<経営の姿見として7面鏡のお勧め>
鳥海 孝
景気もひところに比べかなりよくなってきました。ホッと一息ついておられる会社もあるのではないかと思います。このような環境変化の中で、今後は本来の企業経営を目指そう、今まで出来なかったテーマについて取り組もう、という経営者の方も多いのではないでしょうか。その際、取り組んでいこうという事業・テーマ、また日常の業務運営について、気づきを与えてくれる「経営の姿見としての7面鏡」をお勧めします(私も事業推進にあたり心がけています)。髭剃りや髪直しのために毎日1回は見る鏡、自分の本当の姿を映し出してくれます。鏡の中のご自身をご覧になって気づき、発見はありませんか。「経営の姿見としての7面鏡」はこのことと同じように、7つの視点(鏡)を設け、経営を見よう・考えようということです。(この7面鏡は日本経営品質賞委員会が発行している「日本経営品質賞アセスメントガイドブック」をもとにしたものです)。

1.第1の鏡「顧客から見たクオリティ」
顧客志向ということがいわれています。自社の商品・サービスを受け入れてくれるお客様(顧客)の立場に立った経営ということですね。「顧客から見たクオリティ」はお客様の目的や価値に合致しているかどうかで、良いクオリティ、悪いクオリティを判断します。お客様は、商品だけではなく納期、お客様サービス、営業マンの受け応え、イメージなど幅広く自分の価値・目的にあっているかを見ています。それゆえ、お客さまと同じ目線に立つ、つまり自社の商品・サービスを自分がお客様になったつもりで見ていくことが大切であると言えます。
ここで第1の鏡「顧客から見たクオリティ」を見るときには次のように自問自答したいものです。
「お客様は何を求めているか。自社のお客様へ提供しているもの(商品・付帯サービスなど全てのもの)は、お客さまの目的に合致しているか。」
2.第2の鏡「リーダーシップ」
リーダーシップの意味を辞書で引きますと「指導権・指導的地位・指導力・統率力」となっています(新明解国語辞典)。社員や部下を統率・指導することは重要なことに違いませんが、これでは管理統制型のスタイルになりかねません。このスタイルが良いときや力を発揮する場面は、たとえば企業のライフサイクルでいうと創業期などがあります。その時期を抜け出た企業経営者は、このスタイルに留まらずもっと良い状態、自分がいなくても企業が自然に自分の望む方向に動いていく、そのような状態を望んでいるはずです。そのためには、やはり社員や部下が自ら成長できる環境(状態)を作っていくことが重要です。経営者の役割は、あるべき姿を描き、その道筋を示し、育つ環境(状態)を作ることで、後は社員・部下の自主性に任すというスタンスでよいのではないでしょうか。
第2の鏡への自問自答。「あるべき姿への道筋は示しているか、社員が成長するための環境を作っているか。」
3.第3の鏡「プロセス志向」
会社経営は業務プロセス(原材料購入・生産・販売・物流など)をきちんと実行していくことで成果を挙げることができます。ここでいう「プロセス志向」は、この一連のプロセスを常にチェックするプロセスを意識したものです。つまり環境や自社の資源(人、物、金、情報、時間など)の変化を認識し、それにあった、また競争相手と異なった業務プロセスを常に作り続けるプロセスの考え方を持つ必要があるということです。手続きとして「何をする」(単なるプロセス)ということではなく、変革の状態作りに注目した考えです。オンリーワン企業が合言葉になっている現在、独自の価値を顧客に提供できる流れを作り上げていくかが重要です。
第3の鏡への自問自答。「いまのプロセスを変える必要はないか。さらに良いプロセスはないか。」
4.第4の鏡「対話による「知」の創造」
こう書きますと難しそうですが、「話し合いによってお互いの知識や知恵を交換しながら、新たな知識、知恵を創造していこう」という考え方です。対話の第一歩は、自分自身を疑ってみることです。そうしますと他人の話を聞こうという気になります。そして「決めつけ」、「無理だ」、「ありえない」は、良い対話を阻害する言葉ですので、これを意識的に避ける。経営者自らが行わなければ社員の態度や会社の雰囲気は変わりません。下(社員・部下)は上(経営者)の言動を常に見ているのです。
そこで第4の鏡へ向かった時の自問自答。「社員や部下との意見交換の場を作っていますか。また、話し合い後はお互いに新たな気づきが生まれましたか。」
5.第5の鏡「スピード」
速く判断する、速く行動することは、「スピード時代」といわれる今日、重要なことに間違いありません。ここでいう「スピード」は、何のために(目的)ということにふさわしい対応になっているかということです。世の中の動きはドッグイヤーなどといわれて、なるほどスピードは必要です。しかし、速さを競うだけでしたら「処理」に追われてしまいます。本来の目的(さらには先程のあるべき姿に一歩でも近づくこと)に十分時間が配分されているかを確認し、そのうえでスピードを追求することが大事です。
そこで第5の鏡への自問自答。「もっと時間をかけなければならない事項はなかったか。」
6.第6の鏡「パートナーシップ」
企業の外部の関係者とのあり方ですね。仕入先や外注業者は、取引の関係で、ややもすれば自社に従属する立場にあると見てしまいます。お客様は内情が分かりませんから、仕入先や外注業者を同じ会社として見ています。このことからも、外部関係者を事業を一緒に推進する仲間、つまりパートナーとして位置付ける必要があります。そのためには対等な取引を行うことが必要です。また、お互いに長期的な発展を目指すのであれば、対等な立場で付き合うことは必須の要件です。
そこで第6の鏡への自問自答。「長期的な観点からパートナーと付き合っているか。」
7.第7の鏡「フェアネス」
「公正」ということです。まずは、社内においては情報の共有化(情報の格差をなくす)が必要です。必要な情報が、必要なところに、タイミングよく流れているかということが大事です。つぎに、会社の目的にあったルールや決まりごとが、分かりやすく示され、皆が理解しているかということです。さらには、それを自ら守っているか、ということです。そもそも作った人が守らなければ誰も守ろうとしないですね。社員は守っているように見えても、形式上だけで、心の中では守っていません。率先垂範がポイントです。さらに「フェアネス」には仕事の評価ということがあります。ここのところは、皆の関心事ですので、公正さが一番です。
そこで第7の鏡への自問自答。「判断にあたりフェアネス(公正)を意識しているか。」
以上、7つの鏡について説明しました。それぞれの鏡に向かって自問自答を繰り返すこと、できれば毎日、少なくとも1週間に1回は実行したいものです。何か気づきがあればしめたものです。「経営の姿見として7面鏡」がより良い経営に結びつくことを確信しています。

(略歴)
鳥海 孝(とりうみ たかし)
ビジネス・ソリューション研究所 代表
中小企業診断士、経営品質協議会認定セルフアセッサー