Global Wind (グローバル・ウインド)
台湾 新竹サイエンスパークを訪ねて

中央支部・国際部 伊藤 慎時

1 はじめに
 2014年12月、台湾にある新竹科学工業園区(新竹サイエンスパーク)を訪問しました。その時の様子をご紹介いたします。私が台湾へ到着したのはクリスマス当日の12月25日でした。この日は台湾にとって、大事な意味があります。12月25日は行憲記念日(中華民国憲法発布の日)という重要な記念日なのです。クリスマスのイルミネーションで華やかな台北市内中心部では、中華民国旗である青天白日満地紅旗が、至る所で掲げられており、華やかな雰囲気と荘厳な雰囲気が相まっていました。
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             台北中心部の忠孝東路から台北101を眺めて
2 新竹サイエンスパークについて
(1)概要
 新竹サイエンスパークが位置する新竹市は、台北市から南西方面に特急電車(自強号)で約1時間の場所です。新竹市の中心部にある新竹駅は、2015年2月に東京駅と姉妹駅になったことで知られています。新竹サイエンスパークは新竹駅から路線バスで20分程度の場所に位置しています。
 新竹サイエンスパークは、1980年に設立された台湾初のサイエンスパークです。設立以来、ハイテク産業の集積拠点としての役割を果たしています。主に半導体、情報通信等のエレクトロニクス関連産業の企業が数多く活動しています。653haの面積を有し、園内には約500社の企業が入居しており、約15万人が仕事に従事しています。年間の総生産額は約1兆円に達しています。現地スタッフの方によると、近年日本や韓国の高校生が修学旅行等で見学に訪れる件数が増えているようです。
 園内は2つの国立理工系大学(清華大学、交通大学)、工業技術研究院(ITRI)、約500社の企業が入居する工業団地、居住区(住宅、ショッピングセンター、銀行、公園)等から構成されており、無料シャトルバス(4ルート)が縦横無尽に走っています。
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      サイエンスパークの入口          サイエンスパークの案内表示
(2)理工系大学、工業技術研究院、企業の有機的な連携
 清華大学、交通大学は主に基礎研究と人材供給の役割を担っています。両大学の卒業生のうち、約60%はサイエンスパーク内の研究所や企業に就職しています。工業技術研究院(ITRI)は技術開発に特化した研究機関です。台湾政府からの大量の研究資金を活用し、事業化を前提にした半導体製造等の大型開発プロジェクトを担います。プロジェクトには工業技術研究院だけではなく、サイエンスパーク内の大学や企業のメンバーも参加しており、工業技術研究院がまさにハブの役割を果たしているという印象を持ちました。量産化の目途がつくと、サイエンスパーク内の企業と連携して、本格生産に着手するようです。
 サイエンスとテクノロジーを明確に分離して、集中的に資金と人材を投入し、大学、研究所、企業等が有機的に連携することで、イノベーションを創出していることが伺えました。また、工業園区管理局というセクションでは、サイエンスパーク内のサービスを一元的に担当しています。具体的にはインフラ整備、貿易関税業務、園内の住居や学校運営に至るサービスの企画・運営等です。入居企業が諸手続きのために、台北へ行く必要がないように配慮されている点が特長です。
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       製品サンプルの展示            管理局が入るオフィスビル
(3)居住環境
 居住区には約1万人が住んでいます。単身アパート、家族アパート、公園、ショッピングセンター、インターナショナルスクール等があります。英語で授業が行われる学校が完備されていることで、米国シリコンバレー等から帰国する台湾出身者や海外企業の従業員が、安心して子弟の教育を任せられるよう配慮されています。
 居住区の中心には大きな湖や公園があり、自然豊かな環境となっています。公園内の樹木はよく手入れされており、約1500種の植物が生息しているそうです。園内を歩いていて、このような豊かな自然環境は起業家やエンジニアの知的創造にとって、非常に重要だと感じました。ちょっとした散歩やベンチでの空想が、技術開発や事業創造のブレークスルーのきっかけになるのではないでしょうか。
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      居住区内のマンション             居住区内にある静心湖
3 おわりに 
 短期間の台湾滞在でしたが、台北市内にあるローカルな市場から新竹市のハイテク産業の集積地まで、幅広く訪れることができました。今回は台北市内のユースホステルに滞在しました。中国、マレーシアから来ている旅行者とも短い時間でしたが、交流ができました。年末のショートトリップは、自分の今後のミッションと翌年以降の活動方針を考える良い機会となりました。
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         新竹駅構内                 開発が進む新竹市郊外
■伊藤 慎時(いとう しんじ)
2011年中小企業診断士登録。公益財団法人日本生産性本部認定経営コンサルタント。修士(経営学)。企業内診断士としてコミュニティビジネス及び国際ビジネスに関心を持ち、活動中。