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専門家コラム 「研究開発機器導入に関し持つべき視点」(2006年10月)
鳥居 経芳

< 研究開発機器導入に関し持つべき視点 >

■ はじめに
研究開発に使用される分析機器を初めとする各種機器の導入は、生産に使用する場合に比較し投資効果を明確に判断する事が難しい一方で、研究開発型製造業にとっては研究開発に投資する事は生命線でもあり、それなりのコスト、判断も必要とされる。各種機器の導入においては最大限の効果、とりわけ自社技術力・生産力の強化に繋がる様な成果を得ることが最大の目的である。導入後即座に効果が得られる場合もあれば、十数年に渡り使用し続けるものでもある。そのため、機器選定・導入時においては必要な視点をしっかり定めて行う必要がある。

 
■ 導入を決定する前に・・・
最低でも今後1年、出来れば10年程度のスパンで「今後の自社の技術をどうして行くのか?どんな技術を今後開発・取り入れていく必要があるのか?」といった技術戦略について、構築・検討しておく事がまず必要である。この点がはっきりしていれば、検討を進める段階で得られる様々な情報を基にして機種を選定する際のよりどころになる。検討開始後に「思惑と違う(導入効果が得られる見通しが立たなくなるなど)」結果が出てくることはままあることであり、そのような場合においても一度立ち止まって検証するのに大いに役立つ。
また、研究開発機器の導入においては「機器を導入・購入する」事が目的でなく、本来「技術を強化する手段を手に入れる」事が目的であることを忘れてはならない。当然ながら、「機器を購入・導入する」方法以外にも
・ 社外共同研究者に分析を依頼・借用する
・ 公立機関に分析を依頼・借用する
・ 受託分析会社に依頼する
等、世にある様々な方法をとることが可能である。各々の手法についてメリット・デメリットがあり、当然ながらかかるコストも大きく変動する。
技術戦略の中でその必要性が認められた上で、さらに想定される使用頻度、機密性、利用のし易さを考慮し、機器導入の可否を決定する。


■ 検討すべき視点
検討すべき視点としては主に下記に挙げたとおりであるが、各項目の内容・重要度についてはその時企業がおかれている状況等によって変わるべきである。なお、機種毎の比較の際には、各視点から見た機種毎の比較表を作成し、点数付けによる明確な比較を行うことが基本となる。比較表作成により以下に述べるような各種視点の見落としもなくなり、担当者以外の周囲のメンバー、上司に対しても理解しやすい選定を行うことが可能となる。また、重要度についてはその中で重み付けすることにより反映できる。


1.機器性能の視点
当然ながら、導入する為にはその目的を果たすことが必要最低条件になる。しかしながら、特に分析装置の場合にありがちなのだがどうしても機能面において「あれもこれも」と目的を増やすことになりやすく、その結果本来の導入の目的・解決したい項目がかすんだまま検討を進め、後々後悔する事例がまれでなく見受けられる。目的としての機能については優先順位をつけ検討し、「あればいいね」的な機能は考慮に入れない事が良好な結果に結びつく。機能を付加することで初期コストが大きく異なるような場合には、前項でも記載したような機器導入+外部受託の手法を検討することも一手である。


2.使い勝手の視点
多くの場合、高額機器でもあることから導入後複数の部署・人員に使用される。そのため操作が複雑でないこと、壊れにくいこと、使用後のメインテナンスが簡便であることは現在の分析装置において必須事項となっている。使い勝手の悪さは導入後コストの上昇に直結するだけでなく、研究者の分析意欲減衰をもたらすことが多く、最後には置物と化し導入の意味を失わせる可能性をはらむ。


3.サポートの視点
近年の機器は以前に比べ故障頻度は低下しつつあるが、それでも必ずチェックが必要な項目であることには変わりはない。サービス体制、部品在庫の多少が通常挙げられるが、機器の機能が高度化するに伴い非故障時のサポート(使用方法やデータ解釈に対する説明)についてもどのような体制をとっているかも重要な視点となりつつある。


4.環境面に関する視点
かつては(今でもそうだが)性能が第一でありこのような視点はあまりなかったが、有機溶剤等有害物質の使用量、廃棄物の多少は今では重要な項目として挙げられる。廃棄物の処理コストも使用頻度によっては無視できない。この視点は機器の設計思想に因る部分が多く、機種毎の差が出ることも多い。「粉塵・臭気が発生したりしないか、安全に使用できるか?」といった、使用者に対する安全性・労働環境に対する点も含まれる。

 
5.機器ユーザーの視点
可能であれば、現在同様の機器を使用しているユーザーの話を聞くことは大いに有効である。機器を提案している業者から必要な情報を得るのは当然だが、やはり同じ視点で実際に使用している人間のコメントから得るものは多い。
ただ、使用状況が異なればまた視点も変わるため、話を聞くユーザーと自分が想定している使用方法が同様の状況にあるかについては、注意が必要である。


6.価格に関する視点
出来うる限り安価な方が良いが、これまで挙げてきた視点において一定の評価を得た上での話になる。ランニングコストが高かったり、使い勝手の悪さにかかる工数は年数が経つほど増大し、多少の初期コストの差はあっという間に飲み込んでしまう。


■ 担当者は機会を生かす
選定に携わる担当者にとって、高額な分析機器の導入検討に携わる場面はそう多くないのが通常である。選定業務を担当することは、自社にとって最大の効果を発揮するものを選ぶ責任を負うが、合わせて業者などとの接点を持つことにより外部の同業種や他業種の情報を得る良い機会でもある。論文・雑誌等で得られない業界情報などを得ることができるのはもちろんの事、業務上での課題解決につながる事もしばしばある。むしろ積極的に情報を収集する機会と捕らえるべきである。


■ 選定・導入後に
導入後は管理担当者を設定し定期的な精度管理を実施することはもちろんであるが、できれば年に一度でも点検等の機会を作り、メーカー担当者とのコミュニケーションをとっておくべきである。機器故障時のコストを未然に下げるだけでなく、使用方法の確認や最新情報を収集することが出来るなど、メリットは多い。


■ 終わりに
研究開発機器の導入については、その投資効果を評価することが簡単ではない。その中でも、導入の決定・機種の選定時にしっかりとした道筋に従って評価することが、得られる効果のかなりの部分を決定する。自社の今後柱としていく技術戦略をしっかり描いた上で、近視的にならずに様々な視点で評価し、自社に合った機器を選択してほしい。


□鳥居 経芳
中小企業診断士
中小企業診断協会東京支部中央支会所属


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