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専門家コラム 中小企業IT化成功の鍵は「問題意識」と「良き支援」(2005年11月)
岩岡 博徳
<中小企業IT化成功の鍵は「問題意識」と「良き支援」>

“これからは経営にITが必要だ”といわれて久しい。確かに最近の情報技術、通信技術の進歩は目を見張るものがある。例を挙げれば、データの記憶容量、通信速度の大容量化や高スピード化、出力画面の解像度は何十倍、何百倍となっているにも関わらず、各機器の価格は逆に何分の一にもなっている。そしてこのようなパフォーマンスは企業経営に必ずやメリットをもたらしてくれる。
マイクロソフト社のWindows95が発売され、世の中が「IT革命」だといわれてはや10年になるが、果たして中小企業の現場において本当にITの恩恵を受けることができたであろうか。
私自身、中小企業のIT化を経営課題にしたコンサルティングを行っているが、この問いに対してはほとんどの中小企業で“NO”であると考える。
経営のIT化について、“お金のある大企業が行うものだ。”とか“ITについて知っている者がいないとどうにもならない。”というイメージを持っている中小企業事業者は多い。更に、最近ではIT長者と呼ばれるITを駆使して高収益を上げている企業が台頭してきたところから、デジタルデバイドに拍車をかかってきている。
これでは、普段からIT化を進められない中小企業事業者は、ますます「ついていけない」という気持ちになってしまう。このような心理的状況から中小企業におけるIT化離れは深刻になっている。
しかし、ここで問いたい。「中小企業において本当にIT化はできないか?」と。
 前述の通り、ITは間違いなく自社の経営にメリットをもたらしてくれる。経営実務面で「便利」を提供してくれるツール(道具)である。IT長者にしてもベースは中小企業なのである。従って、中小企業はもう一度IT化について取り組んでいかなければならないのではないか。


 ほとんどの中小企業事業者が、一度は経営のIT化を検討し実行したことがあると思われる。しかしうまくいかないことも多い。従って、中小企業のIT化がなぜうまくいかないのかについて考えたい。
私のクライアント(中小企業事業者)でIT化に関する生の声を集約すると以下の通りである。
<中小企業のIT化がうまくいかない理由(事業者の意見)>
・どのようなものがあるか、どのような効果があるのかわからない。
・どこから手をつければいいのかわからない。
・IT講習に行っても、一般的なことが多く身につかない。
・IT化を企画できる人材がいない(IT業者とのやりとりをできる人材がいない。)
・財務的な余裕がない。
・時間がない。
上記のような理由や、初めから目を向けようとしない「食わず嫌い」的な心理も手伝ってIT化はますます遅れてしまうのである。


 IT化が経営にもたらすメリットは大きい。このことはほとんどの事業者が思うところである。しかし実際は「ITリテラシーの不足(=ヒトの問題)」「財務的余裕のなさ(=カネの問題)」「時間的余裕の無さ(=時間の問題)」「経営者の認識不足(=意識の問題)」等の理由によりIT化は進まない。
一方で時代は「手書き」から「タイピング」、「アナログ」から「デジタル」、「産業時代」から「IT時代」に明らかに移行している。従って、現状を直視せず問題を先送りするわけにもいかない。問題を先送りにしてしまうのは、これまで述べてきた「ヒト」「カネ」「時間」「意識」といったところが原因となるわけであるが、ITを導入するだけであれば、実際は大した問題にはならないことが多い。現に低価格になったパソコンとインターネットだけでもかなりのことができるようになる。
問題は、何かの経営課題を解決するべくIT機器を導入したかどうか、更にはIT機器を導入した後に使いこなすことができたかどうかである。
中小企業事業者の多くは、一度はIT機器を導入したと思われる。しかし実際は使いこなせず、パソコンに埃がかぶっている状態ではないか。
このような状況をみると、必要なのは「問題意識を持って適切にIT機器を導入し使いこなすこと」すなわち「適切なIT導入と運用」であることがわかる。


 ITはツールである。従って、ボタンひとつを押せば経営問題を解決してくれるわけではない。しかし、経営にかかる問題意識の中からその問題を解決してくれる有益なツールにはなる。
 例えば、毎日の経理事務について、紙を見つめながら電卓を必死に叩いて「数字が合わない。」と嘆き、また更に電卓を叩くといった光景をよく目にする。しかし、エクセルを使えば、このような手間はかなり削減できる。
 ここで重要なのは「経理事務に手間がかかっているので何とか時間を削減するためにこうしたい」という問題意識と「エクセルを使いこなせる」というITリテラシーが備わって初めて、経理事務の手間削減を達成できるということである。
 では、経理事務の手間削減を達成するためには、事業者自らが勉強をしなければならないのか。もちろんそれが最も好ましいといえるが、現場においては他にも多くの経営課題を抱えており困難である。そして大抵の場合は、他の経営課題も多いところから、時間がなく、経理事務における解決することもなく頓挫してしまうのである。
しかしここで一歩踏み込んで欲しい。具体的には社内外の者から支援を受けるようにすることである。経営者の勉強の手間を社内外の人材で補完するのである。


社内外の支援者を受ける際に考えなければならないのは支援をする者の能力である。例示でいえば、経理事務の効率化についてその真意を汲み取り、自己の経験に基づき様々な提案をできる経営コンサルタントは多い。また、エクセルの操作方法については、無料パソコン講習等で教えてくれるインストラクターも多い。では、経理事務の効率化の真意を経営的に汲み取り、エクセルだけでなく適切なIT化を促すことができる者(以下、「ITコンサルタント」と呼ぶ。)」であるとどうであろうか。私の経験則ではこのように「経営」と「IT」をつなぐ事ができるITコンサルタントはさほど多くないように思われる。しかし、IT化に苦心している中小企業事業者にとってみれば、「経営」と「IT」の両方を巧みに組み合わせ、IT化にかかる経営課題を解決できるITコンサルタントの支援は非常にありがたいものになるはずである。
 一方でITコンサルタントに依頼すると莫大な報酬を請求されるというイメージがある。そのようなイメージがあるのは、大手コンサルティングファームなどが大企業を相手にして、長期的に複数のコンサルタントを投入する例が多いためである。中小企業の現場においては、必要かつ十分であっても高額報酬になるケースは少ない。逆に高額な報酬を支払うことなく、適切な支援をしてもらい実行すれば、IT化に結びつきやすくなる。
中小企業のIT化の成功の鍵は、良きITコンサルタントからの支援を受けることも重要である。言うまでも無く、それは中小企業事業者のIT化に対して意識を持つことを前提にしている。

□岩岡 博徳(いわおか ひろのり)
中小企業診断士/ITコーディネータ/MBA
横浜市立大学商学部経営学科卒業
東京都立大学(現:首都大学東京)大学院社会科学研究科経営学専攻修士課程修了
大手電機メーカー系半導体商社勤務後、アイズコンサルティング設立。代表就任。
神奈川中小企業センターインキュベートコーディネータ、ドリームゲート登録アドバイザー等公職多数。



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