1.活動の経緯と状況
K社では、2年間にわたってコスト削減活動を行なってきた。専務取締役を委員長に各部門長によるコスト削減委員会を設定し、そこで活動テーマを決定しながら、進捗確認を行なってきた。営業部門、開発部門、製造部門、総務・企画部門とほとんどの主要組織が参加している形態である。
各部門がテーマおよび目標を設定、推進し、それを委員会で確認してアドバイスするという形式をとった。全体では2年間で10%以上のコスト削減を目標として設定した。それぞれの部門で、活動計画書の作成、目標値KGIの設定(Key Goal Indicator)を行なった。しかし、活動の実態を把握するKPIの設定(Key Performance Indicator)は検討されたが、十分にできていない。
中間在庫の削減、設計の見直しによる製造の容易性の改善、工程の改良による特定の製品群の生産性向上、原価率の悪い製品の生産方式の改善など、一部では成果もでている。しかしながら、売上が伸びたにもかかわらず営業利益への寄与率は+0.5%程度で大きくない。成果は一部に限定され、全社の低コストでスピードある活動ができる体質・体制が十分にできたとは言い難い。
2.本プロジェクトでの問題点
委員会形式の活動は、多くの企業で行なわれているが、その具体的活動はそれぞれの現場に任されていることが多い。本活動もその方式で行なわれてきたが、以下のような問題があったととらえられる。
① 個別改善活動の実行計画が、必ずしも十分に練られていない。活動の計画内容が十分に具体化されていず、またスケジュールも明確でない。活動過程でのKPIも明確に捉えられていない。
② 活動計画の内容が表面的である。具体的作業(アクティビティ)とその活動が価値あるものであるのかが捉えられていないで、付加価値の評価や品質への適合原価(トラブルなどの不適合原価が発生しないよう、あらかじめ対応しておくためのコスト)の検討まで踏み込まれていない(個別の不良対応はされているが)。
③ 一方でどのような活用要素にどのくらいのコストがかかっているのかが、十分に把握できる仕組みになっていない。財務的な原価把握で終わっている。したがって、具体的アクティビティとそのコストが明確でなく、実務レベルでコストを漠然としか捉えられない。
④ 結果として、実際の現場でのコストへの認識・意識が十分でなく、管理・監督レベルからの活動へのバックアップを含めて、切迫感が生まれていない。
3.今後の課題
今後の課題として、大きく3つ浮かび上がっている。
① 現場へやらせ放しの仕組みを、活動が軌道に乗るまで具体的なレベルまでリードする必要がある。その過程で重要なのは、管理職レベルの意識の改革である。それを、具体的に業務のアクティビティレベルまでの分析と、その付加価値の評価により、目のつけどころをしっかりと認識してもらい、高めていくことが必要となる。
② 活動基準原価計算の考え方の導入により、アクティビティレベルで付加価値を生む作業、生まない作業の認識や、適合原価のかけ方などを理解してもらうと同時に、どのくらいコストが掛かっているのかを業務に照らして提示でき、改善の対象をしっかりと認識してもらうことが必要となる。
③ 現在、成果への評価の仕組みは、会社の利益の賞与などへの反映は明確に従業員へ提示されているが、個々の活動の成果へのフィードバックは必ずしも明確でない。上記の仕組みの中で、成果も数値で捉えられるようにし、明確な形で評価していく仕組みが必要となる。
今回のプロジェクトにおいては、コンサルタントとしての参画もプロジェクト会議でのアドバイスまでで、具体的な現場レベルまでは立ち入っていなかった。かなり、このままでは成果がでるのは難しい、やり方をこう変えるべきだというアドバイスも行なったが、ただでさえ忙しい部門長レベルに、全面的に活動を促進させなければならないという認識を強くいだかせるまでには至らなかった。
実際には、コスト削減活動を基盤レベルで仕掛ける具体的仕組みづくり、数値を活用する仕組みが必要であり、その現場までを見据えた改革レベルでの具体的コンサルティング提案を行なっているところである。
宮崎一紀
(有)情報経営ブレインズ
中小企業診断協会東京支部中央支会副支会長、中小企業総合事業団IT推進
アドバイザー、東京都中小企業振興公社専門家登録など
経営改革、業務改革および情報システム導入支援コンサルティング、業務
革新に伴う研修・教育を行っている
論文・著書 日経文庫「企業診断の実際」、経林書房「実践カテゴリーマネジ
メント」(共著)、他著書多数
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