今宿博史
産業構造審議会繊維産業分科会は、今後の繊維産業の課題、目指すべき方向を重点的に検討する必要があるとの認識で、新たな「繊維ビジョン」(日本の繊維産業が進むべき方向ととるべき政策)を作成し、平成15年7月に経済産業大臣に意見具申を行った。
前回の繊維ビジョンは平成10年に策定されたが、その成果は決して満足の行くものではなかった。その意味で今回は、経済産業省にとっても繊維産業にとっても最後の威信をかけたビジョンであり、この5年間に構造改革が実現できなければ、もう次ぎはないとの認識である。補助金が特定産業に投入されることは、今日まれなことでもある。
ビジョンの核となる政策が、「中小繊維製造事業者自立事業」である。現状のままでは生き残ることが最も困難な川中の中小繊維製造事業者(織物業・縫製業・ニット業など)が中心となって行う「賃加工等から脱却し、自ら商品企画・開発とマーケティングを行い、生産・流通のロスを削減しつつ、より最終ユーザーに近いところで販売する事業」を支援する。今後3~5年間で総額百数十億円を投入する計画である。
1、平成15年度は、申請575件、採択110件で助成総額30億円であった。経済産業省によれば、全案件の約5割が直接消費者への販売を計画し、さらにこの直販の5割が直営店の開設を目指した。しかし結果は、直販を計画した1割程度しか実施できなかったと見られる。アパレル・小売抜きの消費者直販も容易ではない。
2、2年目の16年度は、申請269件、採択169件で助成総額50億円が決まった。採択案件5割が直販を、そして残りの5割のうち70~80%は直接小売業への販売を計画しているという。アパレル抜きで、しかし消費者直販の案件は減少した。
3、経済産業省は、3年目の17年度に向け「川中自立加速化委員会」を設け、慎重に事業の改善策を検討している。2年間の反省から自立事業を加速化させるため、より現実的内容に改善するものと見られる(繊研新聞11月15日記事より)。ポイントは3点。
(1)案件の審査で最終ユーザーへの直販を高く評価していたが、アパレルや小売業との連携を図ることも現実的な選択肢とする。原則自販とするが、例外的に商品企画・開発・生産を申請者自ら行うことを必須条件とした上で委託生産も許容する。
(2)審査は1回、申請書も簡略化し、面接審査を重視する体制を整備する。
(3)申請前のアドバイスを実施すべく新たにアドバイザー制度を設置する。繊維リソースセンターに自立事業に理解のある実務家を申請アドバイザーとして任命する。人数は20人以上で検討中という。
17年度自立事業の日程は、16年12月~17年1月産地説明会、17年3月1日までに正式公募要領を発表し、アドバイス受付が開始される。「5年なんて考えない。2~3年でやり遂げる」との業界挙げての決意の、3年目である。多くの中小繊維事業者の応募を期待したい。
■今宿 博史(いましゅく ひろし)
中小企業診断士
マーケティング・コンサルタント・サービス イマック 代表
ファッション経営コンサルタント(業態開発・コーディネイト事業開発など)
営業改革プロジェクト、人材育成支援、講演・セミナー企画運営
(社)中小診断協会東京支部中央支会常任理事 研究会部長
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 中小企業・ベンチャー総合支援センターアドバイザー
文化服装学院 文化ファッションビジネススクール 特別講師