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2006年2月27日

専門家コラム 食品トレーサビリティシステムについて(2006年3月)

町田 行雄

<食品トレーサビリティシステムについて>


はじめに
 食品表示偽装事件やBSE(牛海綿状脳症)に関連した米国産牛肉輸入再禁止など食品の安全性に対する関心が寄せられています。消費者は、食品に対する不安や食品業界への不信感を募らせています。 このような「食」に関する問題の発生状況を踏まえて、農林水産省は、平成14年4月に公表した「食」と「農」の再生プランにおいて「食の安全と安心の確保」を重要な課題と位置付けて「食品トレーサビリティシステム導入の手引き」(平成15年3月)を公表しています。 


食品トレーサビリティシステムの概要
 「食品トレーサビリティシステム導入の手引き(食品のトレーサビリティ導入ガイドライン策定委員会)」(以下、ガイドライン)では、食品のトレーサビリティ(Traceability:追跡可能性)とは、『生産、処理・加工、流通・販売のフードチェーンの各段階で、食品とその情報を追跡し遡及できること』とあります。 「食品の生産から販売までの履歴情報を追跡すること」です。
 ある食品の「原材料は何か」「仕入れ先はどこか」「産地はどこか」「どこに販売したか」といった情報を追跡し、起源を調べる仕組みです。 履歴の調査には川下に向かって、残された記録を手掛かりに、食品の行方を追いかける追跡(Trace Forward、Tracking)と川上に向かって、残された記録を手掛かりに、食品の履歴を探索する遡及(Trace Back、Tracing)の二通りがあります。 ガイドラインでは識別管理として、食品の製造、流通の各段階の事業者が原材料(包装材等も含む)と仕入れ先および販売先を識別して、対応付けて情報を記録、保管することが必要としています。識別管理は、トレーサビリティを確立する基本となる作業です。
 トレーサビリティの導入となると、情報システムが前提と思われますが、トレーサビリティは「もの」としての食品の動きを記録するものです。 情報システムは業務効率化の手段に過ぎません。 規模によりますが、紙ベースやパソコン1台によっても実現が可能です。トレーサビリティはこのように、記録された情報をもとに食品の動きを追跡、遡及できるようにする仕組みです。このようなトレーサビリティシステムを導入することにより、以下のような目的を達成できます。
(1)情報の信頼性の向上
ガイドラインでは、情報の信頼性向上の寄与として3項目を提示しています。
・経路の透明性が確保できる 
・製品と製品に貼付されたラベルの表示事項の対応関係を確保できる 
・消費者、取引先、権限機関への情報提供を迅速、積極的にできる
(2)食品の安全性向上への寄与
 不都合のあった食品について、迅速に原因究明と製品回収ができれば、消費者の被害を最小限に食い止めると共に、フードチェーン全体の経済的損失を最小限に止めることが可能となります。
(3)業務の効率性向上への寄与
 あらかじめ定義した製品識別記号により、製品を識別管理して、製品の素性に関する情報を記録、伝達することで、在庫管理、品質管理を効率的に行うことが可能となります。


食品トレーサビリティシステムの導入
  トレーサビリティシステム導入は、準備、導入、稼働の3ステップで進めます。
 以下にトレーサビリティシステム導入の流れを例示します。
【準備段階】 
(1)事業者による組織形成
 生産段階から小売りに至るまでのトレーサビリティを実施するには、事業者の組織で取り組む事が重要です。
(2)現状の把握と基本構想書の作成
・現状の把握
 消費者および事業者のニーズ把握、当該製品の流れ、保有する現状資源の把握。 
・目標設定
  目標として、基本的な考え方、役割、期待される効果、システムの基本仕様等を設定
 します。
・情報システム基本構想の作成(情報システムを導入する場合)
・基本構想書の作成
  検討結果に基づき基本構想書作成し、文書化します。関係先に提供して、トレーサビ
 リティに関する認識を共有します。
【導入段階】
(1)トレーサビリティ作業手順書の作成
 トレーサビリティシステムを運用管理するための手順書を作成します。 製品の識別管理の作業として、記録する情報項目、記録の方法、保存期間と保存方法などを記載します。
(2)導入スケジュールの作成と研修
 トレーサビリティ作業手順書に基づいた活動を行うためのスケジュールの作成を行います。実施スケジュールおよび試験試行計画を作成し関係者の研修を行います。
(3)システム試行稼働
【稼働段階】 
(1)システムの評価と修正
 トレーサビリティシステム試行稼働の結果から、システムの評価と修正を行います。
(2)広報、マニュアルの整備
(3)システム正式稼働
(4)システムの更新


食品トレーサビリティシステム導入の留意点
 トレーサビリティは、食の安心・安全を推進するのに効果的な手段ですが、いくつかの制約もありますので、以下に留意点を示します。 
(1)技術的、経済的な制約
 対象とする食品や部門の固有の性質により、適用できる可能性が異なります。たとえば牛と牛肉は一頭毎に識別が可能ですが、米菓の場合は、主原料(米)や副原料(醤油、海苔、調味料)などを個別に識別することは困難です。このような場合は、識別単位を技術面や経済面で実現可能な単位を設定して識別します。効果や効率性と費用を勘案してバランスを取ることが重要です。
(2)システムの効率低下
 次のような場合に、システムの効率が低下することがあります。
・取引先間で受発注手続きが異なる
・情報の信憑性に問題がある
・事業者間の情報伝達が困難である
・ロットの構成が不均一
 導入にあたって、自社はもちろんのこと取引先とシステム要件を明確にすることが大切です。 更に、重要な事はきちんとした在庫管理ができなくては、トレーサビリティの確立は、困難になります。
(3)トレーサビリティと安全管理
 トレーサビリティは食品を追跡・遡及のシステムです。安全、品質、環境などの管理は他の管理システム(HACCPやISOなど)で実施します。
(4)コンプライアンスの醸成
  トレーサビリティの実施にあったては、関連する法規を遵守するコンプライアンスの醸成が必要です。
 

■町田 行雄(まちだ ゆきお) 
中小企業診断士 ITコーディネータ 
有限会社エム・エイ・コンサルティング 代表取締役
著書は「知りたい! XMLマスター」経林書房など

投稿者 info : 01:50

2006年2月13日

平成18年度 新入会員活動説明大会 中央支会「第4部 会員交流懇親会」(案内)

中央支会では、4月22日(土)に渋谷フォーラム・エイトで開催される「平成18年度 新入会員活動説明大会」の場で、会員交流懇親会を開催します。
当日は、楽しいゲームなども用意しています。新入会員と従来からの会員が楽しみながら、名刺交換や情報交換をする場にしていきます。
皆様お誘い合わせの上、ぜひご参加頂きますよう、実行委員一同心からお待ちしています。


1.日 時:4月22日(土) 17:00~19:00

2.会 場:フォーラム・エイト8階「キングススクエア」
      渋谷区道玄坂2-10-7 新大宗ビル1号館
      http://www.forum-8.co.jp

3.参加費:3,000円
      * 会員交流懇親会の参加費は、当日、第2部会場内および第4部開始前に受け付けます。

4.参加申込:八木 田鶴子 E-mail VEP06774@nifty.com 

*  2005年7月・8月の実務補習生・2006年2月の実務補習の方は、担当指導員を通してのお申込みをお願いします。

* 上記4は、懇親会のみの申込先です。説明大会(第1部~第3部)への申込は、東京支部までお願いします。

  申込:メールまたはFAXにて氏名・住所・電話・支会名・登録番号をご記入の上お申込み下さい。
  Email:tokyoshibu@t-smeca.com  FAX:03-5550-0050

* 説明大会と懇親会の両方に参加される方は、ご面倒でも、東京支部と支会の両方にお申込ください

投稿者 info : 14:53

2006年2月11日

2005年度 第6回「知のホット・コーナー」

「個人情報保護法」は、2005年4月1日に試行されはや1年、もはや企業にとって避けることの出来ない重要な法規となっております。
しかしながら、同法は法律の適用対象となる「個人情報」の範囲、その「保護」の程度など、法律やガイドラインの文言からだけでは解釈が難しい部分も数多く存在し、未だに、どの程度まで対応する必要があるのか手探り状態が続いています。対応が過剰な部分(事業者)、重要な対応が抜けている部分(事業者)が多く存在し、法律の趣旨が理解されるとは言えない状況です。
前研修部部長、現中央支会副支会長である小野修一会員に、「個人情報保護法の落とし穴」と題しまして、法律へのアンバランスな対応、開示請求に対する対応の苦労など、実際の現場での事例を中心に、ご講演いただきます。
「個人情報保護法」につきあらためて理解を深めるよい機会です。ふるってご参加ください。


○日時: 平成18年4月25日(火) 18:30 ~ 20:30
○テーマ: 「個人情報保護法の落とし穴」
・開示請求に対する対応の苦労
・名簿、名刺の取扱い
・個人データの見直し・整理の重要性、など

○講師: 小野修一会員
早稲田大学理工学部卒業後、日本ユニシス株式会社入社
汎用コンピュータオペレーティングシステムの開発・開発管理・企画、情報化コンサルティング・システム監査をご担当
平成14年 日本ユニシス株式会社退職、同年 有限会社ビジネス情報コンサルティングを設立し、代表取締役に就任
現在 中小企業診断協会 東京支部理事中央支会副支会長、日本システム監査人協会 副会長
著書:「情報化投資効果を生み出す80のポイント」(工業調査会)
「成功するシステム導入の進め方」(日本実業出版社)
「改訂版 情報システム部」(日本能率協会マネジメントセンター)(共著)など多数

○会 場 : (社)中小企業診断協会 東京支部中央支会 事務所
        <所在地>文京区小石川1-1-12 本間小石川ビル1F
○参加人数: 30名程度(先着順ですのでお早めにお申込み下さい)
○参加費: (飲み物付)中央支会員 1,000円、中央支会員以外の方 2,000円
○申込要領: (1)氏名、(2)所属支会名、(3)連絡先(メールアドレス及び電話番号)を明記してください。
○申込先:加藤 秀夫あて  eメールアドレス :  rapanui@ga2.so-net.ne.jp
○申込締切日: 平成18年4月15日(土) 

投稿者 info : 13:35

2006年2月 3日

業種別業界別トピックス 新しい組織「合同会社(日本版LLC:Limited Liability Company)」とLLP(2006年2月)

吉倉 英代

<新しい組織「合同会社(日本版LLC:Limited Liability Company)」とLLP>

●待たれています、新会社法の施行
 最近、「新会社法はいつから施行されるんですか?」とよく聞かれます。「5月からの予定になっています」と答えると、中には「本当に5月から施行されるんでしょうか?」と心配顔で聞き返してくる人も少なくありません。実際、現在創業準備中の人で、新会社法の施行を待っている人はかなり多く存在しています。(私が創業支援させて頂いている方の中にも何人かいらっしゃいます。)また、創業準備中でなく既に事業を行っている個人あるいは中小企業者の中にも首を長くして待っている人は少なくないと思われます。
 その多くは、最低資本金の撤廃や取締役が1人でも株式会社の設立が可能になるなどの株式会社組織の柔軟化に関心をもっているのだと思いますが、一部には、新設される合同会社(日本版LLC:Limited Liability Company)に関心を寄せている人も少なからずいらっしゃるようです。
 今回はこのLLCを中心にして、LLPなど他の組織形態も少し比較検討してみたいと思います。


●有限責任の柔軟な組織形態

 これまでの会社類型は、大きく分けると、「有限責任社員のみで構成され、組織の規律が厳格な株式・有限会社」と、「無限責任社員が存在し、組織の内部自治が認められる合名・合資会社」の2つのタイプしかなく、選択が硬直化していました。
 新会社法では、「有限責任社員のみで構成され、組織の内部自治が認められる」新たな会社として、合同会社(日本版LLC)が新設されました。

LLCとLLPの位置づけ
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●合同会社(日本版LLC:Limited Liability Company)の特徴
 合同会社(日本版LLC)の主な特徴は次の5つです。

(1) 有限責任制
社員(出資者)は全員、出資額の範囲で責任を負う。
(2) 内部自治原則
 利益や権限の配分は出資金額の比率に拘束されず、柔軟に決めることができる。また、取締役会や監査役という機関の設置は不要。
(3) 社員数
社員は1名以上で設立および存続可能。
(4) 意思決定
社員の入社、持分の譲渡、定款変更は、原則として社員全員の同意による。
(5) 業務執行
社員は原則として業務執行権限を有するが、定款で定めれば一部の社員のみを業務執行社員とすることも可能。

 有限責任制や内部自治原則の特徴は、昨年8月から創設されたLLP(有限責任事業組合)にも共通している点です。この2つの組織は法人が構成員になることもできますので、例えば、お金はないが技術力のある個人と資金力のある企業が、対等の立場で共同事業を行うということが可能になります。したがって、柔軟な組織形態として創業やジョイントベンチャー等の連携での活用が期待されています。

●合同会社(日本版LLC)とLLP(有限責任事業組合)の比較
 ただ、合同会社(日本版LLC)とLLPにおいては異なる点もいくつかあります。1つは、合同会社が法人格を持ち法人課税されますが、それに対してLLPは民法組合の特例としての組合なので法人格を持たず構成員課税になるということです。また、LLPでの損益は、構成員課税される際に構成員の本業の黒字や赤字と損益通算できます。法人格をもっている点では合同会社のほうが有利、税制上はLLPのほうが有利といえます。
※「構成員課税」とは、組織には課税されず、そのメンバーである個人や企業等に直接課税される仕組み。法人での課税がないので二重課税にならないというメリットがある。
 逆に合同会社のほうが有利な点としては、やはり法人格があるという点が挙げられます。法人格を重視する場合は合同会社のほうが適切といえます。また、(3)の特徴でも挙げました「社員1名でも設立・存続が可能」という点です。LLPは2人以上でなければ設立できません。
 そして、その他にもう1つ、(5)の「共同事業性の例外」といわれる特例です。合同会社もLLPも人的組織ですから、基本的には所有と経営が一致し、出資者と業務執行者は一致します。しかし、合同会社の場合は、社員全員の同意が得られれば、一部の社員に業務執行を委ねることが可能となります。LLPでは全員が業務執行に当たらなければならないので、この点は合同会社のほうが柔軟と言っていいでしょう。
以上の点をまとめると次表のようになります。


LLC(合同会社)とLLP(有限責任事業組合)の比較
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 中小企業者や個人等が、他の企業や機関などと何らかの共同事業を行う際、または連携組織で創業あるいはプロジェクト的な事業を行うとき、LLCやLLPは真っ先に活用を検討すべき組織形態といえます。その事業が一定期間だけのもので利益変動も大きいような事業なら、契約期間に定めがあり構成員に直接課税されるLLPが向いていると考えられます。逆に比較的安定収入が見込め長期間にわたるような事業の場合はLLCのほうが向いているといえるでしょう。

●終わりに
 新会社法が施行された後は、株式会社制度が多様化および柔軟化されるのと同時に、新事業を行うときなどの選択肢も増えます。新しい組織の特長を的確につかみ、事業内容やその他種々の条件を考慮して最適な組織形態を選択することが、事業の成功にも大きく関わってきます。ぜひ、これらの新組織を有効活用していただきたいと思います。


■ 吉倉 英代
中小企業診断士、中小企業組合士、CFP、1級DCプランナー
コンサルティングオフィスFILL 代表

投稿者 info : 12:02

2006年2月 1日

専門家コラム 情報セキュリティ対策と認証基準(2006年2月)

平井 哲生

<情報セキュリティ対策と認証基準>
1.はじめに
ここ数年、企業の活動に大きな影響を及ぼす個人情報の漏えい等、情報セキュリティに関する事件や事故が後を絶ちません。また平成17年4月に「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」が全面施行されたことを受け、情報セキュリティに対する社会の関心が高まっています。
企業が事業活動を継続するには、情報セキュリティに対する正しい認識と積極的な取り組みが益々重要な状況になっています。


2.情報セキュリティ対策の進め方
では、企業が情報セキュリティ対策を推し進めるためには、どのようなことを検討すればよいのでしょうか。高度な技術を駆使した情報セキュリティ対策製品を導入しますか、同業他社と同じ対応をしていれば大丈夫ですか...

情報セキュリティ対策に取り組むにあたって、(1)企業が保有する情報資産(電子情報や情報システムに限ったものではなく、事業活動で利用・保有する有形・無形の情報資産です)には、どのようなものがあるのか、(2)その情報資産には、どのような脅威が存在していて、障害や事故等が発生した場合にどのような影響を受ける可能性があるのか、(3)その情報資産は事業活動を継続する上でどのくらい重要なものなのか等を検討していきます。
検討にあたり、以下のような整理をすると捉えやすくなります。
・ 施設や設備等に関する物理的・環境的な要素
・ 情報システムやネットワーク技術に関する技術的な要素
・ 組織の管理・監視体制や業務運用方法、職員の意識等に関する人的な要素

検討の結果は、企業によって、また同じ企業であっても検討の時期によって、違った結果になることでしょう。
企業にとって適切で有効な情報セキュリティ対策を実施するには、こうした検討結果を踏まえた対応が必要になります。情報セキュリティ対策として、費用をかけてどこまでリスクを低減するのか、あるいはリスクを受容するのか、業務の安全性と効率性についてどこに妥協点を見出すのか等を調整するため、トップマネジメントの参画が求められ、重要な意味を持ってきます。
さらには、こうした段階を経て、企業の情報セキュリティに対する取組姿勢、指針を反映した情報セキュリティポリシーを文書化していくことになります。

情報セキュリティは、ネットワークシステムに関する脆弱性が毎日のように報告されているように、その状況は、日々変化しています。情報セキュリティ対策は、こうした日々変化する脅威に対して、継続的に見直しを行うことが必要になります。従って、「ここまで対応すれば、もう大丈夫。」というものではありません。
そのためには、組織的に継続して見直しを行う「情報セキュリティマネジメントシステム」(ISMS)を確立することが求められます。情報セキュリティマネジメントシステムは、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを実施することで情報セキュリティレベルを向上させていきます。


3.情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)
情報漏えい等の情報セキュリティに関する事件や事故が発生した場合、損害賠償をはじめとする多額の補償費用が企業の経営を圧迫するばかりでなく、社会的信用が失墜して顧客が減少する等、企業の継続性、競争優位性の確保に大きな影響を及ぼす事態になります。
情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)は、こうしたリスクに対応するとともに、マネジメントシステムとして、効果的かつ効率的に情報セキュリティ対策を実施することができる仕組みです。

ISMSには、英国のBS7799-2と(財)日本情報処理開発協会(JIPDEC)が発行するISMS認証基準という認証規格があります。これらのマネジメントシステムは、情報セキュリティを確実にする具体的な管理策(10セクション127詳細管理策がリストアップされています)について網羅しており、また、ISO9001やISO14001等のマネジメントシステム規格でも見られるようなマネジメントサイクルにより、情報セキュリティを維持することを目指しています。

ISMS認証基準の構成は以下のようになっています。
s-hirai200602-3.jpg

ISMS認証基準は、認証取得後も審査機関による年1回もしくは2回の定期審査、3年に1回の更新審査を受審し、ISMS認証基準の要件を満たしていることがチェックされます。


4.ISMS認証取得状況
ISMS認証取得事業者数は、認証制度開始から約3年半が経過した2006年1月23日現在で1,284事業者となっています。また、この1年程で取得事業者数が大きく伸びています。
認証制度が始った当初は、情報処理サービス関係の認証取得事業者が多くありましたが、最近では製造、流通、金融、医療、建築、不動産、出版、広告、人材派遣等、業種に関係なく、また中小企業の認証取得も増えてきています。


5.認証基準の今後の動向
ISMS認証基準は、国際規格化(ISO/IEC 27001:2005;2005年10月15日に発行)及びJIS化(JIS Q 27001;規格番号は想定)に伴い、現在のISMS認証基準(Ver.2.0)による認証は、JIS Q 27001(ISO/IEC 27001)による認証に移行します。今回の対応により、管理策の有効性の効果測定に関する事項が加わる等、内容が一部変更されています。

認証基準の国際規格化に伴い、認証取得事業者は、企業の競争優位性を確保し、顧客に対して信頼感をさらにアピールできることになるでしょう。


■ 平井 哲生(ひらい てつお)
中小企業診断士、ITコーディネータ、情報セキュリティアドミニストレータ 他
大手金融グループの情報サービス会社に勤務。情報セキュリティ監査やISMS認証取得支援等、情報セキュリティを中心としたコンサルティング業務に従事。

投稿者 info : 02:30

業種別業界別トピックス 「プロジェクトマネジメントオフィス」の設立(2006年2月)

山戸 昭三

<「プロジェクトマネジメントオフィス」の設立>

 このところ、プロジェクトマネジメントオフィス:PMO (Project Management Office)を設立するIT企業が多くなった。
 設立のきっかけは、受注条件のあいまいさ、プロジェクト体制未確立、プロジェクトマネジメントの不備などから、プロジェクトが泥沼化し、巨額の赤字物件になることが顕在化しているためである。
 このようなプロジェクトに配属になったプロジェクトメンバには、大きな負荷がかかる。なかでもプロジェクトマネジャーには、精神的・体力的な負荷が大きくのしかかり、体調を壊す者なども多い。
 ハードウェアでは、利益を確保することが難しくなった現状では、付加価値の高いソフトウェア構築で、利益を確保したいIT企業であるが、失敗プロジェクトが数多く発生した場合には、事業損益に大きな影響を与える。
 このような状況を回避し、組織的にプロジェクトを成功させようとする試みが「プロジェクトマネジメントオフィス」である。
 このプロジェクトマネジメントオフィスのミッションを実現するためのアプローチにはつぎのようなものがある。

1.リスクマネジメントの適用
 プロジェクトには、多かれ少なかれリスクが存在する。そのリスクを識別し、それぞれのリスクが顕在化しないように手を打っていく。
 基本的には、プロジェクトマネジャーは自分でプロジェクトを進めるに当たって、リスクを識別し、手を打つはずである。
 しかしながら、プロジェクトマネジャーは多忙である。リスクと思っていてもまだ発生していないことだし、楽観的に考えて軽減対策が後回しになることが多い。
 このような場合に、客観的にプロジェクトのリスクを関係者で共有し、誰がいつまでに対策を実施するか、を決めてその実施状況を全員で確認していくプロセスを持ち込めば、有効に機能する。
 これを行うのがプロジェクトマネジメントオフィスに求められる機能である。プロジェクトのコーチングである。
 受注段階、計画完了段階、設計完了段階、テスト実施前段階、出荷判定段階で、受注条件、計画案、設計内容、テスト環境、成果物などに潜むリスクを識別する。
 リスクが顕在化するのは、前提条件が崩れるときである。「当てにしていた時期までにシステム仕様の凍結ができない」、「適切なスキルを持ったプロジェクトメンバーが集まらない」、「必要な機材が揃わない、プロジェクトルームが確保できない」、「調達したパッケージが十分な機能を持っていないことがわかった」などなど。
 識別したリスクを関係者が共有し、誰がいつまでに軽減対策を実施するのか、リスクが顕在化した場合にどのような対応策を行うのか、を決定して継続的にフォローする。

2.プロジェクトアセスメント
 プロジェクトの状態を、様々な角度からアセスメントし、適切なタイミングでエスカレーションすることが、プロジェクトマネジメントオフィスに求められる重要な機能である。
 リスクマネジメントの場合は、リスクに着目した動きであるが、プロジェクトアセスメントの場合は、プロジェクトのあるべき姿に対する観点からのアセスメントである。
 ある企業では、プロジェクトマネジメント体系:PMBOK(A Guide To The Project Management Body Of Knowledge)に関する視点でアセスメントしている。
 例えば、スコープ、タイム、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、調達などの観点である。
 それぞれの観点からプロジェクトに期待される状態への到達度を定量的にアセスメントする場合もある。数量化することによって時系列的に傾向がわかるし、危うい状態を説明しやすくなる。

3.プロジェクト初期立ち上げ支援
 アセスメントするばかりでなく、プロジェクトのあるべき状態に持っていくための仕組みをプロジェクトマネジャーと共に作り上げていくことも必要である。「鉄は熱いうちに打て!」という格言はプロジェクトには必須である。良い仕組みを早い段階で導入すること、これがプロジェクトを成功に導くための必須要件である。プロジェクトの仕組みができあがってからの変更はプロジェクトメンバの抵抗感を増す。良い習慣を早めに身につけることが大切である。
 例えば、プロジェクトリスクマネジメントの導入、定量的な進捗管理の仕組みの導入、ヌケのないプロジェクト計画の立案などである。

4.問題プロジェクトの消火
 これだけの対策を打ちながら、不幸にしてリスクが顕在化し、レスキーが必要になる場合がある。この状態では、プロジェクトマネジャーは、顧客からも会社からも現状の報告と改善を求められている。プロジェクトメンバーもある人物に負荷がかかってボトルネックになっている場合が多い。
 この問題プロジェクトに適切な支援は何かを判断し、迅速に対応できる機能が求められる。

 これ以外にも、多くの機能がプロジェクトマネジメントオフィスには期待される。
現状では組織的にプロジェクトを成功させるためのアプローチがプロジェクトマネジメントオフィスに求められる主な機能である。

 組織の成熟度が高くなれば、プロジェクトの力だけで安定した運営ができるはずであり、企業がそのような状態になったときには、その企業の強みを活かしたローリスクハイリターンのプロジェクトにフォーカスするようなプロジェクトポートフォリオ、事業戦略に適合したプロジェクトの集まりを、連携させて効率的に事業を推進していくエンタープライズアーキテクチャへのリード役としてプロジェクトマネジメントオフィスは期待される。

■ 山戸 昭三(やまと しょうそう)
中小企業診断士 ITコーディネータ 技術士
IT企業のプロジェクトマネジメントオフィスとして勤務。プロジェクトアセスメントを行う。著書は「ビジュアル解説 ITコーディネータ テキスト」(共著)「日経コンピュータ別冊 プロジェクトマネジメント大全」(共著)など。

投稿者 info : 02:23