification of Minutesは形式的なものとなるケースが多い様です。

5. Presentation from Working Group
 作業部会 (Working Group) を設けて個別に何らかのテーマを検討している場合、作業部会から進捗状況の報告があります。報告事項ですので決議は採りません。
 この報告者をRapporteur (ラポルトゥール)と呼ぶ場合もあります。 議長がRapporteurに報告を促し、” The floor is yours.” とか、”You have the floor.” などと言って報告をスタートさせます。
 報告者は書見台式机 (レクターンLectern) で報告し、引き続き質疑応答などがなされます。 なお、一段高い壇をポディウム (Podium) と呼びますが、両者はしばしば区別されずに用いられているようです。
 会議終了後にそこでの議論を反映して作業部会が修正した企画などが、次回会議では決議事項として提出されます。質疑応答などについて、議事録 (Meeting Minutes) には” Mr. Mikami responded to the questions raised by the participants.” と記録されます。
 小槌を使う会議の場合、議題が一区切りつくと議長が小槌を一回打ち、次の議題に移ります。

Coffee Break
会議の合間の休息。
 通常、会議場の外のホワイエ (Foyer) に、コーヒーや紅茶、フィンガーフード (Finger Foods) が用意されていて、出席者が歓談します。実は、根回しや情報収集のための貴重な時間でもあります。

Unicode

6. Consideration of XYZ proposal
 XYZ案件の採否についての審議 (Consideration) を行い、それを採用するかどうかの決を採ります。
 ここでの議論をディベート(Debate)と呼ぶことがあります。ディベートというと、ある命題について賛否2つのグループに別れて意見を戦わせて勝敗をつけるようなものと思いましたが、意見交換の議論 (Discussion) もディベートと呼ぶことがある様です。議論がひとしきり収束すると、議長が ”Any other thoughts?” と、他に意見が無いかを促します。
 採決は通常は多数決(Majority Vote) ですが、重要事項の決定に必要な得票数は会則など ( Rules of procedure やConstitution) で決められています。
 採決の内容が特定のメンバーにとって利害関係を生じる様なものである場合、そのメンバーは採決に係る議論に参加が認められず、一旦席をはずして(“Please leave the meeting room.” ) 会場の外で待つように議長から指示されます。
 決議について満場一致で賛成となった場合は、議事録には通常、次のように書かれます。“A presentation was made to the members and the presenter responded to questions. It was unanimously agreed to adopt the proposal. “

決の採り方にはいくつかのパターンがあります。
・賛成する人が挙手 (Vote by a show of hands) をする方法が一般的です。
・起立による採決 (Vote by rising) は、私は経験ありません。
・声による採決 (Voice vote) というのもあります。最初に Voice voteに出くわしたときは一体何が起こっているのか、事情が呑み込めませんでした。議長が、賛成多数になると思う案件の場合、「賛成の人は”アイ”と言ってください。(“All those in favor, say “Aye.”)」と出席者に促し、続いて「反対の人は”ネイ”と言ってください。(“ All those opposed, say ‘Nay’.”)」と言います。”Aye”の声が大きければ可決されます。
・投票によるもの(Ballot) は無記名投票で、次期議長選出などがこれによるケースが多いです。
・なお、「異議がある人は申し出てください」として、だれも異議を申し出なかった場合は承認されたとする方法もあり、Ratification of Minutes でよくみられます。

7. AOB 
Any Other Business の略。
 文字通り「その他」です。これまで議論していない事項について、参加者から追加で提案の動議(Motion)があるかもしれません。または、事務局からの事務連絡の場合もあります。

8. Next Meeting
次回会合の日時場所の確認です。

9. Adjournment
閉会。
 Agendaの項目が一通りカバーできたら、議長は ”I think we’ve covered everything on the agenda.” などとして締め (Wrap up) に入ります。会議の円滑なご協力に感謝します、という場合 ”contribution” の語を用いて、” Thank you for your participation in and contributions to this meeting.” という表現をよく耳にします。
 会議の最後は、議長が “I declare the meeting adjourned!”と宣言して、会議を閉会します。
 小槌を用いる場合、一回打ちます。なお、adjourn とは「休会とか延会」という意味ですので、通常は繰り返し行われるような会議で使います。一度きりの会合でしたら ” This is the end of the meeting.” となるでしょうが、あまり厳密に区別されてはいないようです。

ロバート議事法
 以上の様な議事進行の方法は、何か雛形でもあるのだろうかと思っていました。そんな折、昨年末から個人的に参加しているトーストマスターズクラブ( http://www.district76.org/ja/ ) の定例会で、「ロバート議事法」(Robert’s Rules of Order)というものが紹介され、英語の会議は多かれ少なかれこれに沿って行われている場合が多いということが理解できました。
 ロバート議事法とは「アメリカ合衆国陸軍の少佐であったHenry Martyn Robert (1837–1923) がアメリカ議会の議事規則を元に、もっと普通一般の会議でも用いることができるよう簡略化して考案した議事進行規則。およびそれについて述べた書籍のタイトル。」(出典:ウイキペディア)とのことです。
 私が参加している国際会議や、トーストマスターズクラブでの議事進行方法は、ロバート議事法を簡略化したものの様です。

ビジネス英語研究会
https://bizeng.jimdo.com/
 最後に、私が代表幹事をしている「ビジネス英語研究会」について少し紹介します。
 ビジネス英語研究会は2013年9月に設立し、同年11月より活動を開始しています。 一般社団法人東京都中小企業診断士協会中央支部の認定研究会です。
 原則毎月第1木曜日に開催する月例会は、上記でお話ししたような国際会議を模して運営しています。普段、英語で業務を行っていても、国際会議に出席するという経験は多く無いでしょう。そこで、少しでもその気分を感じていただきたく、この形式を採用しています。
 そのため、 ホームページ、メーリングリストを通じた開催案内、月例会はすべて英語で行います。毎月、月替わりで進行役、議事録担当を分担します。 
 進行役はもちろん英語で、その月の研究会を仕切ります。
 議事録担当は研究会終了後に、ミーティング・ミニッツを作成し、メーリングリストに流します。また、翌月の月例会では「前回議事録確認」のコーナーがあり、前回の様子を手短にブリーフィングします。

アジェンダは大きく2つのパートに分けています。
(1)Part 1は「プレゼンテーション」です。プレゼンテーションは、
 ① 講師役とテーマを定めた発表形式
 ② 与えられたテーマについて議論するディベート方式
のうちのどれか一つを、月替わりで適宜廻してゆきます。なお、
① は、診断士協会の他の研究会でも行っている様な、一般的なスタイル。一方的な発表ではなく、参加者とのインタラクティブなやり取りを取り入れるよう留意しています。通常の英会話学校では、一人の生徒のために30分以上も時間を割いて英語によるプレゼンをさせるというのは、なかなかできません。30分以上英語でプレゼンし、そのあと質疑応答というのは、なかなかハードな体験です。
② は、ディベートといっても相対する陣営で意見を戦わせるのではなく、各人が考えをまとめ、意見交換をするレベルです。一時間近く英語で考え、即興的に反応することが求められます。
(2)Part 2は「Tell and Share」。形態としては、アメリカの小学校低学年でスピーチ練習のために、Show and Tellというのをやっていますが、そんなイメージです。話す内容としては、ビジネス関係の小ネタや、過去1か月の各々の英語学習の発表、他メンバーにシェアしたい情報などを、全員が英語で短時間で発表します。こちらの持ち時間は質疑応答、トピックスに対する他メンバーのコメントなどを入れて、一人当たり約10分間程度です(当日の出席者数による)。これは、パブリックスピーチの練習に役立ちます。
 ビジネス英語研究会は初回見学無料、年会費3,000円ですので、是非一度見学にいらしてください。

以上

■ 三上 彰久(みかみ あきひさ)
03_演台

中央大学法学部卒業。総合商社にて東南アジア向け産業機械の海外営業に従事。シンガポール駐在から帰国後は医療機器メーカーに転職し、海外マーケティング畑を歩む。その後団体職員に転じ、現在は国際渉外業務等に従事。
東京都中小企業診断士協会中央支部認定研究会 ビジネス英語研究会 代表幹事
元中小企業診断協会東京支部中央支会常任理事、同国際部長。
AIBA認定貿易アドバイザー、 CISTEC安全保障貿易管理士(総合)