事業継続計画(BCP)とは 【その1:BCPの概要】
1. 中小企業に事業継続計画(BCP)が求められる背景
地球温暖化の影響か、台風の巨大化、100mm以上の豪雨が1970年代と比べ約10倍に増えるなど、近年とみに風水害の被害が日本各地で続発しています。また、日本列島が地震活動期に入ったと言われており、震度5以上の地震が毎月のように発生するようになりました。
このような自然災害による浸水や停電などの影響が、中小企業の企業活動にも大きな影響を与えており、中越地震では被災企業の3割が倒産・廃業に至ったと報告されています。
このような経営環境において、自然災害や社会インフラの停止、サプライチェーンの停止などの影響より如何に企業を守って事業を継続し、従業員の雇用を守り、企業の社会的責任を果たすか、企業の大小を問わず、いま経営者が取り組まねばならない経営課題のテーマの1つとして、企業のリスクマネジメントである「事業継続計画(BCP)」が求められています。
中小企業の「事業継続計画(BCP)」の有無は、大企業では取引先企業の選別指標に加えたり、金融機関では融資格付けの評価指標の1つとして採用、政府系金融機関で被災融資(リスクファイナンシャル)予約の条件として検討されるなど、中小企業の経営に影響を与え始めており、中小企業でもその取り組みが求められつつあります。
2. 事業継続計画(BCP)とは
新聞でも最近BCPの文字が出てくるようになりましたが、BCPは“Business Continuity Plan”の頭文字を取ったもので、日本語では“事業継続計画”と呼ばれています。
毎日取引先の与信や手形の決済などの様々な業務上リスクを企業経営者は日常のコントロールしていますが、BCPが対象とするハザードリスクは「被害は甚大だが発生確率が低い」との理由で、放置されているケースが多く見受けられました。
(1) 電力・ガス・水道などの社会インフラの停止
(2) 浸水などによる主要生産設備への被災
(3) ロジスティックスや主要取引先の被災などによる活動停止
(4) 情報システムの停止
事業継続計画(BCP)とは、企業の存続に必要な業務(中核業務)を選定し、中核業務に関わる重要なリスクを予め洗い出しその対策を立案する、“コンテンジェンシープラン”の1種であり、企業経営者がなすべき重要な責務の1つです。
通常、大企業の事業継続計画では地震などの東海地震や主と直下型地震などの大規模災害やテロ・戦争、生産拠点国の国情変化など幅広いリスクを考慮して策定されますが、活動拠点が比較的狭い中小企業にとっては、大企業が行っている事業継続計画策定プロセスは、とても荷が重いものとなっています。
そこで経済産業省は、平成18年2月末ごろを目標に、中小企業向け「事業継続計画策定ガイドライン」を公表する予定ですので、中小企業経営者は中小企業診断士などの支援を受けながら、このガイドラインを活用して、自社の事業継続計画の策定をお勧めします。
3. 災害対策と事業継続計画との違い
a) 相違点
よく、「事業継続計画(BCP)=災害対策計画」と誤解される方をお見受けしますが、事業継続計画は災害対策より大きな概念と捉えていただく必要があります。
事業継続計画(BCP)では、天災のみならず社会インフラの停止や生産財や保守部品の供給停止、情報システムの停止、物流の停止など、企業の中核事業の継続に影響を及ぼすリスクを幅広く社内・社外より洗い出し、次の3つの段階について、予め対策立案を求めています。
• リスク発生直後の二次被害防止と中核事業再開を行う段階(業務再開フェーズ)
• 中核業務より業務の幅を拡大する段階(業務回復)
• 平常の企業活動へ復帰する段階(全面復旧フェーズ)
これに対し「災害対策計画」では、対応するリスクが地震などの天災や火災などと狭く、その活動も防災や被災後の安全確保に重点が置かれており、企業の事業継続までは視野に入っていない点が、その大きな相違点となっています。
また、災害対策が企業に法律で義務付けられているに対し、事業継続計画は法律などによる整備の義務を企業は負いません。
b) 類似点
事業継続計画(BCP)・災害対策計画とも、従業員を含めた人命の安全確保を第一としていること、毎年継続的に訓練を実施し課題があれば見直して行く点が、その類似点として上げられます。
4. 事業継続計画(BCP)整備の効果
仮にも、中小企業が事業継続計画(BCP)を作ろうとすると、時間的・経済的な負担が発生しますが、その負担を超える大きな効果が見込まれています。
(1) 受注機会の拡大
事業継続計画(BCP)は、想定したリスクに対する企業の対応能力を高める効果があります。
会社の存続が社会的使命の大企業においては、部品調達先の被災などによる部品供給停止のリスクを避ける為、部品調達先の地域分散を進めつつあります。
大企業の取引先選別に対し、中小企業が事業継続計画(BCP)を整備することは、大企業の部品調達先として認定を受ける必要要件であり、受注機会の拡大につながります。
(2) 企業の信用度の向上
事業継続計画(BCP)は、数年先にISO化・JIS化を図る計画が、現在進められています。
事業継続計画(BCP)では、ISO9000やISO14000と同様に、PDCAサイクルを自主的に運用する「マネジメントシステム」の構築が求められており、“事業継続計画(BCP)を整備した企業は管理レベルの高い企業”、と利害関係者より認知されます。
一部金融機関では、融資の格付け要素として、事業継続計画(BCP)を使用する動きも出てきており、事業継続計画(BCP)は企業の信用度を現すバロメーターの1つになりつつあります。
(3) 公的支援の獲得
中越地震では、被災企業の3割が倒産・廃業に至り、新潟県の鉱工業生産高も低下したことから、政府は事業継続計画(BCP)を整備した中小企業に“復興資金”予約を認める動きがあります。これを、リスクファイナンシャルと言います。
被災程度の軽減が図れても被災の回避が行えない大規模地震などの天災については、リスクファイナンシャルの裏付けがないと被災後に企業は倒産の事態に至る可能性があり、融資の不良債権化を懸念する金融機関では、この公的支援を受けられない企業への融資には、高い金利を適用するなどの恐れが高まっています。
□ 京盛 真信
勤務先 :三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
所属団体 :中小企業診断協会東京支部中央支会、npoITC群馬
活動分野 :金融機関への情報化システムコンサルティング、リスクコンサルティング
著 書 :「バランス・スコアーカードで進める業種別営業戦略(共著)」「知りたい!数検」など、多数