Global Wind (グローバル・ウインド)
米国輸出管理規則(EAR)への対応

中央支部・国際部 三上 彰久

 安全保障輸出管理については、2010年4月のグローバルウィンド「2010年4月1日より外為法『輸出者等遵守基準』施行」にてご説明しました。
http://rmc-chuo.jp/home/mt/archives/2010/04/_20104120104.html
 我が国では、安全保障輸出管理は外為法1本(実際にはその下に省令や通達などがぶら下がっていますが)で運用される体系になっています。一方米国では、手続きの一元化(シングルウィンドウ化)の動きはありますが、現状では各省庁が安全保障貿易管理または輸出規制に関する法律、規則を定めています。 そのうち、武器にも民生品にも使用できる、いわゆる Dual Use品について定めたのがEAR (Export Administration Regulations)です。
 EARは Code of Federal Regulations :CFR(連邦行政規則集)の15分冊「Commerce and Foreign Trade」Title 15: Commerce and Foreign Tradeに収録されています。米国には50のCFRがあり、他には、例えばその21分冊が「Food and Drug」であり、食品医薬品局 (Food and Drug Administration : FDA) が受け持っています。EARは商務省の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security:BIS)が受け持っています。
 我が国において注意しなければならないのは、たとえばアメリカから部品を輸入して工作機械を日本で製造し、それを日本から海外に輸出する場合でも、その工作機械は「米国製品組込品」としてEARの規制対象となる点です。これは「域外規制」と言い、EARは米国からの輸出のみならず、輸出された国からの再輸出時にも適用されるのです。もちろん、米国政府が直接、我が国の輸出者に対して輸出禁止、懲役、罰金等の処置を下す訳ではありません。しかし、米国法令違反者への取引禁止の対象となり、米国関連のビジネスが事実上できなくなるという、間接的な縛りが生じます。したがってこの例で言えば、後述のデミニミス・ルールに照らし、該当する場合にはBISの許可を受ける必要が出てきます。
 EARはほとんどすべての品目をその規制対象とし、許可例外規定 LE (license exception)で規制から外してゆく、というスタンスをとっています。 日本の場合は、規制対象品目を限定して扱っている点で、扱いが異なるのです。もちろん、EAR対象品目の全てにBISの許可が必要という訳ではありません。許可が必要か否かは、輸出する品目、輸出先国、貨物の受取人、貨物の使用目的によって判定します。
 なお、米国から提供された技術を第三国に移転する場合や、外国人に技術指導をする場合なども輸出とみなされ、BISの許可を受ける必要が出てきます。
 ここでは長くなりますので詳述は避け、EARの主な用語をご紹介するのに留めます。
① Country Group: 国群。EARでは「国群」といって、輸出先国をグループ分けして規制度合に差を設けています。日本は旧ココム参加国であるA-1グループに分類されています。
② CCL: EAR規制対象品目の中でも機微なものが、EARのPart 774 Supplement 1にある輸出規制品目リスト(Commerce Control List:CCL)に掲載されています。
③ ECCN: CCLに記載されている品目には、規制品目番号(Export Control Classification Number :ECCN)がついています。
④ EAR99: ECCN番号があるものがリスト規制品目、それ以外の非リスト規制品目をEAR99と呼びます。EAR99といってもEAR規制対象であることに変わりはないため、米国が制裁をしている国への輸出、日本からの再輸出の際にBISの許可が必要な場合があります。
⑤ デミニミス・ルール
 EARにおいて組込製品とは、米国外で製造され米国成分を含む製品を言います。米国外で製造されるのでMade in USAではありません。しかし、米国原産品を組み込んでいるいわば「米国の息のかかった製品」です。したがって「米国の息のかかり具合」で規制対象になるかが決まります。これが、組込品に適用されるデミニミス・ルールであり、米国外で作ったものであってもその中に米国原産品目が組み込まれている場合、その価格比が一定の比率を超えるとEARの対象となります。
 米国EARの対応が必要となるのは、大企業に限ったことではありません。中小企業においても、我が国の外為法のみならず、米国EARについての理解と遵守が求められます。

以上

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■三上 彰久(みかみ あきひさ)
中央大学法学部卒業。総合商社にて東南アジア向け産業機械の海外営業に従事。
シンガポール駐在から帰国後は医療機器メーカーに転職し、海外マーケティング畑を歩む。
その後団体職員に転じ、現在は企業内診断士として国際交流・中小企業活性化に従事。
AIBA認定貿易アドバイザー、 CISTEC安全保障貿易管理士(総合)