Global Wind (グローバル・ウインド)
「「2020年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円とする」ことと国際部の役割についての一考」

伊沢 豊

 今日は10月22日、総選挙開票の真最中にこの原稿を書いています。今年5月に国際部に参加し、8月には東南アジアが見たくてカンボジア、タイを視察してきました。最近では国際部有志セミナーのメンバーとして、国際派診断士とは?国際部の使命・役割は?などの議論をホットにさせていただいています。
 それはさておき、日本再興戦略で「2020年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円とする。」という政府の目標があることご存知ですよね。これは国際派診断士の話なのかというそもそも論が好きな方には、ざっくり輸出というカテゴリーなので国際派と考えて聞いてくださいね。

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http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo_dai6/siryou8.pdf

 これ現状どうなっているかというと、農水省ホームページからの抜粋では7500億円まで達成ということになっています。
 最近の傾向を詳しく見ると、平成24年度からは平成27年までは順調に伸びてきましたが、平成27年から28年は、ほぼ7500億円とほぼ横ばい、見方をかえると頭打ちになっているように見えます。

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http://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/attach/pdf/zisseki-80.pdf

 それでは輸出品目の内訳をみてみると、ぶどうが前年対比50%以上伸びています。

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http://www.kantei.go.jp/jp/singi/nousui/dai21/siryou4.pdf

 この輸出促進のために、農水省は平成31年の農林水産物・食品の輸出額1兆円目標を達成するため、「農林水産業の輸出力強化戦略」及び「インフラ整備プログラム」に基づき、取組をしています。主な取組みとしては以下です。
1.市場を知る、市場を耕す(ニーズの把握・需要の掘り起し)
2.農林漁業者や食品事業者を、海外へつなぐ(販路開拓、供給面の対応)
3.生産物を海外に運ぶ、海外で売る(物流)
4.輸出の手間を省く、障壁を下げる(輸出環境の整備)

 上記の取組みはきれいな言葉です。しかし、1から4を実際に繋げることは難しいと考えています。何かできないかな?とコンサルのプロとしては考えたくなります。
我々中小企業診断士は、経済産業省令で中小企業支援事業における経営診断又は助言を担うものとして規定されています。そのため、経営の助言がプロである診断士の中には、1の市場を知り輸出をしたい法人を助言できる人、2の海外に繋ぐことを助言できる人、3の物流に詳しい人、4の輸出の事務に詳しい人が存在しています。診断士の力で、例えばぶどうの輸出伸ばせませんかね。
 そしてここで、冒頭の国際部の役割についての議論に戻るのですが、議論の中で、国際部の先輩から、組織図で国際部の位置づけは、経理部、会員部と横並びで会員へのサービスが目的、国際部以外の会員へのサービス提供をしていくという視点が大切との示唆をいただきました。以下組織図です。ほんとに横並びです。

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 一考としてですが、国際部による会員へのサービス提供として、東京都診断士協会中央支部の会員から、農産物市場の専門家、農産物を海外につなぐ専門家、海外販売の専門家、輸出事務の専門家からなる4グループを集めて農産物輸出サミットみたいなものを開催し、農水省のKPIの1兆円のうち数十億でよいので輸出に結びつけるというスローガンのっもとでの企画もありなどと考えています。
 これは、別に農産物の輸出でなくてもいいのです。「平成28年度産業競争力強化のための重点施策等に関する報告書」における日本再興戦略のKPI(平成29年1月現在)は138個あります。そこから手厚い補助がついていて、手を付けやすいテーマから選んでよいと考えます。国際部が、複数の診断士を結びつけるプラットフォームになれたらいいなと感じています。One for All, All for Oneの精神です。

■伊沢 豊(イザワ ユタカ) 2017年4月中小企業診断士登録 東京都中小企業診断士協会中央支部所属 国際部  
大学卒業後銀行に入社し、NY支店、LDN支店、本店で国際分散投資を実践。現在農業に関する投資育成会社で、チーフコンサルタントとして農業法人育成に力を注いでいます。