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専門家コラム 韓国人は、なぜ日本語の上達がはやいのか(2005年6月)
新納 一徳

<韓国人は、なぜ日本語の上達がはやいのか>

 経済の国際化が進むにつれ、日本にもたくさんの外国人がやってきています。昔は青い目の外国人が日本語を少しでも話すと、「日本語がお上手ですね」と無意識のうちにお世辞を言ってしまうのが、日本人の習性でした。ところが、最近の外国人といったら(青い目をしていない人も多いのですが)、本当に日本語を流暢に話す人が多くなりました。
 特に韓国人は日本語のマスターが速いようです。日本に来て日本語学校で半年ほど学ぶとスラスラしゃべれるようになります。でも、少し不思議な気がしませんか。
 外国語というのは、中学校以来の英語学習に代表されるように、何年勉強しても上手にならないものだったのではないでしょうか。それが、どうしてすぐしゃべれるようになるのでしょう(それに、日本語というのは、数ある言語の中でも大変難しい言語で、日本人自身にとっても手強い言語だったはずではないでしょうか)。

<韓国語と日本語はよく似ている>

 答えは、日本語と韓国語との文法がよく似ているということにあります。日本語の語順にそのまま韓国語を並べていけば、それで韓国語の文章ができます。助詞なども、日本語と韓国語とで置き換え可能なものがたくさんあります。日本語の特徴で(だいたい英語との比較ですが)主語が省略されるということがいわれますが、これは韓国語でもあります。
 つまり、韓国人にとって、日本語は非常に習得しやすい言語なのです。ただし、韓国人にとって、大変な部分もあります。それは、第一に文字です。ひらがな、カタカナ、それに漢字と、日本語はたしかにいろいろな文字を扱うという点での難しさがあります。韓国でも漢字を使いますが、日本ほど日常的に使用しないので、韓国人にとっては漢字の再学習という課題も控えています。それから、発音についても、濁音などは韓国語では語中で濁音が登場することがあっても、語頭に濁音が登場するということがないので、とまどうようです。
 しかし、このような適度な困難があるので、韓国人は日本語を学習するとき、漢字、ひらがな、カタカナなどを一生懸命学習します。何より、日本に来た韓国人にとっては、生活をしていくためにも日本語をマスターすることがせまられますので、いわば必死に勉強し、その結果、上達が早くなるのです。
 ひるがえって考えますと、日本人で韓国語をマスターする人が比較的少ない(最近では、冬ソナ効果もあって増えているようですが)のは、それだけ日本人の方がまだ本気の学習になっていないということかもしれません。

<中国人の日本語習得はどうか>

 韓国人と比べて、中国人の方はどうでしょうか。中国人は韓国人以上に多数、来日し、日本語学校で勉強しています。
 ただし、中国人の場合、韓国人と比べてハンディがあります。第一に、中国語の文法は日本語と比べてかなり違っています。たとえば日本語の場合、語順について結構、融通のきくところがあり、それを助詞の活躍などでカバーしています。それに対して、中国語では語順が厳格に決められており、語順が変われば意味がまったく変わってしまうことが多いです。助詞もありますが、日本語ほどしょっちゅう登場することはありません。 このように、大きな違いが日本語と中国語にはあり、これは中国語を学習する日本人にとっても悩みの種になっています。
 ところが、日本語と中国語の共通点として、一方では漢字の存在があります。中国では漢字を簡略化して字画を減らした、簡体字を使うというような違いもあるのですが、結構、漢字だけ見ていくと、意味がとれるわけです。
 したがって、中国人学習者は、中国語と日本語の文法の大きな違いというハンディがあるにもかかわらず、漢字を見れば意味が何となく分かるという落とし穴(錯覚)に陥って、その結果、日本語習得の伸びが韓国人に比べにぶりがちな面があります。また日本語の助詞の使い方がおかしな中国人も多数、見かけることと思います。
 このような、日本語学習をしていくうえでのワナはありますが、これらを乗り越えていけば、中国人学習者の日本語能力もぐんぐん伸びていきます。

<ひるがえって、日本人にとってどうか>

 今、記してきたことは、実は日本人が韓国語を学習する場合、あるいは中国語を学習する場合にもそのまま当てはまります。つまり、韓国語については、日本人にとって比較的習得しやすい言語ですから、もっと本気になればもっと韓国語が上達する日本人が増えていくはずだということです。また中国語については、漢字の意味に頼るのではなく、中国語自体の文法を徹底的に学習する(もちろん、四声と呼ばれる、中国語の声調のマスターも大前提として必須ですが)ことが肝要のようです。
 以上、偉そうなことを書きましたが、私自身、韓国語は昔、少しかじってはやばやと挫折した経験があるだけ、また中国語については初級の学習を始めたばかりの初心者です。ただ、外国人に日本語を教える「日本語教育能力検定試験」という資格をもっていて、その研修において韓国人や中国人の日本語学習者に触れる機会が、たくさんあったもので、このような文章を書いてみました。皆さんの参考になれば幸いです。
 私が、「日本語教育能力検定試験」の学習をしながら感じたことは日本人自身、日本語に対して、それを言語として客観的に見ることがあまりできていなかったのではないかということです。もし日本語に対する見方が客観的になっていけば、日本語と中国語や韓国語の比較を通して、アジアの隣人たちとの相互理解も深まっていくのではないでしょうか。また、私たちの身近にいる外国人の日本語学習者に対する距離感も近くなっていくことと思います。

□新納 一徳(にいの かずのり)
中小企業診断士。日本語教育能力検定試験合格、420時間研修修了。中小企業診断士試験対策講座の講師を長年経験。


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