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専門家コラム ソリューション・フォーカス・アプローチ(2005年6月)
橋本 泉

 企業の社会的責任、公共交通の安全確保等、組織のあり方を考えさせられる今日この頃です。近年、組織の問題の解決について、私が着目している方法が、ソリューション・フォーカス・アプローチです。

1.ソリューション・フォーカス・アプローチとは
 これは問題の解決にあたって、「問題」に着目するのではなく、「解決」に集中する手法です。目の前に問題があり、それを解決しようとする場合、まず徹底的に問題の原因を追求しないと前に進まないと考えがちです。しかし、ソリューション・フォーカス・アプローチは、目の前にある障害にとらわれるのではなく、まっしぐらに「本来の目的」にたどりつこうという発想です。1980年代半ばにアメリカで精神療法の一流派として誕生し、現在では医療領域だけでなく、ビジネス社会で、人材開発、組織活性化に応用されています。
 たとえば、化学薬品の工場で、安全確保のために、作業員は目を保護するためのゴーグル着用を義務にしたにもかかわらず、ゴーグルをする人が少ない。これを解決するにあたって、「着用率が低い」という問題を取り上げて、「着用しないのはなぜ?」「何が悪いのか?」と原因を探る。すると、「ゴーグルをつけろ!というときの管理職の高圧的な言い方に作業員が反発している」ことが原因だとなる。一方で、管理職は「作業の危険性を理解しない作業員の心構えが甘い」が原因だと指摘をする。しからば解決策として、管理職のコミュニケーション力をアップさせたり、作業員のマインドを変えたりするような研修をすれば、装着率は上がるのでしょうか。多少の改善はみられるかもしれませんが、決定的な解決には至らないでしょう。
 こうしたとき、ソリューション・フォーカス・アプローチでは、「問題が解決した状態」つまりこの場合ですと「作業員全員がゴーグルをつけて安全に作業する」といった解決のイメージを先に描いて、その状態に至るためには、どうしたらよいか、を考えるのです。問題を深く分析するかわりに、「どうなりたいか」「何を手に入れたいか」を明らかにして、そこから目の前の具体的行動を変化させるように導くのです。

2.組織・人事関連の問題への活用
 とはいいましても、ソリューション・フォーカス・アプローチは、原因追求や分析を全否定するものではありません。モノづくりや事故の調査の場面では、うまくいかない原因を突きとめて、徹底的に分析する必要があります。経営分析においても、経営数値を分析して原因を探り改善することは必須です。運営でも、システムや機械に不具合があれば、原因を探って、悪い部品を取り替え、正常に動くようにする必要があります。ところが、経営資源の中でも、人や組織の問題は、原因を探る過程で前述の例のように「だれが悪いのか」といった犯人探しになってしまう危険があります。人は自分が悪いとされただけで反発心が生まれ、「自分が悪いのではなく他の○○が悪い」と転嫁したり、自分を正当化しようとしたりします。そこで、ソリューション・フォーカス・アプローチによって、「何が悪いか」ではなく「どうすれば良いか」に早めに焦点を絞ることが有効だと考えるのです。

3.具体的に何をするか
 ソリューション・フォーカス・アプローチをマネジメントに取り入れる行動は3つです。
(1)よい点、できていることに焦点を当てる
 「自社には良い点などない」と嘆くのではなく、例えば「こんなに景気が悪いのに維持存続できているのは何があったから?」と考えます。こうすることによって、自分たちがどのような資源を持っているのか確認するようになり、安心感や「実現できる」という気持ちが高まります。
(2)良い点、できていることをもっとやる
 1年を通じて、売上達成率の平均は70%だが、ある月は60%、別の月は95%達成しているといった場合。60%にとどまった原因を追究するだけではなく、95%達成したときに何をしたのかを想起して、できていたことならば、もっとやってみよう!と働きかけるのです。どんなに小さなことでも、うまくいった経験を積み上げれば自信になります。うまくいったことを語っていると、未来への意欲や希望も出てきます。失敗をとがめるよりは、次にどうしたら成功に向かうことができるかという点に焦点が絞られるようになり、社内の雰囲気が明るく前向きになる効果もあります。
(3)うまくいかなければ違うことをやってみる
 とはいっても、「違うこと」は思いつきづらいものです。そこで、ヒントとなる声を大切にします。前述のゴーグル装着問題で「ゴーグルのデザインが、かっこよくならない限り難しいよ」といった作業員からのメッセージが聞こえたら、これが大きなヒントです。こうしたメッセージを聞き逃さないことや、『違うこと』が言いやすい風土にすることも大切です。

 経営環境が厳しい中では、短期的な問題解決に追われるのが現実です。原因を追究し、迅速な対処をすることも必要です。ただし、問題解決を急ぐだけでは組織は疲弊してしまいます。目の前の「問題」だけにとらわれるのではなく、組織の本来の目的に沿った「解決」ができるように、組織のリーダー、指導者がビジョンや成功のイメージを示すとともに、マネジメントのプロセスにおいて、上記の3つの行動を取り入れてはいかがでしょうか。


□橋本 泉
中小企業診断協会東京支部中央支会会員
販売・サービス業種を中心に、「働く人とそのお客様が笑顔になる」ためのコンサルティング活動を行っている。


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