社団法人中小企業診断協会東京支部 中央支会
Search
Mail Magazine
詳しくはこちら
専門家コラム 中小企業における「事業リスクマネジメント・ERM」(2005年7月)
保科 悦久

<中小企業における「事業リスクマネジメント・ERM」>

 企業は、従来からリスクマネジメント活動を行ってきていますが、なぜ最近になって「事業リスクマネジメント(ERM)」という言葉が注目されるようになってきたのでしょうか?その背景には、企業経営におけるリスクマネジメントの対象が、個別事象から企業全体に移行してきたことが考えられます。
 つまり従来、事業リスクマネジメント(Enterprise Risk Management)は、大きな事故や災害を予防する方法、または発生後における対処法という観点から捉えられていましたが、現在では企業収益を最大化するための方法という観点から捉えられるようになってきたということでしょう。
 金融庁では、証券取引法上のディスクロージャーをめぐり、不適正な事例が相次いで判明したことを受け、「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応(第二弾)」を公表し、経営者による内部統制の有効性評価報告書の提出と監査人の関与に関する制度化に着手しています。これは主として、上場会社に対する開示上の内部統制ルールの一環ですが、このような事業リスクマネジメントと統合化された内部統制の必要性は、なにも上場会社に限るものではありません。経済産業省は、事業リスク評価・管理人材育成システム開発事業の一環として『事業リスクマネジメント』のテキストを発行しており、そこで「事業リスクマネジメント」を、

(1)事業リスクを合理的かつ最適な方法で管理してリターンを最大化することで事業価値を高めるための活動、
(2)事業が求めるリターンと事業が取っているリスクの情報を適切に利害関係者に伝達することで、コーポレート・ガバナンスとアカウンタビリティを高め、事業の継続性を高めるための活動

であると定義し、すべての企業が直面すべき課題であるとしています。
 また日本公認会計士協会東京会は、他社の特許権(知的財産権)を侵害するケースなどの「訴訟に関するリスク」、大口の得意先が倒産するケースなどの「信用リスク」、税務調査などにより未払税金が発生するケースなどの「税務リスク」、労務人事管理の不徹底などから情報が漏洩するケースなどの「組織内部の情報に関するリスク」等、中小企業を取り巻くマネジメントを必要とするリスクが多種多様になってきていると報告しています。これらのリスクのマネジメントを適切に行うことが、「中小企業の長期的な収益最大化ための一手法」であることを十分に理解して企業経営を行う時代になっているのです。

■保科 悦久(ほしな よしひさ)
中小企業診断協会東京支部中央支会常任理事(青年部部長)、東京税理士会麹町支部情報システム委員会委員、日本公認会計士協会東京会経営委員会委員。著書「入門簿記テキスト」「決算書の読み方・作り方・活かし方」「中小企業の再生支援マニュアル」(ともに同友館)


Copyright All rights reserved (C)1997-2011 社団法人中小企業診断協会東京支部中央支会
このページのトップへ