<経営再生を実行中の事例~その2~>
藤倉 一巳
* 2005年6月に掲載した原稿は、以下のURLよりご覧ください。
http://www.rmc-chuo.jp/home/mt/archives/2005/06/20057_4.html
昨年、この欄で紹介したD社のその後を紹介する。
経営再建3ヵ年計画の1年が経過したD社の経営状況と評価(業績)をご覧いただきたい。経営資源として「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」があるが、業績悪化の企業に共通していえるのは「ヒト」「カネ」が痛んでいることである。このうち「カネ」を中心とした財務の建て直しが1年目の作業である。2年目に入った現在、指導に入るのは「ヒト」「モノ」である。今後、中小企業診断士としてどのような指導を行い,どのような計画をたてているか紹介しよう。
1.経営診断プロセス
経営診断プロセスは下記によって行われる。このプロセスは十分意識して問題と課題を抽出し、改善策の立案に当たらなければならない。
1)経営環境分析・経営資源分析
2)経営問題・課題を抽出
3)経営改善・経営革新の提言
4)全体最適調整
5)経営診断報告書の作成
2.経営問題・課題
中小企業における問題と課題は共通している。一つは売上げが落ち込んでいること、二つ目は資金繰りの悪化である。
1)売上の落込み
売上の落込みは卸売、小売、サービス、ものづくりで、それぞれ企業の置かれている状態により異なるのは当然である。市場の成熟化もあれば競争者の出現もある。しかし、総じて言えることは経済環境の変化が売り物である商品・サービスに大きな影響を与えていることである。
中小企業が売上増加を図るには現在の取扱商品・サービスとラップした分野で考えるのが無難である。大手企業でも新規事業で成功するのは相当な時間と費用を要する。
D社のように長い歴史があり、業界での位置づけがあると現状の延長戦上で企画・立案するのが無難ある。現在はホームページにアクセスがあった顧客の要望を、試作を通じて売上に結びつける方法をとっている。しかし、これでは再生は遅いといわざるをえない。
2)資金繰りの悪化
D社はバブル崩壊の後に設備投資をおこなった。その後、デフレの影響で製品単価・金額が落込み投下資本の回収が不十分となり資金繰りが悪化した。しかし、中味を良く検討すると無駄と思われるキャッシュアウトが存在する。会社の経営者(資金担当)は従前からの方法・考え方を替えることが出来ず指摘を受けて初めて認識するケースもある。
まず、経営者の意識改革を行い具体的に数字を改善する。
3.経営改善・経営革新の提言と実行
1)事業計画書の作成
2)予算と実績の検討
3)資金菅理表の作成
4)実績との比較検討
総じて計画が出来ていない。事業計画と利益計画をたて得意先別・商品別月別売上計画に季節変動指数を乗じて年間計画を算出する。また、資金管理表を作成し毎月実績との比較検討を行う。
4.改善の効果
改善の効果は顕著である。すなわち売上では10%の増収であり、経費面で大幅な圧縮を行った結果、経常利益では前年赤字から本年度では1200万円の黒字基調となった。
メイン銀行は改善結果を大きく評価し新た追加融資の話もある。
5.再建計画2年目の計画
1)「ヒト」に関する計画
2年目は「ヒト」に関する計画を立てている。頭書は幹部社員を中心に8人前後で毎月経営会を行い、半年に1回の全社員参画による全体会議を計画している。
内容と実績は次回の報告に期待下さい。
2)「モノ」に関する計画
「ものづくり」では新規製品の開発が中心である。3年目には新製品・新サービスが開発できてないと経営改善にはならなし本当の意味での経営革新は完成しない。そこで、社長といろいろお話したところ社長が学生時代に研究され、論文まで出しながら製品化されていない分野を発見した。
早速、これをテーマに基礎研究に入ったところ意外にうまく製品化できた。よって、このまま応用研究に入った。技術センターのアドバイスがあったとはいえこの研究も順調に推移した。今後、量産化とコストダウンを目標としている。
これは、「中小企業・ベンチャー挑戦支援事業のうち実用化研究開発事業」の補助金の対象になるのではないかというアドバイスもあり6月28日に経済産業省に補助金の書類を提出した。メイン銀行もこのような資料を見てますます支援体制を固めたようである。
6.再建2年目の目標
再生の2年目は、「ヒト」をベースに売上、利益計画を算定し役員・従業員で周知・共有化を図っている。売上げでは1年目の売上げ対比10%増収で経常利益は2000万円を目標と設定した。すでに、3ヶ月経過しているが計画に対して実績は順調に推移している。
なお、本年後半から新製品が売上げ利益に寄与する。新製品の市場規模を国内で100億円とみている。また、海外も含めて考えると相当の売上げ、利益計上がなされるのではないかと期待されている。
■藤倉 一巳
株式会社エムアールエス/藤倉会計事務所
中小企業診断協会東京支部中央支会常任理事
中小企業基盤整備機構・中小企業会計啓発・普及セミナー講師、東京都中小企業振興公社専門家登録・中小企業診断士受験校講師
経営再生コンサルテイングの実践・問題発見能力向上研修等々、経営戦略・人材教育・財務会計・各種税制・不動産の有効活用・節税対策等
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