Global Wind (グローバル・ウインド)
Vietnam Cafe Project
~ベトナム第3の都市ダナンに日本とベトナムの架け橋を造る~

中央支部・国際部 三宅秀晃

 「海外に日本(人)の基地を作ろう」そんな呼びかけから、ベトナムにカフェを作るプロジェクトが始まりました。昨今、グローバル化の必要性が強く叫ばれているものの、短期旅行や語学学習に留まり、海外との交流はあまり進んでいないのが現状です。この問題に対して、現地の人と一緒に海外にカフェを作ることにより海外の文化を深く知り、現地とのネットワークを作ることを一つの解として試みているのが本プロジェクトになります。
 昨年の9月にベトナム中部のダナンでカフェをオープンさせました。
1.Vietnam Cafe Projectの概要
 プロジェクトが始まったのは2010年10月。当時フリーのコンサルタントとして活躍されていた方の呼びかけに始まり、まずは日本国内で、現地にカフェを作ることで日本と海外の交流を促進するという思いを持ってプロジェクトに関わってくれる仲間を募りました。東南アジアでは外国資本による小規模飲食店の営業許可が取りにくい中、ダナン在住の方々(ベトナム人・日本人の両方)の協力により営業許可を取得。日本語学校の掲示板を利用して店長を公募、現地在住の日本人の協力を得ながら物件を契約し、遂に2011年9月にカフェをオープンしました。
 オープン以来、売上は少しずつ向上しているものの未だ赤字であり、目下の目標は黒字転換です。
 URL:https://www.facebook.com/vietnamcafeproject
2.ダナン市の概況
 ダナンという地名を聞いてもご存じない方がほとんどなのではないでしょうか。ダナンはベトナム中部に位置し、人口約90万人を擁するベトナム第3の都市です。政治の中心のハノイと、経済の中心のホーチミンのちょうど中間に位置しており、北部(ハノイ)・南部(ホーチミン)とは違う文化を形成しています。昨年12月には空港が新しくなり、国際線の就航も増えました。最近では日本からの渡航者増を見込んで一時的に、日本からのチャーター便が飛んでおりましたが、現在は就航していません。日本から訪問する場合はハノイやホーチミンから国内線を利用するか韓国や中国経由で行くことになります。
 世界遺産の都市であるフエへはバスで3時間、ホイアンへは1時間という要所であることと、海岸沿いには世界を代表するブランドのビーチリゾートが多数開発中であることから、今後は観光客の増加が見込まれています。
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市内の市場
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ダナン国際空港
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開発中の沿岸部
3.カフェについて
(1)立地
 ダナン駅から徒歩2,3分の場所に「Tanpopo Cafe」はあります。街の中心部からは少々離れているのですが、カフェのあるHai Phong通りは交通量が多く、常にたくさんのバイクが走っています。近くには国立のダナン大学を始めとして多くの学校があります。
(2)運営
 日本語を話せるベトナム人女性に店長として現地での運営を一任しています。当初は日本風メニューを数多く置いていましたが、売れ行きが乏しく現在は半数以上がベトナムのローカルメニューです。現地の学生をアルバイトとして採用しており、他のローカルのカフェと同じような運営スタイルとなっています。
(3)内装
 カフェはたんぽぽをモチーフとしており、ロゴのデザインや壁のペイントも現地と日本で話し合って決定しました。階段には現地の学生に桜の絵を書いてもらうなど、顧客と共に空間を作り上げています。メニューブックも最初は日本で制作していたのですが、作り方を現地の店長に教えることで、日本でデザインしたものを現地で修正して使っています。
(4)外装
 ベトナムでは道をバイクで走っていて何か目立つものがあると新しい店ができたと気づくようです。私達のカフェでも電装を購入して店の前に取り付けています。ただ、カフェの前に街路樹が植わっており、道路から見難いので他に認知されるような方策がないか検討しています。
(5)客層
 ベトナムではカフェでランチを食べる習慣はなく、別の食堂で食事をすましたあとにドリンクを飲みにカフェに来るのが一般的です。友人たちとの交流の場として1杯15000VND(約60円)ほどで、長い場合は数時間滞在しているようです。一般家庭にインターネット回線が普及していないため、カフェはインターネットの拠点という側面もあり、ラップトップ型PCを持ち込んでインターネットをしている人々もよく見かけます。
 住所:241 Hai Phong, Da Nang, Vietnam
 URL:https://www.facebook.com/TanpopoCafe
 営業時間:7時~22時
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カフェ外観
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カフェの内装
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カウンターに座る店長と私
4.今後の課題
(1)”日本”の発信
 最初は日本風のカフェということで日本の文化をベトナムに持って行こうと日本のマンガ、音楽、メニューを用意したのですが、全く受け入れられませんでした。お客様にとって普段触れていない文化なのですが、現地のスタッフが日本文化にそこまで興味が無く、日本人が常駐できないために現地で手厚く広めていくことができませんでした。
 現地ではK-POPが流行っており、最初は日本風のカフェということでK-POPの放送は拒否していたのですが、現地のお客様に受け入れられているため今ではK-POPのミュージックビデオを流しています。現状では日本人が関与していることが見えにくくなってしまっているため、お客様に受け入れてもらえる形での日本の発信を模索していきます。
(2)利益の確保
 初めに書いたように現状は赤字となっており、売上を増やさなければいけない状況にあります。売上増進のための施策を考えるために、現地のカフェを巡ったのですが、どのようなカフェが人気なのかが未だに掴めていません。ベトナム人が言うには新しいカフェはキャンペーン価格でドリンクが安いため、カフェがオープンするたびに客が移動していくとのことです。実際、カフェは次々とオープンしています。ただ、古くてもドリンクもあまり美味しくなく、ファサードも普通なカフェが人気だったりします。口コミと店員の繋がりでの来店が多い気がしているのですが、ほとんどの店員が数ヶ月でやめてしまうこともあり有効な施策がまだない状態です。現地と協力して引き続き施策を考えていきたいところです。
5.プロジェクトを通じて得たもの
 このプロジェクトを通じて異国の人と共にプロジェクトと行う楽しさと、今までになかった人的ネットワークを得ることができました。
 本プロジェクトを行う前から東南アジアへ何度か旅行をしたことがあるのですが、現地の人との関わりもあまりなくガイドブックに載っている観光地に行くだけでした。もちろんそのような旅行も楽しいのですが、今では現地に友人ができ、一緒に街を歩くようになりました。観光ガイド片手の旅行よりも深く現地の生活を知ることができるようになりました。これがこのプロジェクトに参加して得られた一番大きいものでした。
おわりに
 直近の目標はカフェの黒字化ですが、いつかはカフェの店長を日本旅行に連れていけるようにするのが今の夢です。投資の回収はまだまだできそうにもありませんが、それ以上に良い経験を積めていると考えています。