中小企業海外進出理由は、取引のある会社が海外進出するから、売上高が低下しているから、など外部環境から進出するケースが多い。また、自社の強みとして、コストが安く、品質が高く、短納期でできるという会社が多いので、海外でもやっていけるとして進出しているケースも多い。そこで、成功している会社はどうやって海外進出を成し遂げているかについて記述する。

(1)会社の強みを理解

社長が自社の強みを理解している会社が成功を収めている。強みとは例えば制御回路であるとか、アルミニウムの溶接であるとか、など具体的に理解しており、かつ、その強みをどう活用するかをいつも真剣に考えている。日本の市場でどこにその強みを生かせるのかのマーケティングを行っている。つまり、常に地道に行動し、同時に先を読んだ行動をしている会社が多い。

ある畳屋さんは、海外の人から畳を輸出してくれないかというリクエストがきっかけにどうしたら畳が海外に売れるかを考え、独自のサービスを考えて成功している。畳は、建物に合わせて作るので、普通はその家に行ってその建物に合った畳(形状や傾きなどにフィットさせた畳)を作成する。つまり現場あわせが多い。そのため、畳は現場あわせという風習があり、海外進出はできないとされていた。そのような常識に対して、その会社はサンプル送付やCADで現場あわせをシミュレーションして建物にフィットする畳を提供する仕組みを作り、さらに畳そのものは運搬がかさばるので、畳作成キットなどを開発し成功した。このように、どうやったら進出できるか時間をかけて考え抜いた会社が成功している。

(2)進出のステップ

成功している会社は、進出のステップとして、いきなり工場を現地に建てないで、輸出から始めている。まず輸出をすることで、その国の風土やマーケットの状況などをサーベイし、海外に工場を設立した時のリスクを低減させる努力をしている。

相手の国の状況もわからず進出した企業は、はじめに技術ありきのプロダクトアウト型で、その国の文化のニーズに合わない製品を開発していることがある。また、地元の従業員を日本の従業員と同じように扱うため、摩擦も多くなり、結果として撤退する企業も多い。

(3)市場

日本は高品質を売りにしているが、海外の市場によっては高品質より低価格のほうが優先される場合も多い。安ければ買えるので品質は我慢するというものも多い。したがって、その国の状況を踏まえ、その国に合った製品を製造することが重要である。日本人は、日本で培われた品質をキープしようとするが、国によって品質基準が異なることを十分理解し、過剰品質にならないようにすることが重要である。

顧客が海外進出するから自社も進出するという会社も多いが、その顧客が下請けとして海外でずっと面倒をみてくれることはない。一緒に海外進出しても、いつ切られるかわからないということである。そのようなリスクの分散のためにも、自社に合致した市場が他にないかをサーベイし、そこにアプローチしていくことも必要である。

このように海外進出する上では、十分な時間を掛け、サーベイし、ステップを踏んで進めていくことで、リスク分散が可能となる。当たり前ではあるが、着実におこなう企業が少ないため撤退に追い込まれる企業が多い。

(4)まとめ

海外進出する上で、その国の文化風習を十分な時間を掛け、自社にフィットしている市場かどうかを外部団体や自分の目でその国をサーベイする。サーベイした状況を踏まえ、リスク回避を含めた進出ステップを計画し実行することで、撤退障壁が低く着実に進出できるビジネスプランの作成が可能となる。

 

【自己紹介文】
山本邦雄一(やまもとくにお)
中小企業診断士(2010年登録)、東京都中小企業診断士協会 中央支部、販売士1
制御会社でナイジェリア、フィリピン、オーストラリア、ベルギー、シンガポールに勤務。現在はMCS研究所で海外支援や工場の現場改善などのコンサルに従事。