鳥海 孝
第二創業のきっかけとしての自社商品力の強化について
全国各地の商工会議所が主催している「第二創業塾」がブームになっている。後継者へのバトンタッチ、景気回復基調を背景にリストラ一辺倒から前向きに経営をとらえるようになった、などさまざまな背景があろう。筆者が横浜商工会議所主催の同セ
ミナーに参加しつつ、感じた第二創業への取り組みについて纏めてみた。
1. 第二創業の目的・きっかけはさまざま
第二創業に取り組むきっかけはさまざまである。主な目的やきっかけを参加者の話をもとに纏めると次のとおりとなる。
(1)事業承継のタイミングを迎え、後継者として新機軸を打ち出したい、
(2)既存商品・サービスが成熟期(衰退期)に入り売上が伸びない。新市場開拓や新製品開発などが必要になっている、
(3)社内がなんとなく停滞気味、組織風土の改革や従業員のモラールを向上させたい、などとなっている。何れにせよ、現状のビジネスモデルに限界を感じ、新しいことに取り組む必要性を感じている。
2. 目的(きっかけ)により解決手法は異なる
以上の目的・きっかけに応じ、その解決の方向性を述べると次のようになる。
(1)後継者による新機軸の打ち出し
どこに重きを置くかにより異なるが、基本的には、経営理念の確認、経営目標の再設定からビジネスモデル、ビジネスプロセスへとブレークダウンし、具体的な経営計画作成の手続きを踏む必要があるだろう。
(2)新市場開拓や新製品開発の必要性
いわゆるマーケッティングの強化が課題である。市場・製品マトリックスによる新ターゲット・主力商品の設定と顧客アプローチ・顧客管理方法、プロジェクト手法による製品開発の実施などが解決の方向性であろう。また、新製品開発は、自社の経営資源(シーズ)の洗い出し、ターゲット顧客の設定、ニーズの把握、プロトタイプの作成、テストマーケティング、などが必要とされる。
(3)組織風土改革や従業員モラールの向上
長期的な視野からの取り組みが必要であり、経営戦略に沿った組織・人事制度設計や人員配置(適材適所)を辛抱強く行っていく必要がある。
何れもテーマも全社挙げての、また長期的な取り組みが必要であるが、日常業務に追われながらその実施には気が重い、一歩がなかなか踏み出せないなどが実情であろう。そこで、筆者は顧客や従業員に最も分かりやすく、かつ即効性の高いマーケティング、その中でも「商品」から入っていくのがベストであると考えている。
3.第二創業のためのマーケティング戦略~そのための商品力の見直しが第一歩~
第二創業にあたり、まずは自社の製品・商品、サービスを考えることが重要である。通常のコンサルティング手法では経営理念・経営目標、環境分析…というように進めるが、すでに既存の事業がある中で、第二創業を考えるには、既存の製品・サービスのチェックから入るのがやり易いのではないか。

以下、皆様にお馴染みのSS(サービス・ステーション、いわゆるガソリンスタンド)を例にとり考えて行きたい。同業界は、燃料油(ガソリン・軽油など)需要の成熟、原油価格高騰による仕入価格の上昇、激しい価格競争など厳しい状況に直面している。
ステップ1
(1)これまでの自社商品のラインアップを確認
ガソリン・軽油などの燃料油
自動車用オイル
タイヤ・バッテリー・アクセサリー
洗車
(2)自社商品を取り巻く環境変化を認識する
燃料油:仕入価格上昇のなかで価格競争は続き、需要はピークを迎えている。
オイル・タイヤ・バッテリー・アクセサリー:オートバックスなどの専門店とのシェア争い。
洗車:消費者の節約意識や自分で洗車するライフスタイル。
各商品とも厳しい状況が続いている。
(3)自社のキーとなる経営資源は何か
・SSとしての接客サービスレベルは高い。
・優良顧客を確保している。
・一定地域でのネットワークが形成できている(複数SSの適正配置)。
ステップ2
狙うべきマーケットの絞込みを行う。マーケットは、顧客及びそのニーズと他企業などとの競争要因をとらえ次の観点から整理していく。
・成長性・利益性の高いマーケットか→自動車アフターマーケットの利益性は高い
・競合企業が少ないマーケットか→基本的に競争が少ないマーケットはない
・技術やノウハウの蓄積が進みやすいマーケットか→従業員の販売スキル・ノウハウは
進みやすい
・自社の強みが活かせるマーケットか→ネットワークや高いサービスレベルが活かせる
・自社の力で展開可能なマーケットか→既存経営資源の組み合わせの変更により可能
ステップ3
ステップ1と2より「新しい商品のあり方(コンセプト)」」を決める。SSでは店舗そのものが商品(清潔で気分を癒してくれる場)であるので、コンセプト作りには店舗コンセプトを考えることが重要となる。
・高齢者・女性に優しいガソリンスタンド創り(世の中の高齢化や女性ドライバーの増加の動きから主要顧客を変える)
・オーナードライバー中心の店創り(ガソリンスタンドのスペースを占めてしまうトラックへの給油・サービスは広いスタンドに任せる。ネットワークの活用による。
・トータルカーライフサービスの提供の場
ステップ4
具体的にステップ3のコンセプトを商品の形に落とす。上記コンセプトに基づくSS取扱商品は次のとおりとなる。
・優しい接客、スマイル接客(どこかのファーストフードの商品メニューにあるようにスマイル0円の発想)、車に関するメカニック情報の提供(特に女性客)
・車検取り扱いと車検工場の新設等車関連商品の拡充:各SSでは。車検見積り、受付を行いネットワークの真ん中に位置する車検工場で集中的に車検を行う。
・コーヒーショップの併設によるドライバーへの憩いの場の提供
・ミニコンビによるカー商品のワンストップショッピングの提供
・旅行代理店機能等のサービス商品の充実(特にドライバー向け商品、オートキャンプ情報や駐車場の広いホテル・旅館情報の提供や予約取次ぎ業務)
以上のステップを踏み自社の商品力の強化を行っていく。重要なことは、小売業であれ、製造業であれ商品力の見直し・強化が現状を変え、会社全体を変える第一歩となることである。この取り組みを経営革新の切り口として位置付け、まずは実行し小さな成功体験を積み重ねることが全社の革新、第二創業に結びつくことである。最初から大上段に構えるのではなく、変わることは素晴しいことが認識でき全社にその雰囲気が出来たところで本格的な経営革新計画(中長期計画)策定に入ることが実際面で有効ではなかろうか。
これから来年度に向けた短期計画作りや第二創業を目指した中長期計画策定に取り組まれる会社は多いと思う。本稿が少しでも参考になれば幸いである。
□ 鳥海 孝(とりうみ たかし)
ビジネス・ソリューション研究所 代表
中小企業診断士、ITコーディネータ、PMS(プロジェクト・マネジメント・スペシャリスト)