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2006年12月31日

研究会連絡先一覧

各研究会のスケジュールはこちら
     
研究会名 連絡幹事 連絡先
アウトパートナー 小出 康之 BYU04270@nifty.ne.jp
インストラクション
スキルアップ(ISU)
藤森 正一 fujisan1@kmf.biglobe.ne.jp
IBS インテリア
ビジネススタディ
宮川 公夫 miyakawk@f4.dion.ne.jp
エコロジカル
・マネジメント
荒牧 敬一 aramaki@ff.catv-yokohama.ne.jp
FM 大橋 一彦 CXL00470@nifty.com
環境ビジネス 齊藤 徹 toru-saitoh@nifty.com
起業 梶谷 晉 kajitani@dk.catv.ne.jp
企業元気道場 山岡 雄己 yamaoka@prop-fc.com
企業内診断士ビジネス連携 三井 善樹 mitui@businessrep.net
企業法務&コンプライアンス 野口 昌秀 yfa48313@nifty.com
研修ゲーム 黒須 靖史 kurosu@stageup.co.jp
小売業&サービス業 石井 幸造 kfouumzioe7766@m2.pbc.ne.jp
老舗企業 柳 義久 yoshi-ya@taupe.plala.or.jp
思想・哲学
石橋 和博 kazuhiro_ishibashi@aol.jp
生産革新フォーラム 葉 恒二 naruyo@d6.dion.ne.jp
製造業 柏谷 邦夫 kasiwaya@gk9.so-net.ne.jp
戦略会計
広瀬 幸義 hirose.yukiyoshi@nifty.com
代理店ビジネス 枦山 直和 kazu@hazeyama.net
TM(タウンマネジメント) 三橋 重昭 clc@d3.dion.ne.jp
知的資産経営 工藤 英一 BQW07316@nifty.com
中国語 下平孝之助 kon-shimo@k7.dion.ne.jp
中国中小企業 水野 隆張 tamizuno@m8.gyao.ne.jp
デザイン経営 山口 達也 yamaguchi@brandfine.net
能力開発 宇都宮徳久 utsu@m2.pbc.ne.jp
ニュートレンド 平田 仁志 hhirata@c3-net.ne.jp
ビジネスデータ分析研究会 村山 聡 murayasan@yahoo.co.jp
ビジネス・マインド 今井 豊治 jza04055@nifty.com
物流 長谷川雅行 GFE01126@nifty.com
フレッシュ診断士 小林 勇治 kobayashi@e-mcg.net
リレーションシップ 牧岡 裕一 makioka_yuichi@hotmail.com

投稿者 kawata : 12:00

研究会

研究会概要

中央支会の特徴の一つが、診断士相互の研鑽の場である研究会活動の充実ぶりです。
様々な分野の研究会がありますので、ここではその概要をご紹介します。

研究会連絡先一覧

各研究会の連絡先一覧です。ご興味のある方はお気軽に連絡幹事までメールください。

研究会スケジュール

ここでは、それぞれの研究会の活動スケジュールを公開しています。研究会の活動への参加を検討されている方は、是非、ご参考ください。

投稿者 kawata : 10:00

2006年12月28日

業種別業界別トピックス 「繊維製造業で進行する空洞化は止まらない」(2007年1月)

今宿 博史

< 繊維製造業で進行する空洞化は止まらない >

 中小零細の企画販売型アパレル企業の多くは、すでに海外(主に中国)に生産拠点を置いてきている。国内産地の製品では、仕入単価の面で競合に勝てないのだ。東日本橋の現金問屋街も韓国や中国からの製品輸入によって存続していると言って過言ではない。繊維の製造業はもはや完全に海外に移転してしまったといえるだろう。川上の大手紡績業や化合繊企業に至っては周知の通り、国内の工場の多くが閉鎖され、ショッピングセンターとして生まれ変わっている。産地を形成していた繊維製造業も、もはや国内での立地は難しく、力のある企業は早くから中国を中心に拠点を移してきた。国内での生産にこだわってきた産地の有力製造業者は体力を弱め、徐々に姿を消しつつある。

 繊維製造業は、元々卸・問屋業を出自とするアパレル企業の下請的体質が色濃く、有力アパレルの生産キャパ・シェア争いの中でアパレル企業に優遇されて業容を拡大してきた。そのためか、余りにも企業としての脆弱さが目立つ。そこへもって、伝統的に通産省(現経産省)の庇護の下に置かれ、保護されることに慣れすぎてきた。何とかなる、してくれるとの安易さが今日の事態を招いたともいえるだろう。

 このままでは、繊維製造業すべてが国内には存在しなくなるのではないか。

○ 理由は、国際競争力無き企業は生き残れない、という経済の原則だ。経産省の保護下にあろうと国際競争力の無い企業が存続できるはずがないのである。公共事業における「談合」が許されないのと同様に、遠からず政府の保護体制が社会的に許されなくなることも予測すべきだ。グローバル・スタンダードこそが21世紀の企業活動の原点でもある。

○ 生き残るためには、海外の繊維製造工場に匹敵するコスト体制を確立すべきだ。海外の事業者と同じ競争下で受注できるだけのコストに徹底的に削ぎ落とすことだ。中国で千円で生産できるものは、日本でも千円で生産できる体質にしない限り生き残れない。

○ 大手アパレル企業や大手流通企業に「メイド・イン・ジャパン」の流れが生まれ始め、大いに歓迎されている。しかし、全く同じものが中国で生産できるとしたら、これら大手企業が何時までも日本の製造業に発注し続けることはない。一時的な「販促イベント」で終わるはずだ。「産地重視」の商社の方針も直ぐ後退する。

繊維製造業の「SPA」(製造直販型)事業の推進や「産地ブランド」育成等に期待すべきではない。これまでに多くの資金や人材が投入されてきた。これらの政策なり方針は決して間違っていない。海外の後進地域との競合にまともに戦っても勝てないから、商品に付加価値を付け、日本商品ならではの差別化を図るべきだ、との考えはまさに正論である。しかし、現状の体質をのこしたままで、ただ表面上を取り繕っただけの改革など成立し得ない。高コストの工場を抱えたままの製造業者が、さらに高コストで運営するSPA事業が成立するはずはない。

繊維製造業各社のトップだけでなく、工場の責任者、工場で働くすべての社員のコスト意識を根底から変えるべきなのだ。いくらトップが危機感を持って改革に取り組んでも企業の持つ風土、受注体質そのものが改革を否定してしまう。「意図し得ざる事態」である。社員の意識など変えることはできない、入れ替えるべきとの認識をトップ自身が持たなくてはならない。生き残るためには、工場を閉鎖し、すべて下請生産にするなどのコスト構造にすべきなのだ。工場を存続させたままで生き残れるほど甘くはない。

コスト競争から逃げてはいけない。この姿勢だ。中国始め後進国からの製品輸入は、すべて日本のアパレルや大手流通企業が日本の市場向けに発注し、生産している商品だ。完全に日本の産地製造業と同じ土俵上の戦いなのだ。同じレベルの商品であれば、コストの安い企業が勝ち残るのに決まっている。付加価値をどう付けようが、差別化しようが、すぐに追いつかれてしまうし、商社マンやバイヤーは付加価値のある日本製のサンプルを抱えて海外を飛び回っている。ただ、「安く作れるところ」を求めて。

繊維製造業は、自ら国際的競合に勝ち残れるコスト構造を確立すべきだ。そのためにはあくまで自助努力が条件である。官庁を含めて、誰かが手を差し伸べてくれることなどあり得ない。

 繊維製造業に求められる人材は、デザイナーやファッション・コーディネイターの存在ではない。付け焼刃は、いたずらに体力を消耗するだけに終わるだろう。生き残りをかけたトップ自身による徹底したコスト削ぎ落とし以外には再生の道はない。

■今宿 博史(いましゅく ひろし)
 中小企業診断士
 マーケティング・コンサルタント・サービス(MCS) イマック 代表
 ファッションビジネス経営コンサルタント
 文化ファッション大学院大学 非常勤講師
 営業改革プロジェクト、人材育成支援、講演・セミナー企画運営など多数
 (社)中小企業診断協会東京支部中央支会 常任理事 研究会部長
 東京支部登録 ファッションビジネス研究会主宰
 中央支会 ファッションビジネス・リデザイン支援マスターコース主宰

投稿者 info : 07:58

2006年12月27日

「中小企業ビジネス創造フェア2007」ブース出展者募集のご案内

* 出展は満員となったために、締切りました。(2007年2月13日)


「中小企業ビジネス創造フェア2007」ブース出展者募集のご案内

2006年12月
ビジネス創造プロジェクト

(社)中小企業診断協会東京支部中央支会では、昨年度に引き続き「中小企業ビジネス創造フェア2007」を開催します。今年度のフェアは、製造業事業者を主対象に、ものづくり、販路開拓、経営革新につながる経営セミナー、ブース展示を行います。勿論、製造業以外の事業者にも役立つ内容にしていきます。

そこで、今年度のブース出展者を募集します。ブース出展者には、次のようなメリットが期待されます。


・コンサルティングノウハウやコンサルティング事例の紹介を通じて、
  ビジネスチャンスの拡大が図れます。

・参加された事業者の方たちへの働きかけにより、ビジネス機会が 創出できます。

・今年度は、新たに、ブース展示だけでなく、ブース出展者によるミニセミナーも行います。
 ミニセミナーとブース展示との相乗効果が期待できます。


 以下の、フェアの概要とブース出展要領をご確認のうえ、積極的な応募をお願いします。

■「中小企業ビジネス創造フェア2007」の概要
1.開催日時:平成19年3月6日(火)13:00~17:00
                       17:30~19:00 交流会

2.場所:秋葉原ダイビル2階コンベンションホール
      http://www.akibahall.jp/data/access.html

3.プログラム
●経営セミナー
1)13:15~14:15
 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 妹尾堅一郎氏
    「世界的中堅・中小企業への7つ道 ~次世代ものづくりイノベーション~」
  2)15:35~16:35
 株式会社松崎マトリクステクノ 代表取締役社長 松﨑八十雄氏
    「ものづくり、人づくり」
●ブース出展者によるミニセミナー
・14:20~15:30で1グループ10分づつ
・経営セミナーと同じ場所を使用
・ブース出展者の中で希望するグループが、自分たちのノウハウや事例を発表
●ブース展示
 経験豊富な中小企業診断士のグループが、参加された事業者の皆さんに対して、ものづくり、販路開拓、経営革新の提案や経営相談を行います。
●交流会
 フェア終了後、17:30から、同じ場所で、事業者の皆さんと中小企業診断士とが、軽飲食を共にしながら、交流を図ります。

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■「中小企業ビジネス創造フェア2007」のブース出展要領

1.募集小間数
 30を予定、ミニセミナーは7グループを予定

2.小間の大きさ
  長机1つ、椅子2つ程度の広さ、パーティションあり

3.出展料金
  1小間当たり、1万円
  ただし、中央支会所属の研究会・マスターコースは無料

4.申込み方法
  出展申込書(パワーポイント:32KB)に必要事項を記入のうえ、電子メールに添付して、事務局にお送りください。

5.申込み締切
  平成19年1月31日(水)
  *予定小間数に達し次第、締め切ります。
  *ミニセミナーへの参加は先着順とします。

6.申込み要件
 (1) 支会員および協会所属の他支部・支会の中小企業診断士個人、あるいは中小企業診断士が参加しているグループ・団体であること
 (2) 本フェアの主旨に合ったテーマ、事業者の経営に役立つ内容であること

7.可否通知および取消し
  お送りいただいた出展申込書の内容を確認したうえで、事務局より申込み代表者の方に通知します。
  なお、一度お申し込みされた後での取消しは、ご遠慮ください。

8.出展の詳細
  出展者の小間位置、搬入出スケジュール、展示上の留意点などについては、後日、ご説明します。

◎申込み・問合せ先
 中小企業ビジネス創造フェア2007事務局 小野修一
     E-Mail:ono@business-ic.jp 

以上

投稿者 info : 10:04

2006年12月26日

専門家コラム 「戦略思考によるミッション考」(2007年1月)

広瀬 幸義

< 戦略思考によるミッション考 >

■戦略思考

 戦略思考は非線形である。企業戦略は、その企業が何故存在し、何故事業を継続する意味があるのかを、具体的に顧客や社員に語りかけ続けるものでなければならないが、そんなものは凡人には簡単にできるはずがない。ミンツバーグ先生は、「戦略思考はクラフティング(工芸)」であるとし、緻密にその実行プランを組み立てる優秀な官僚のなす仕事とは一線を画している。確かに、戦略を立案するなど、それが市場に意図するインパクトを与えるものであればなおさら(そうでなければならないはずだが)、一般人が普通に考えたぐらいでは思いつくはずもない。とはいっても、大企業ならともかく、普通の企業に戦略思考が生来備わった能力によって実践できる社員がどれだけいるのか。戦略思考などなくても、有り余るほど顧客が沸いてきて困っている企業であれば、何もそんな小難しいことに悩まなくたっていい。しかし、何かしらの現状打破を行わなければ、先行きが怪しい企業や事業では、それを甘んじて受け入れるか、予想もしない幸運が舞い込むことを期待し続けるか、とにかく社員の尻を蹴飛ばしてガムシャラに働かせるかして事態を打開するか、または、もう一度、何故自社(や事業)が存在するべきなのかを真剣に問い直すしかない。戦略思考は、巷でそこそこ成功している中小・中堅企業の創業者であれば、程度の差こそあれそれを発揮したからこそ、今の成功があるはずである。戦略思考は、決して大企業の頭の良い優秀な経営者や経営企画部に所属する人間のものだけでもなく、マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストン・コンサルティングなどの超有名コンサルティング・ファームの、キャリアばりばりのコンサルタントだけのものでもないはずである。それでは、私のような凡庸なコンサルタントは、何かしらの変革を望んでいる企業経営者に対して、如何に戦略思考を実践してもらえればよいのか。それに対する数多ある回答の1つでしかないが、「日経ビジネス アソシエ」(2005年9月6日号 日経BP社)で取り上げられている「ブレイクスルー思考」について、ある事例を元に取り上げる。

 ところで、私は、あるところで、以下に紹介するような中小企業である架空の制服専門の服飾メーカーの事例を元に、戦略立案の研修を実施している。その研修には、20代~50代くらいの年齢層の、様々なキャリアを背負った男女が参加している。その研修成果から、教える側の私も色々な受講者のリアクションに興味津々となることが多い。ただ、そこで明確となるのが、戦略思考の有無である。戦略思考に深みのあるアウトプットは、その事業の実現性に対する具体的な検証可能性まで含めて、さまざまな示唆を与えてくれる。戦略思考が欠如したアウトプットは、ただタダ退屈であるし、こんなこと苦労して何故やる価値があるのかと正直感じてしまうことが多い。単なるケーススタディ演習であるが、それでも戦略性の有無が事業の訴求力(たぶんこれが、顧客への商品の訴求力に繋がる可能性が大きい)に、相当の影響を及ぼしていることが分かるので、研修の最後に行うアウトプットのプレゼンテーションでの受講者の反応が、それを正直に反映していてとても面白い。もう少し状況を説明すると、受講者は決して企業エリートではない。役職は様々だが、どちらかというと、これまで戦略思考という作業を明確なミッションとしてはすることがなかったメンバーがほとんどである。それだけに、演習も含めてたった3日間の研修で、大化けしたアウトプットを紹介されると(当然ながら、全発表の1~2割程度だが)唸ってしまう。それだけでなく、大化けできなかった受講者が、同じレベルのメンバーと思っていた人が、こんな思考ができたんだということに影響されること(研修最後の感想で分かります)にもまた、興味が尽きない。

事例

 この研修で取り上げる、中小企業である制服専門の服飾メーカーの概要は、以下の通りである。ちなみに、この事例は、仲間の中小近業診断士が作成したものです。また、以下に述べる内容は、この事例を元にしたサマリーであり、また一部内容にも変更を加えたり、追記していることを了解願いたい。

(外部環境)
 制服市場全体のパイとしての規模は、従来制服着用が当たり前だった企業の間接部門などでの私服化や、金融機関などの代表的なサービス業のリストラにより、横ばいから減少傾向にある。また、規格化やデザインの普遍性(例えば白衣)が図れるような制服、大企業などが大量に発注するような制服は、そのコスト・メリットを考えれば当然に海外のメーカーに発注を行い、またその流れから格安の商品が日本市場に流通し、従来の制服の範疇に含まれる定番商品については、ディスカウント要求が厳しい業種でもある。ただし、デザイン性を重視するような、一部の高付加価値なサービスを提供する企業の、高品質な制服ニーズへのニーズは増加傾向にある。

(内部環境)
 昭和20年代に創業し、現経営者は50歳前半の創業経営者から経営を受け継いで15年目になる2代目経営者で、誠実な人柄のため社員からの信頼も厚く、堅実経営を貫いてきた実績を有する。経営者の意志として、現ビジネスの将来性に対して強烈な危機感を抱いている。制服を専門とする服飾メーカーとしては、業界での規模こそそこそこだが、企画開発、製造、販売力の総合力において、有力企業の1つとして認められている。
 従業員数130名(その他にパートが100名ほど、自社工場を中心に雇用している)で、平均年齢は40歳弱で中堅社員の層は厚いが、近年優秀な新人の発掘が困難を極め、特に20歳代の社員が全体の15%ほどしかいなく、若年層の離職率も高いことが悩みである。総資産規模18億円の内の資本規模は12億円で、有利子負債額2億円であり、経営の安定性は優れているが、これは今までの安定志向の経営実績の成果である。しかし、売上高および営業利益ともここ5年間ほど減少傾向に歯止めが掛からず、直近の決算では売上高26億円で、営業利益1億円強である。ちなみに、売上高営業利益率は、5年前の8%から4%へと半減している。東京本社の他に、地方に自社工場を1つ、中国に現地法人との合弁事業である工場が1つある。営業拠点は、東京以外に、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡にあり、それぞれに5~10名程度の営業部員を置いている。ビジネス・プロセスは、制服の生地をその専門商社から一括納入し、国内工場と中国合弁工場とで値段や量の違いで製造を切り分けて部材込みで製造発注し、その納入後に地方の有力卸などへの販売、全国規模のホームセンターなどのフランチャイズ・チェーン本部など有力な小売、その他エンド・ユーザーである企業への直接販売を行っている。
 当社の先進的な取り組みとして、自社内に5名の専属服飾デザイナーを有し、自社オリジナル企画やユーザー企業からのオーダー・メイドの商品開発体制が整っている。これは、一般の大手服飾メーカーと比べれば規模、ノウハウとも競争できるレベルにはないが、制服という限られた市場では、このような体制を敷く競合他社は存在しないし、顧客から一定の評価を得ている。このような商品企画・開発力によって製造した制服は、まだ売上高の2割程度だが、年々販売量が増え続けている。また、防菌防臭や、難燃防災、吸汗透湿等の特殊な機能要件を満足する新素材が、近年生地メーカーにより頻繁に開発される傾向にある。このため、これを利用した商品企画・開発について、社内でプロジェクトを立ち上げて対応しているが、まだ目立った成果を上げていない。
 以前、当社について、外部の専門家やコンサルティング会社に依頼して、業務のレベルを評価してもらったことがある。その時の内容は、同事業規模、そして服飾メーカーという範疇での相対的な評価として、企画、購買、製造、販売という個別業務の遂行能力の点ではほぼ平均点の評価であったが、それらを統合した業務プロセス全体の評価としては、平均以上によくやっているという講評を得た。これは、個々の業務の遂行能力の不足分を、組織区分を超えた協調関係で柔軟にこなしている点が評価されたものである。社長自らの日頃の社員への積極的な働きかけやコミュニケーションを取る努力が、社員にその職務区分を超えて、会社のために何かするという意識を高めさせた結果が、この成果に繋がったと見做された。

■セグメンテーションとミッション

 事例企業について簡略に説明したが、真面目に経営努力をし、それなりの経営成果を上げているが、今後の先行きについての不透明感が拭えない感のある企業ということができようか。現場指揮官の裁量によって、個別の敵に対して弾を撃つことで小隊・中隊レベルの局地戦的な戦闘には勝つ能力があっても、大隊レベル以上の戦術が確立されていないように見受けられる。そもそも何故専属のデザイナーを置くのか、何故新素材対応への社内プロジェクトを立ち上げるのかという戦術的な手当てが、現状の打破、および将来への事業の成長へと結びつけることができるかという展望(戦略)が、上記の内容からは見受けることができない。ここで、企業(事業)戦略とは、巷にさまざまな定義が溢れているが、その企業ならでしか提供し得ない差別化された顧客が感じる優れた価値(顧客価値)を創造し、それを効果的かつ効率よく顧客に提供する仕組みを整えて維持し、それによって企業(事業)の競争力を高めることとしよう。小難しく書いてしまったが、顧客が買いたいと思ってしまう商品やサービスを企画・開発し、それを顧客が欲しがる状況で提供する場を作り続ける、企業が有する事業力である。

 ということであれば、顧客を具体的にイメージできることが必要となる。つまり、ターゲットとする顧客または市場セグメンテーションを、明確にすることである。なぜなら、現代のビジネスは、大企業でさえ全方位に顧客をカバーすることは困難な状況にある。また、競合他社と同じようなビジネスを展開していては、業界の主導権を握る企業に弄ばれるだけである。総合スーパーや総合カタログ販売業者の業績が低迷を続けるのに対して、取扱商品にこだわりや専門性を高め、ターゲットとする顧客を明確にイメージしている企業は、特化された競争力を維持し続けている。取るべき顧客に対しては、徹底したこだわりで食い込み、決して顧客を他社に振り向けさせないくらいの、強いビジネスへの意志があって、初めて経営資源をそのために集中的に投下するという冒険ができる。このためにも、食い込むべき顧客のイメージを、具体的にセグメンテーションすることが求められるのである。ましてや、経営資源に相当の限りのある中小・中堅企業は、なおさらに差別化された顧客(市場)セグメントを明確にする必要がある。ただ、顧客なり市場のセグメンテーションというと、現在の事業をベースにできることをまず考えてしまい、結局は競合他社と同じような事業を展開することになり、なんら将来への打開を図ることができないばかりか、価格競争に巻き込まれてどつぼな状態が悪化するだけに終わることになりがちである。そこで、顧客なり市場のセグメンテーションのイメージを、より深化させ、できれば潜在的な市場を掘り起こすために、どのように市場に働きかけを行うのかを、自社のミッションとして明らかにする作業が、併せて必要になる。ここで使う思考法が、始めに紹介した「ブレイクスルー思考」である。

 「ブレイクスルー思考」とは、現在の事象について、それが何のためにあるのかを愚直に問い続けることで、その本質について思い至るという思考法である。企業であれば、そもそも自社の事業は経済社会において、何のためにあるのかを問い続けることで、事業のミッションを改めて問い直すプロセスに使うことができる。ミッション(事業遂行の使命)というと、なにかしら高尚なことを上げることを考えがちだが、私はあくまで顧客価値にこだわることがベストと思っている。それは、ここでの「ブレイクスルー思考」が、顧客や市場のセグメンテーションとのパラレル思考を目指すためでもあるが、「地球環境や社会に奉仕し、従業員の幸福を実現し、お客様の価値を高め.....」なんて言っても、それをどれほどの説得力を持って利害関係者に対して訴えることができるのかと思うからである。ここで創出するミッションは、従業員にも、株主にも、債権者にも、そして顧客にも、なるほどそういう事業を行おうとしている企業なのかと印象付けられるものでなくてはならないと考える。でなければ、従業員でさえもその気になって働いてくれはしないだろう。所詮、そのような美辞麗句をただ並べただけのミッションは、絵に描いた餅以上でも以下でもない代物である。ミッションは、あくまで企業(事業)戦略の遂行の枠組みを明確に訴えるものでなければ、企業(事業)戦略の具体化には役には立たないはずである。もの凄い構想力を有する場合であれば、どのように柔軟に思考しても構わないであろうが、凡人にとって考えやすいのが、営利社団法人として企業の存立精神に立ち返って、ミッションはどのような顧客価値を提供する企業であるかを明確に謳うことである。誤解しないで頂きたいが、事実を隠蔽したり詐欺まがいの商法で一時的な隆盛を勝ち取る商売や、顧客大事だからといって事業所の周辺住民に害悪を及ぼしたり、従業員を不当労働行為で搾取するような企業は、顧客価値志向をミッションで謳っていても、それを実践しているとはいえない。現代の顧客は、その総体として、企業の社会的存在としての存立の意義について、相当に敏感である。でなければ、社会的なペナルティーを犯した超有名ブランドの企業が、あそこまでの事業の再起に苦しむということが散見されるはずがないからである。

■事例企業の戦略思考

 それでは、事例企業について、セグメンテーションとミッション立案の例をみていこう。この企業でも、よく目にするようなメーカーの例に倣って、以下のようなミッションと顧客セグメントがあったとしよう。

 (ミッション)
  「卓越した品質と機能の制服を提供するで、顧客の事業の増進に貢献する」

 (顧客セグメント)
  「制服を活用する顧客全般」

 ここで、「ブレイクスルー思考」を適用して、そもそも当社が「何故制服を作る社会的な意義があるのか」を、「顧客の立場」で考えてみる。そこで、「何故顧客企業が、社員に制服を着用することを望むのか」という理由を考えてみる。そこで取り敢えず出て来た回答が、以下のようなものだったとしよう。

 「顧客企業で働く人々が、制服の着用によって、どういう役割を担って業務に従事しているのかを明らかとするため。」

 つまり、業務に従事する人々が、その業務内容や職務水準について形態で明示するために、制服を着用するということである。ミッションでも、「顧客の事業の増進に貢献する」とあるように、顧客企業の立場からすればそうであろう。

 では、「何故制服の着用で、業務内容や職務水準について形態で明示する必要がある」のだろうか。制服を着せれば、多分職員の気持ちが引き締まり、少しはましに仕事をしてくれるはずだということもあるだろう。たとえば、最近は様々な規制から激減した消費者ローンのTVコマーシャルから伺い知る程度であるが、そこのコールセンターの職員もかなりスタイリッシュな部類に属する制服を着用しているようである。コールセンターに電話してくる客がその制服を目にすることはないだろうが、きちんとした制服の着用は、少なくとも無担保のリスクマネーを必要とする人々に提供するという社会的に意義のある事業を担っているという自負??を、コールセンターの職員に意識させる役には立っているであろう。その制服にも込められた意義を職員に意識させることで、少なからずコールセンターの職員の顧客に対する対応の質に影響を与えることがあるのではないか。これは、多分に推測も含んでいるが、制服着用による顧客企業の社員の意識の変革は、実はその企業のお客への接客の質に影響を与えることを意図しているのではないかと考えられる。こう考えると、工場内の作業者がユニフォームを着用することも、作業の安全性の確保や作業能率の向上という機能面は当然ながら、ユニフォームを着ることで、責任を持ってその企業の製品を製造するという職務を果すという、働く上でのプライドを高める効用はないであろうか。このように考えてくると、制服には、それを着用した人間の職務の質を単に明示するだけでなく、その質を高める効用を機能として果す側面が見えてくる。つまり、制服による幾分かの付加価値の拡大化である。

 先日、私の実母と妹夫婦が、東京ディズニーリゾート内にある旗艦ホテルに苦労してようやく予約をとり、遊びに行って来た。当然ながら、ディズニーシーやディズニーランドで遊びまくってきた。母は、ディズニーシーやディズニーランドが混んで暑かったことにブーブー不平を漏らしていたが、このホテルにはぞっこんに惚れ込んでしまったようである。部屋の調度品やバルコニーからの眺めの良さ、食事の素晴らしさは当然ながら、特にベルボーイに始まって受付や部屋への案内、食事での給仕に携わる人々が、皆親切で対応がスマート、それにスタイリッシュで惚れ惚れするくらいの美男美女ばかりだったとのこと。一緒に行った妹とその10代の娘も、これについては意見が一致していた。私が行った訳ではないのでどこまで本当かどうか分からないが、この女性3人とも、素晴らしいグレードのユニフォームに颯爽と身を包んだホテルマン(ウーマン)のかっこ良さについては、際限ないおしゃべりに花が咲いていた。美男美女が素晴らしい見栄えのユニフォームを着たからスタイリッシュなのか、ハイグレードのユニフォームを着用しているから美男美女に見えるのか、そのいずれなのかは分からないが、優れたユニフォームが接客の現場では、そのサービスの質に多大な貢献をしていることはこの例では明らかである。反対に、ハイグレードなユニフォームは、接客上のサービスの質にこだわるための重要な要素と捉えるべきであろう。トヨタ自動車のハイグレード・ブランドである、レクサス。そのブランドの価値を高めるのは、その高級感を備え、顧客の嗜好に沿った風格があり、ハイ・パワーであるとともにスタイリッシュさやドライビング性能、静粛性などを備えた高品質な車は当然ながら、その品質を十分に訴求するように販売しケアする販売店とサービス工場の雰囲気とマネジメント、対面する販売員や整備工のサービスの質、それに彼らが身に包んでいるユニフォームではないだろうか。そのすべてに、レクサス・ブランドが欧州の高級車ブランドと比べてどのような違いのある品格のサービスを顧客に提供するのかを、訴えていくものでなくてはならない。

 このように考えてみると、事例企業の顧客セグメントとして、そのビジネスの質について高いこだわりを持つ企業を、候補として上げることができそうである。そこで、このようなビジネスを展開する企業において、
「顧客企業で働く人々が、制服の着用によって、どういう役割を担って業務に従事しているのかを明らかとするため。」
ということであれば、「何故社員がどのような役割を担うのかを、制服の着用によって明確にする必要性」があるのだろうか。その回答の一つとして、以下のものがあるだろう。

 「制服の着用によって、職務に従事する人々の提供するサービスのステータスを、十二分に顧客に訴求するため」

 事例企業が提供するのは制服という商品であるが、それは顧客企業の社員が担う職務機能のクオリティを十二分に発現する機能、品質、デザイン等を、兼ね備えたものでなければならないということである。では、何故、顧客企業は
 「制服の着用によって、職務に従事する人々の提供するサービスのステータスを、十二分に顧客に訴求する」
必要があるのだろうか。つまり、制服を利用する顧客企業の視点から、さらにその顧客企業のお客様が、そのような制服の発する機能によってどのような価値を感じるかについて考えてみるのである。この話の筋道からすると、以下のことが素直に提示されるであろう。

 「エンド・ユーザーは、制服を含めたサービスを受ける場の、高度に醸し出される品位によって、そのサービスに全幅の信頼を寄せ、心地よくかつ安心してそれを享受することができる。」

 であるからこそ、そのサービスから感じることができる品位に対して、最終顧客は相応の対価を喜んで払うのではなかろうか。このような顧客企業のビジネスを十二分に成立させるために、事例企業は自社の製品を通して貢献すべきではないのか。そのためのミッションなり、戦略を改めて再考すべきではないのかという、仮説が導き出されてくる。以上が、事例企業で、顧客セグメントを具体的に定義し、それについて当社が満足するべき顧客価値は何かを導き出すための、ブレイクスルー思考を利用してみた例である。今回は、ハイ・グレードなサービス分野のみを考えてみたが、当事例企業であれば、医療と看護、介護、保育、セキュリティーなどの高度な機能性を求められる分野を考えてみたり、廉価であることを徹底して訴求する商品分野を考えてもよい。いずれにおいても、最終顧客のイメージを具体化することでセグメント化し、そこで求められる価値をブレイクスルー思考で問い続けてみるのである。

■ミッションと戦略の再考

 立てた仮説を元に、事例企業のミッションについて、改めて再考してみよう。従来のミッションは、「卓越した品質と機能の制服を提供するで、顧客の事業の増進に貢献する」であった。「顧客の事業の増進に貢献」では、言っていることが抽象的過ぎて、どういう事業をやりたいのかという意図がさっぱり伝わってこない。先ほどの仮説では、制服は顧客企業がそのサービスのハイ・クオリティさをエンド・ユーザーに訴求するための、重要な手段であると位置づけられていた。このようなレベルのサービスを目指す顧客企業であるならば、そこで提供されるサービスは目指すべきブランド・イメージの元に、そのサービスを構成する要素をトータルにコーディネートしているはずである。また、そうしなければならない。そうであるなら、事例企業は、そのようなサービスのトータル・イメージが顧客企業において確定した後に、営業にいくべきであろうか。これで、この企業がターゲットとする事業エリアで確固とした地位を確保することができるであろうか。ミッションという高度なレベルでの思考であるのなら、もう少し夢のあることを、顧客なり従業員なり投資家に対して訴えることはできないであろうか。事例企業の存在意義を、制服という要素を中核としながらも、もっと広く積極的に捉えてみてもよいのではないか。

 そこで、どうせならば、ハイ・クオリティなサービスの提供を目指す企業に対して、そのサービスの企画段階において、その質を十二分にエンド・ユーザーに対して発現するためのあるべき制服イメージを提案することを考えても良いのではないか。下請け的な受注営業から、提案営業へのマーケティング上の転換である。また、かなり冒険的だが、このような提案営業の場数踏んでいくと、制服以外のサービスの要素である店舗内の生地を利用した小物や調度品等を合わせた、コーディネートを提案できるようにはならないか。たとえば、ロイヤルホストやサンマルク等の、その他のファミリー・レストランとはサービスの質の差別化を図りたいと考えているような企業への、制服とその他の調度類をキーワードとしたサービスのコーディネート・ビジネスを展開するのである。このビジネスを実施する上で、事例企業の力ではどうにもならない分野については、他者と事業提携を進めればよいし、場合によってはM&Aも選択肢に入る。別に、自社ですべてをやり遂げる必要性はないが、自社のポリシーでサービスのコーディネート・ビジネスの中核を狙うことを考えるのである。

 以上は、かなり大胆な思考であるが、このぐらいの展望を描かなければ、大化けするものも化けないでしまう。ということで、新たなミッションを、以下のように定義してみた。

 「高品位なサービスの実現を目指す顧客企業の活動空間の創造」

 当初のミッションよりも、事例企業が目指すべき事業の方向性について、新たなミッションでは、より明確になったのではなかろうか。そして、この新たなミッションに基づいて、事業戦略を具体化していかなければならない。このための手法は、既に「ナビゲーション経営」として具体化している。ここでは、バランス・スコアカードによって、戦略を具体的に描くことになる。以上で見てきた、顧客に対してどのような価値を提供すべきかについて、このバランス・スコアカードの「顧客の視点」に具体的に記載して戦略マップを作成していけばよいのである。同じことを何度も言うが、自社ですべての事業要素を賄うことは、特に中堅・中小企業では無理である。そのための割り切りである、経営資源配分の取捨選択をミッションとの関係で意思決定していかなければならない。

 「高品位なサービスの実現を目指す顧客企業の活動空間の創造」という顧客企業への提案力を重視した経営を本当に行っていくのであれば、果たして中国の合弁工場は必要なのであろうか。また、標準程度の業務遂行能力しかない国内の拠点工場は、この新たなビジネスにおいてどう位置づけるべきか。制服というキーワードを中核としながらも、顧客企業のサービスのトータル・コーディネート力を訴えるのであれば、自社製造品でそのすべてを賄うことにこだわるべきか。他社製造品の利用や、様々な特色や利点を有する服飾メーカーの工場へ、その提案するサービスに求められる要件に合致した製品の発注を柔軟に行った方がよいのではないか。つまり、メーカーからサービス業へという、事例企業の事業転換である。そして、顧客企業のサービスのトータル・コーディネートと、言葉では言えてもそれを現実に実行することは相当に困難である。そのために、自社に抱えている服飾デザイナーのデザイン企画能力だけに依存していてよいのか。当初は、どこか著名なブランドを有する服飾デザイン事務所と、事業提携を図ることを考えてもよいのではないか。などなど、ミッションを実現するための施策を、事例企業の内部環境(事業遂行能力としての強みと弱み)と外部環境(事業実践上の機会と脅威)を睨みながら、案出していかなければならない。限られた経営資源を、如何に事業目的のために有効に活用していくのか。ミッションに込められた思いには、そのための重要な経営の意思決定基準が表明されているはずなのである。

□広瀬 幸義
中小企業診断士
(専門)IT化および活用支援、管理会計手法の導入・定着支援、経営戦略立案及び経営計画策定支援、グリーンシート等上場支援、プロジェクト・マネジメントの実施支援等
雇用能力開発機構 生涯職業能力開発促進センター講師
戦略会計研究会 発起人/会長、戦略志向CFO育成マスターコース事務局

投稿者 info : 22:38

専門家コラム 「中小企業と新会社法:人的リスクと内部統制」(2007年1月)

保科 悦久

< 中小企業と新会社法:人的リスクと内部統制 >

1.会社法における内部統制

 大会社は会社法によって取締役の職務の執行が法令等に適合するための体制、業務の適正を確保するための体制、すなわち内部統制の整備に関する事項を決定しなければならないということが明文化されました。これらの体制については会社法によって全く新たに義務付けられたというわけではなく、これまでの旧商法においても善管注意義務として求められていたものです。
 また企業は当然に従業員の監視・監督義務を負っています。たとえ個人がミスを犯した場合であっても、個人の業務の適正を確保するために体制、いわゆる内部統制が不十分だったということになり、企業が責任を負うことになります。企業としては、個々の従業員が適正に行動するための方針や基準である社内環境を整備することが求められており、従業員が整備したルールに従って行動しているかをチェックする機能が必要です。

2.なぜ中小企業にも内部統制が必要なのか

 新会社法では最低資本金撤廃、大会社(最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上(資本金基準)又は,最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上(負債基準)である株式会社)以外の会社の取締役会不設置、監査役不設置が認められました。一見すると機関設計の柔軟化として大会社以外の会社にとっては経営幹部に対する経費節約にもつながります。しかし、一方では自由裁量が高いために経営者の自己責任が強化されたといえます。すなわち会社法改正により中小企業の経営者の社会的責任(CSR)に対する姿勢が問われています。

3.不正行為の要因とは

 不正行為を誘発する要因として1)動機、2)機会、3)正当化の3つが挙げられます。この3つの要因が重なったときに不正行為に及ぶといわれています。
1)不正行為を犯す動機
 例えば、横領などの不正行為の場合、横領を行う動機として過重債務などの原因により、通常の収入だけでは生活が困難な状況にあるなどの金銭面でのプレッシャーが動機となります。
2)不正行為を実行する機会
 横領を行える機会としては、伝票作成と出金の処理ができるなど、作業と権限の集中などが考えられます。また、周囲からの信頼が厚い担当者の場合、権限の集中や処理に対するチェックの不備などが発生しやすいといえます。
3)行為を正当化
 本人は会社のお金を横領しているという自覚はなく、一時的に借りるだけであり後で返すものであるため問題はないという認識は不正行為の正当化といえます。

4.人的リスクへの対応とは

1)人的リスク対応のハード面
 内部統制は、業務プロセスに組み込まれる組織のすべてのものによって遂行されるプロセスの改善を目的としています。具体的な対策として人的ミスを防ぐためには、
 (1)経理担当者をスキルの高い人材への変更や人材教育
 (2)ITシステムによるチェック機能を強化
 (3)処理後の二重のチェックを業務に組み込む
などにより、人的ミスによるリスクをコントロールすることが考えられます。
また、不正を防ぐためには、
 (1)伝票処理をする担当者と出金処理する担当者を分けて承認機能を強化
 (2)処理が適正に行われているかを定期的にチェックする業務を新たに設ける
 (3)監視する組織を設け、独立的なモニタリング機能を強化する
などが挙げられます。
2)人的リスク対応のソフト面
 内部統制では従業員だけではなく経営者に対する不正防止をも目的としています。従業員に厳しいノルマを課したり、経営者が業務をすべて従業員に任せたりすることなどのプレッシャーは粉飾を招くリスクが高くなります。また、普段のコミュニケーションを大事にし、普段と異なる行動や言動に対して周囲が気づいてあげられるような環境づくりが重要です。
 健全な経営を目指す上では、経営者が意識改革を行い業務に積極的にコミットメントする姿勢を従業員に示すとともに、不正行為を正当化させないためにも従業員への倫理観教育も必要となります。また、「なぜ当社に内部統制を導入するのか」という意義を従業員に教育し、認知性・倫理性、信頼性保持のために継続して教育することも重要です。

5.中小企業の経営改革につながる内部統制導入メリット

1)業務効率化
 業務プロセスのブラッシュアップにより不要な作業の排除やモレ、ダブリのない業務プロセスの標準化により業務効率化が図れます。
2)取引先との信頼関係構築
 業務標準化に伴うクイックレスポンスで取引先への信頼性の向上、適正な財務諸表の作成で金融機関に対するアカウンタビリティの向上で有利な資金調達が行なえます。
3)社内の統制強化
 経営者の内部統制理解により、「誰が」、「何を」、「どのようにしているか」ということが把握しやすくなります。また統制の欠陥を素早く感知できるため改善活動の実施が容易になります。

 以上、中小企業経営者が、これらの導入メリットと導入に関する労力・コストを比較して、内部統制の整備・運用を検討すべき時期がきているのです。

■保科 悦久(ほしな よしひさ)
中小企業診断協会東京支部中央支会常任理事(青年部部長)、東京税理士会麹町支部情報システム委員会委員、日本公認会計士協会東京会経営委員会委員。著書「入門簿記テキスト」「決算書の読み方・作り方・活かし方」「中小企業の再生支援マニュアル」(ともに同友館)

投稿者 info : 15:33

専門家コラム 「オフィスの「かんばん方式」について」(2007年1月)

長田 和久

< オフィスの「かんばん方式」について >

かんばん方式=製造業という常識を脱し、事務・開発、サービス業務の現場(オフィス)の改善活動に、かんばん方式を取り入れた「ストア管理」を紹介します。ストア管理とは、トヨタ生産方式の原理・原則を応用した業務改善の手法(松井順一氏の提唱)です。

1.トヨタ生産方式を応用したストア管理
 松井順一氏[コンサルソーシング(株) 代表取締役、中小企業診断士]が書かれた、“職場の「かんばん方式」 トヨタ流改善術ストア管理”をもとに、ストア管理を紹介します。
 トヨタの生産現場におけるかんばん方式をホワイトカラーの事務現場に適用する「ストア管理」という考え方です。これは、事務作業管理の基点となる作業指示書の置き場所をストアと呼び、このストアによって業務管理を行うものです。

2.ストア管理の概要
 ストア管理は、「業務にプロセスがある」「組織管理力が求められる」「人づくりを重視している」という要件を満たす現場でより大きな効果があります。
 ストア管理では、作業カードとストアボードを使います。現場グループの業務プロセスを適切な作業単位に分類し、作業カードに起こします。日々の作業カードを改善現場グループのストアボードに張ります。カードは、グループメンバ毎の作業の進行にあわせて、「作業待ち、本日の作業予定、作業中、保留中、作業完了」等の状態欄を移動させます。
 作業全体の状況や一人一人の作業を「見える化」することにより、組織管理に必要な調整がやりやすくなります。進行状況から早期に異常を検知し、ムリ・ムダ・ムラを見つけやすくします。グループメンバからの気づきや改善提案が生まれ、作業の平準化ができるようになります。
 ストア管理は、各個人のスキルや能力を浮き彫りにし、その向上をはかるとともに、現場全体の状況がみえるようになることによって各自が果たすべき役割を認識するようになり、改善意識を高める人づくりにもつながります。

3.改善活動の進め方
1) 改善ボードを使った改善活動の見える化 - 「目で見る管理」
 「改善ボード」とは改善活動において、目で見る管理を行う情報管理ボードであり、以下のような内容を張り出します。
 方針と目的、目標、活動体制、管理指標、管理指標グラフ、結果指標、運用手順、改善提案、等
「管理指標」は、目指す姿を「見える化」するものです。「結果指標」は、改善目標の達成具合を示すものです。
例えば、改善目標が“生産性向上20%の場合”、結果指標はその達成状況となり、管理指標は生産性向上のための施策・取組みの状況(例:作業バラツキ幅低減、作業やりなおし回数削減)をはかるものとなります。なお、それぞれの指標は定量的で簡単に測定できるものが望ましい。

2) 改善グループでのミーティング
 週会では作業カードの割り振り、改善提案や解決策の検討を行います。毎日の朝会では、作業状況を確認し、作業カードの再割り振りを行います。問題点の抽出と改善提案もボードに張り出します。毎日、改善ボード前で行うスタンディングミーティング(立って行う短時間で効率的な意識あわせ)により、気づきあい、学びあい、改善内容の検証が行われます。
 また、改善活動においては、三現主義である「現地」「現物」「現実」に基づき行動する習慣が重要です。

3) 正味作業と非正味作業に分類
 ストア管理により、「作業の見える化」ができるようになったら、作業の改善に取り組みます。顧客への価値をもたらす「正味作業」とそうでない「付帯作業」と「ムダ」に分類し、正味作業の拡大と付帯作業の縮小、ムダの削除に常に務めます。「企業は顧客に価値をもたらすことによって、初めて利益を生み出せる」という、ごく当たり前の企業経営の大前提に立って、こうした改善を進めて行きます。

4.改善の基盤づくりは人づくり
 改善活動を展開し、推進するためには、「人づくり」が基本です。現場の改善を行う改善リーダーの指導にあたる「改善伝道師」を育てる必要があります。
  ・他人に成果を出させ、改善を機軸とした管理を実践できる人(改善伝道師)
  ・組織に目標をつくりだし、動機付けして達成できる人(改善リーダー)
  ・自ら考え自ら行動できる人(改善メンバ)

 改善活動を浸透させていくためには、活動をふりかえり、知恵と学びを共有し、伝承する場を設けます。
改善リーダーは、自グループの現場で現場発表を行い、改善目標の達成状況、改善提案や成果を報告します。
 改善伝道師は、マネジメントの知恵を披露する運営発表を行います。他人に成果を出させるマネジメントの知恵が形式知化し、共有されます。

 改善活動は、現場主体のボトムアップ的な活動ではありますが、改善成果を出し続け、組織文化として定着するには、トップの「改善」への熱い思いが何より重要です。

□長田 和久(おさだ かずひさ)
中小企業診断士、コンピュータメーカー勤務、テクニカルエンジニア(ネットワーク)

投稿者 info : 12:20

専門家コラム 「考える」ことの大切さ(2007年1月)

鈴木志恵夫

< 「考える」ことの大切さ >

1. 生き残るために24時間事業のことを考える
 経営を取り巻く環境が激しく変化する毎日の中で、順調に事業を営んでいる方、今はアゲインストの時と苦しんでいる方、様々であると思います。
 事業がうまくいっている時は、このまま明るい未来が開けていると感じ、精神的にも、肉体的にものっていける状態で迷うことなく突き進むことができます。また、次なる展開をどうしようかと熟考を重ねている状況であるかもしれません。
 しかし、市場は日々変わっていき、長い時間の中ではうまくいかないこともあります。その時どう考え、どう対応するのかがとても大切になります。

 「市場の変化にどう対応するか」、「どのように事業を進めていくか」など経営の重要事項についてどのような時に考えるのかという筆者の問いに、ある経営者の方は「常に考えている。そして電車の中でひらめくこともあれば、会社にいる時に考えが出ることもある。しかし、いつも考えていることが、ある時にふと気がつくことにつながっている」、とのことでした。
 変化の方向性にあわせてどんどん自分が変われば良いというものでもないし、かといって変わらなくては世の中の流れから置いていかれてしまうかもしれない。変わりすぎてもだめ、変わらなくてもだめ。それではどう考えればいいのでしょうか?

2. 「経営理念」を大切に
 組織の目的は、民間会社の場合、利益を追求し、組織として存続・発展していくことです。利益を追求するだけでなく、キャッシュフローにも気を配らなければなりません。しかし、利益を追求する、キャッシュフローに気を配るといっても、その元になる売上がなくては話になりませんから、売上を上げるためには変わり行く市場に対応していく必要があります。
 ここでお伝えしたいのは、戦略のことではなく、自社はいったい何のために存在し、社会の中でどのような貢献をしていくのかという根本のところです。「経営理念」や「社是」という形で示されますが、組織の根本的な考えをしっかりとすることで、ブレない。いろいろな対応の選択肢があっても、根本に立ち返って自社の方向性を考えることにつながります。「経営理念」、「社是」を大切にしていただきたい。

 特に組織として活動する中では多くの人がかかわっていますので、経営者の考えを明確にし、根本の考えをしっかりさせて、組織全体の考えのブレが起こらないようにする必要があります。

3. 将来を見据えて、考える習慣をつける
 考えるということは、動作と違って、何かを考え出すためにどのくらい時間がかかるかわかりにくいものです。したがって、常に考えるように心がけることが必要になると思います。大変なことかもしれませんが、真剣に仕事に取り組む中で業務もこなし、考えることもするのです。
 特に創業目前、あるいは創業して間もない経営者にとっては、目の前で起こるいろいろなことに対応することで精一杯かもしれません。しかし、そんな中でも一日30分でも、1時間でも考える時間をとっていくことが、後の展開のためには重要であると考えます。
決して、目の前のことだけ考えるのではなく、将来を見据えて・・・。


□鈴木志恵夫(すずきしげお)
鈴木総研 代表
中小企業診断士。一級販売士。
(社)中小企業診断協会東京支部中央支会理事

投稿者 info : 11:42

2006年12月17日

鈴木 清(支会員サイト 新規掲載)

有限会社 イーアズイー

http://systemtales.way-nifty.com/

投稿者 info : 03:05

2006年12月16日

平成18年度青年部セミナー第3弾 『週末起業セミナー』開催のお知らせ

平成18年度青年部セミナー第3弾
『週末起業セミナー』開催のお知らせ
~平日はサラリーマン、週末は社長!? “2足のわらじ”で夢をかなえる~


「週末起業」という言葉、あなたも耳にしたことはあるのではないでしょうか。「週末起業」とは、文字通り、平日は会社勤務をしながら週末に自分で事業をするという、新しい独立のカタチです。現在企業にお勤めの方が、独立するとなれば、今の給与収入やポジションを捨てることになってしまいます。それは、非常にリスクの高いことですので、独立は考えるものの、実際行動できないという方が多くなるのも当然のことかもしれません。
しかし、会社を辞めなくていいとしたら? 現在の給与収入もポジションもそのままで開業できるとしたら? スタートアップさえ上手く行けば、あとはソフトランディングすればよいのです。先行きが厳しいと感じたら手を引けばよい。こんなフレキシブルな独立スタイルが「週末起業」なのです。
当セミナーは、「週末起業」コンセプトの発案者、藤井孝一氏を講師にお招き致します。また、実際に週末起業を実践した方の生の体験談も聞けるという、充実の内容となっておりますので、少しでもご興味をお持ちの方は、この機会に是非ご参加下さい!


日 時:2007年2月24日(土) 15:30~17:15(15:15分開場、約100分間)

対象者:週末起業に興味をお持ちの方

セミナーの概要:(1)『週末起業』の具体的実践法
        (2)『週末起業』実践者による事例紹介


講 師:藤井 孝一氏(『週末起業』(ちくま新書)著者、中小企業診断士)
    他(週末起業実践者、数名)

会 場:如水会館 1階 如水コンファレンス 東京都千代田区一ツ橋2‐1‐1

<最寄り駅>
●地下鉄都営新宿線神保町駅(A8出口)下車徒歩3分
●地下鉄都営三田線神保町駅(A8出口)下車徒歩3分
●地下鉄営団半蔵門線神保町駅(A8出口)下車徒歩3分
●地下鉄都営東西線竹橋駅下車1B出口 徒歩4分       
    (http://www.kaikan.co.jp/josui

参加費:2,000円

定 員:40名(申し訳ありませんが、先着順とさせて頂きます。)

申込方法:
当セミナーへ参加を希望する方は、下記の通りにeメールでご連絡下さい。
本文に、参加者全員の(1)氏名、(2)eメールアドレス、(3)電話番号、(4)講演で聞いてみたい事項(複数可)、を明記のうえ、件名を「週末起業セミナー申込み」とし、下記にeメールを送信して下さい。
※ご連絡頂きました個人に関する情報は、当セミナーの連絡のみに使用します。

申込先:遠藤 孔仁(青年部) ICI40820@nifty.com 

締切日:2007年2月17日(土)

以上

投稿者 info : 22:59

2006年12月 2日

専門家コラム 「情報システムの開発はチームで」(2006年12月)

鈴木 清

< 情報システムの開発はチームで >

 情報システムの構築には、経営者の理解と参画が必要であるといわれている。実際に、プロジェクト失敗の原因として、この理解と参画の不足が指摘されることは少なくない。

 だが、経営者が積極的に参画していたにもかかわらず、失敗に終わった情報システムのプロジェクトもある。なぜだろうか。この点を考えてみたい。

 そのような失敗を私も2件聞いたことがある。うち1件はERPに関するもの、もう一つは、営業関係のシステムである。聞いた話のうち1件は、まんざら知らない企業ではなく、またそのプロジェクトが行われることも知っていた。なお、念のため付け加えると、私がそのプロジェクトに参加していた訳ではない。

 私が聞いたケースでは、いずれも経営者が情報システムの知識がなかったわけではない。

(1)当然ながら、その情報システムは当該企業において重要であった。
(2)情報システム開発プロジェクト・チームにおいて、経営者は実質的にリーダーの位置にあった。
(3)経営者は、かつて情報システム関連の業務経験もあり、情報システムの知識や識見もあった。

 にもかかわらず、プロジェクトは失敗となった。
何よりも、経営者自身が、失敗と判断していた。速やかに損失を処理して、プロジェクトを終了させていた。この辺は、さすがに経営者であり、本当にすごいと思う。

 それだけに、なぜ失敗したか、何をもって失敗としたかは、分かりにくいのである。せいぜいが、「システムがうまく稼働しなかった」、「当初の目的を果たせなかった」、あるいは「業務上の要請に応えられないと判断した」程度が関係者から聞こえてくるだけである。

 したがって、以下の話には、私の推測が相当程度に入っている。もうひとつ、お断りしておきたい。「経営者の理解と参画」は不要といっているのではない。必要なのだ。問題は、どのような参画が望ましいかである。


1.情報システム開発の問題とは何か

 本件に関連した業務系の情報システム開発の問題を示しておきたい。

(1)求めるのは業務上の成果である

 企業が求めているのは、ビジネスあるいは業務における現実の成果である。情報システム自体は、その成果実現のためのプロセス/手段での一要素である。

 当然ながら、ビジネスあるいは業務プロセスが、情報システムの要件を規定する。

(2)情報システムは、人が使ってこそ稼働する

 当たり前であるが、業務系の情報システムは、情報システムだけでは稼働しない。というか役に立たない。業務において担当者が入力し、出力情報がそれを必要とする者に届いて、初めて実効性を問える。

 注意していただきたいのは、環境変化への微妙な対応は、人間がやっているということである。入力すべきデータは毎回きっちり定時に同じように発生するわけではない。データが遅れることもあれば、必要な項目がないこともある。これらの対応は、人間がやっているのである。出力情報も同じである。特異な変動があった場合は、それを勘案して、判断をするのは人間である。

 日常的に起きるさまざまな変動や問題を人間系がうまく吸収するからこそ、情報システムは機能するのである。情報システムが柔軟に判断して対応してくれるのではない。システムの問題は人間系/業務系で吸収できるが、逆は不可である。人の対応が硬直化すれば、システムは機能しない。これが、現場を重視すべき理由のひとつである。

(3)システム開発で最大の問題は利害の衝突である

 情報システム導入は、業務上の成果を得るためであり、人間は情報システムが機能するための重要な要素である。だからこそ、さまざまな利害の衝突が起きる。

 情報システムの導入は、業務処理のプロセスや手順を変える。そのため、益を得る部門と損を被る部門(または担当者)が生じる。社内の関連する部門や担当者の間で利害の対立が生じる。

 情報システムの要件間の不一致や要件の急激な増加の背景には、この利害の衝突があることが多い。ただし、情報システム・プロジェクトの中からは、この利害の衝突は、何がどう問題かが見えにくいのである。

 そのためか、残念ながら、情報システムのプロジェクト内で利害対立のすべてが解決できるとは限らない。むしろ、業務全体の中で調整されて、解消されることが多いと思った方がよい。

2.これらの問題はユーザーだけが解決できる

 上記の3つの問題は、開発会社の苦手とするところ、というよりもユーザー側でしか解決できない。
開発会社がいかに要件定義の技術を駆使しようとも、できるのはユーザー側からの要求をシステムに実装する要件にまとめることである。もともとの要求自体は、開発会社には規定できない。ましてや、業務プロセス自体の変更などは、できるものではない。開発会社にできるのは、ユーザーの要求通りのシステムを作ることである。

(1)開発プロジェクトはユーザーが主体である

 このために、情報システム開発のためには、ユーザー側の資源、つまり十分な予算と優秀な人材、の確保が必要となる。

 通常は、情報システムの開発プロジェクト・チームを編成して、これにあたる。このチームが稼働して十分に機能するか否かが、システム開発の成否を分けるポイントである。
 この開発プロジェクト・チームには、次が必要である。

a.開発プロジェクトの目標(経営あるいは業務上の要請)
b.開発プロジェクトの予算とユーザー側人員の確保
c.プロジェクト遂行にかかわる権限と責任

 これらを開発プロジェクト・チームに提供して、必要な支援を与えるに相応しいのは経営者である。これが経営者の理解と参画の必要性の根拠である。

 ここで、開発プロジェクトのチーム編成、とりわけリーダーをどうするか、である。

 ビジネスの目標や要件は、経営者が誰よりもよく知っているのは、間違いない。問題は、情報システムの知識であるが、私の知る例では、その経営者の方は、情報システムの知識・経験においてもその企業の誰にも劣るものではなかった。むしろ、情報システムに対しても卓越した視点と意見をもっていた。
 このような場合、重要な情報システム開発プロジェクトであれば、経営者が直接に指揮をとる、つまりプロジェクトのリーダーとなるのは自然であろう。誰もが、たぶん経営者自身もそう考えたと思う。

 なお、経営者であればフルタイムで情報システムのプロジェクトに携わるわけにはいかないので、事務的な事項のためのチームリーダーは他におくのは不思議ではない。だから、形式的にはリーダーは他にいても、経営者が実質的にチームリーダーとなったらどうかということである。

(2)経営者が開発リーダーのとき、何が問題か

 経営者が実質的なリーダーとなった開発プロジェクトがなぜ失敗したのだろうか。業務プロセスから情報システムが乖離してしまい、担当者/部門による微妙な調整がうまく機能しなくなってしまうのは、なぜだろうか。
 おそらくは、開発プロジェクトのチームがうまく機能しなかったのだ。

(a)チーム構成が脆弱である

□通常、全社的なプロジェクトであれば、全社的な体制が組まれる。しかしながら、この場合は若手中心のチーム編成となりやすい。チームには、経営者がいるのであるから、さらに管理職クラスをチームに配置することは重複であり不要とされる。
□このため、チーム員の情報システムの知識や熱意は十分ではあるとしても、業務知識や社内調整力は経営者に依存することになる。
□したがって、開発プロジェクトでは経営者の判断のみが重視される。誰もが、どのようなものであれ判断を求めるときは、経営者のところに行くことになる。

(b)開発プロジェクトとそれ以外の部門・業務との調整が難しい

□外部からの意見がチームに届きにくくなる。
誰もが、経営者のプロジェクトならば間違はなく心配ないと思ってしまう。皆、自分の業務で忙しいのである。それに批判もし難い。
□したがって、本来起きているべき問題が、隠されたまま開発が進んでしまう
 経営者といえどもすべてを知っているわけではない。「情報システムは人が使ってこそ稼働する」のである。現場での細部の問題もまた重要なのである。

 もう一つ、注意していただきたい点を挙げておく。

(c)いささか難しく微妙なミッションをプロジェクト・チームに持ち込んでしまう

□本来は、役員や本部長レベルの問題を持ち込むことがある。
例えば、グループ経営の微妙な問題や、プロジェクトを機にした新規ビジネスの可能性を探る等である。
□経営者から見れば、同じような経営上の問題かも知れないが、チーム員が理解できるとは限らない。システム開発以外のやっかいな問題の負荷がかかることになる。

3.開発プロジェクト・チームを機能させる

(1)開発プロジェクトの要件

 開発プロジェクトの要件として、次を示した(前述)。

a.開発プロジェクトの目標(経営あるいは業務上の要請)
b.開発プロジェクトの予算とユーザー側人員の確保
c.プロジェクト遂行にかかわる権限と責任

これらの要件は、実際には、開発プロジェクトが正規の決裁承認を受けることで提供される。経営者は、当然この決裁承認にかかわる。これらの要件が整えば、開発プロジェクト・チームが編成され、開発がスタートする。

 問題となるのは、情報システム開発プロジェクトの方向性の確認と社内のその他の部分との調整である。

a.開発プロジェクト方向性のチェックと修正(含む:プロジェクトの中止と撤退)
b.開発プロジェクトとその他の部門・業務との調整
c.その他、開発プロジェクト・チームの問題解決の支援等

これらは、開発プロジェクトのみで対応することは難しい。また場合によっては好ましくない。プロジェクト外部の離れた位置からのコントロールと支援が必要である。

(2)経営者はエグゼクティブ・スポンサー

 上記の要件から、経営者はプロジェクト・チームの外側に位置した方が良いことが分かる。プロジェクトのリーダーではなく、エグゼクティブ・スポンサーの位置がよい。

 エグゼクティブ・スポンサーとは、一般には、経営の立場から、開発プロジェクトを支援する役割を指す。プロジェクトの設置、プロジェクト目的の設定、またプロジェクトに必要な資源を提供、また必要な場合はプロジェクト中止を決断する等の活動を行う。

 情報システムの開発プロジェクトには、経営者の理解と参画は欠かせない。だが、それはプロジェクトのリーダーであることを意味しない。
経営者は、企業全体に責任を持つ。エグゼクティブ・スポンサーとして、全体的なポジションから、プロジェクトの支援とコントロールを行うことをお勧めする。


□鈴木 清(すずき きよし)
有限会社 イーアズイー 代表取締役
資  格:中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査技術者
専門分野:業務系情報システムの構築・運営
Blog  :”情報システム外伝” http://systemtales.way-nifty.com/

投稿者 info : 18:55

専門家コラム 「中小企業の活性化と人材の確保・育成」(2006年12月)

安井 哲雄

< 中小企業の活性化と人材の確保・育成 >

 今年は景気の好転とともに求人数が増加、雇用環境は激変し、来春卒業の学生の就職内定や中途採用が早く決まっています。一昨年前の就職戦線と比べると求職者にとっては大変良い状態ですが、求人側にとっては大企業でさえも目標通りの新卒採用が困難な時代となりました。まして中小企業においては元々人材が手薄な上、人材の採用が難しいものですから、今後は尚更、採用問題に悩まされるでしょう。
 「企業は人なり」は昔も今も共通の普遍的なテーマです。特に経済のソフト化が進展している今日では、人材の確保が中小企業の存続や発展のためのキー・ファクターになっています。そこで、「中小企業を活性化する人材マネジメント」の観点から人材の確保や育成について考えて、望ましい姿を見直したいと思います。この人材マネジメントとは「企業目的・目標の達成のために人材の確保、育成、評価、処遇等を通じて、人的資源の管理・活用を行う」ものです。

1. 人材の確保
 
 まず、企業戦略に合わせて必要な人的資源を点検し、不足する人材を外部に求めることになります。一般に「募集と採用」を行いますが、正規社員、契約社員、派遣社員等の種類がありますので、戦略目的に合った選択を行い採用します。他に、業務委託は「採用・雇用でない」人的資源の補完方法ですが、最近、法的な問題やトラブルが散見されますので、注意深く慎重に取扱うことが望まれます。
 新規であれ中途であれ、採用においては求職者に対して、「企業のビジョン、戦略、実態」等をできる限り情報開示し、会社、社風、トップの経営理念、商品と業務等を正しく理解してもらうように努めることが大事です。自社の魅力を訴求し求職応募者が将来の姿を描けるようにして、自社への信頼感や期待感をもってもらうようにします。他方、求人側は求める人材の要件に合っているかを見定める必要があります。双方のコミュニケーションがうまくいってこそグッド・マッチングができます。
 そのためには、求人・採用の準備として、求める人材の要件を明確にしておかねばなりません。又、言うまでもなく労働マーケットと人材価値に見合った給与や労働条件等が必要です。

2. 人材の育成
 
 現代経営ではスピードが要求されますので、短期戦略的に中途採用で即戦力人材を求めることも必要になります。しかし、中長期に亘り社内で人材を育成することが、企業の活性化の礎となります。具体的には、社員の能力を高めて成長を支援し、組織リーダーを育成し、組織の能力を強化します。そのために、個人のキャリア開発を通じた育成・研修を行います。
 研修には、職場の仕事の経験・学習(OJT)と職場外の研修(Off-JT)があります。OJTでの研修が基本で重要です。OJTにはマニュアルにない大事な知識やノウハウがあり、仕事と人的な結びつきに密接な関係があり、効果的なOJTが個人の能力と組織の能力の向上に係ってきます。しかし、意外にも各職場では「OJTで何を学ぶのか、何をどのように教えるのか」よくわからないケースが多いようです。又、同じ企業の内部で職場による格差が大きいことがあります。会社全体の視点で人材育成を遂行するには、OJTの実態を見直し、望ましいOJTのあり方を探ることは、手間がかかりますが価値ある仕事です。

3. 適正な評価

 通常、人事における評価・処遇は「個人の業績、成績や貢献度を評価し、処遇に反映する」ことにあります。しかし、「企業の活性化と人材の育成」の観点からは、評価の意義は、単に企業への貢献度を評価するだけでなく、評価結果の原因・理由を分析把握し、今後の業績・成績の向上に役立てることにあります。評価分析結果を通じて、「弱みの改善」、即ち、「仕事と人材のマッチング」、「人材の採用方法や育成計画の見直し・策定」、「組織機能の見直し」、「上司の管理能力のチェック」等に反映させます。
 人事評価においては、通常はa.職務遂行能力評価、b.業績・成果評価、c.労働意欲評価がよく使われます。一方、中長期に企業の活性化と成果をもたらす視点では、d.業務プロセス評価やe.行動(基準尺度)評価も効果的といえます。
 業績・成果評価の場合、実際には上司の属人的な判断基準による曖昧な評価に陥ることがあります。そのような欠点を補正するために、「目標管理」による評価方法が有効と期待されます。通常、「目標管理制度」では期の初めに上司と部下が話し合って当期の目標を定め、中間や期末に目標の達成度で評価をいたします。相互に合意した目標が評価基準となりますので、公平度、透明性、モラールアップに繋がりやすいですが、実際の運用においては目標の設定が大変難しく、目標管理の効果の成否に影響します。効果的な目標管理を運用するには詳細な基準書や手順書を用意し、忍耐強く考課者と被考課者の双方の訓練を積重ねざるを得ません。
 適正な評価とは「公平さ、透明さ、納得性がある」評価であり、労働意欲の向上と組織能力の強化に通じます。


  
4. 適正な処遇

 人材の成長と企業の活性化を促進するためには、評価が適正な処遇に反映されることが不可欠です。では、適正な処遇とは何でしょうか?
 企業業績への社員の貢献を高める方策は、経営戦略に則して社員が各々の持場で自立的に考え経営活動に積極参加してもらうことです。社員の働く目的や生きがいは多様です。労働の基本は「自己実現欲求」と言われますが、戦略目標の達成には何らかのインセンティブが必要です。そのインセンティブの第一要因は適正な処遇であり、一般には賃金と報酬、業務・仕事そのもの、業務上の地位、権限、自尊心です。その他のインセンティブとしては、褒賞、手厚く安定した福利厚生、職場の良好な風土や人間関係といったものも考えられます。各々の役割が異なりますので、適宜状況に応じた適切な組合せと適用が効果的でしょう。

 終りに、中小企業の活性化を実現する人材戦略アプローチは、「できるだけ多くの社員が業務に自立的に参加・遂行し、企業業績に貢献した成果を正当に評価し、本人の納得できる処遇を与える」人材(人財)マネジメントです。この人材マネジメントを上手に運用して会社を活性化し、業績を向上させるように祈っています。

 尚、本文3.適正な評価に記載した「目標管理制度」に関しては、同じ専門家コラムへの筆者の寄稿「成果主義人事の失敗と成功(2005年9月)」の中で触れていますので、ご参照してください。
  http://www.rmc-chuo.jp/home/mt/archives/2005/09/20059_2.html


□安井 哲雄(やすい てつお) 
中央支会所属、中央支会常任理事 兼 国際部長
東京支部登録研究会「人財開発研究会」代表幹事、「ワールドビジネス研究会」副代表幹事
著書: 「図解 BRICs経済がみるみるわかる本」共著、アジア&ワールド協会編
    出版社: PHP研究所、2005年11月9日発行、ISBN4-569-64650-6
  http://www.php.co.jp/bookstore/detail.php?isbn=4-569-64650-6

投稿者 info : 18:03

専門家コラム 「中小企業におけるIP電話導入について」(2006年12月)

山本 修

< 中小企業におけるIP電話導入について >

最近中小企業でも導入事例が増えているIP電話について、その主な導入方法についてご紹介します。

1.利用が拡大するIP電話
 IP電話とは、インターネットの技術を利用した電話のことで、ブロードバンドサービスの利用が広まるとともに、様々な形態のIP電話サービスが提供されるようになりました。個人向けのIP電話サービスには、

a.インターネットプロバイダーが提供するIP電話サービス(050番号ではじまる電話番号)
b.通信事業者が提供するIP電話サービス(東西NTTの「ひかり電話」など。従来の電話番号を継続利用可能)
c.パソコンで使用するIP電話ソフト(ソフトフォンとも呼ぶ。Skype(スカイプ)が有名)

などの種類があります。
 IP電話サービスは通話料の安さが特徴で、同じIP電話事業者のユーザー同士の通話なら無料の場合が多く、固定電話や携帯電話への通話料も安価になっています。(固定電話へは3分8.4円(税込)、携帯電
話へは1分18.4円(税込)程度)

2.中小企業におけるIP電話の導入
 企業においても、通信コスト削減を主な目的として、IP電話を導入するケースが増えてきています。IP電話やその技術を導入することで、事業所間の内線通話等のコスト削減が期待できます。
具体的には、

a.拠点間の内線網をIP化し、通信コストを低減する(従来の専用線等に替えて、IP-VPNなどを内線網に利用)
b.通信事業者のIP電話サービスを利用して企業内の内線網を構築する
(例えば050番号のIP電話サービスを事業所ごとに取得し、既存の電話設備で050番号と内線番号とを変換して内線として利用する)
c.WAN回線やIP電話機器を自前でそろえて、企業の内線網を構築する

といった方法があります。
 これまで企業でのIP電話導入はcの方法が一般的でしたが、これは社員数が多い大企業で採用されてきた方法でもあり、初期費用やランニングコストが高額になる場合があります。中小企業においては、最近aやbの方法で内線網を構築し、通信コストを削減する企業が増えているようです。既存の電話設備の活用も可能で、初期費用を抑えながらIP電話のメリットを受けることができるからです。

3.IP電話ソフトの企業での活用
 また、最近ではパソコンで使用するIP電話ソフトを内線通話として活用するケースもでてきています。これは、Skypeなどの無償IP電話ソフトを利用するもので、企業ニーズに合わせてユーザー管理やセ
キュリティ管理を実施可能なソフトウェアやサービスが提供され始めています(有償)。また、IP電話ソフトに備わっているプレゼンス機能(利用者の状態を表示する機能)やチャット機能(文字による対話機能
)を活用してコミュニケーションの効率化を目指しているケースもあります。

4.IP電話利用における注意点
 今後も企業でのIP電話利用は増えていくものと思われます。これから内線網を構築する企業や既存の電話設備更新を検討している企業では、これらのIP電話サービスを活用して、通信コスト削減とコミュニケーション方法の多様化を検討するのも良いでしょう。
 なお、IP電話には、停電に弱いなどの注意点がありますので、IP電話の特徴を理解して、必要に応じて対策をとったうえで利用することをお勧めします。また最終的には、アナログ的な音質調整が必要な場合もあります。このため、IP電話の導入にあたっては、従来から電話設備を扱っている通信業者に相談するのも良い方法といえるでしょう。


□山本 修
中小企業診断士、システム監査技術者

投稿者 info : 17:53

専門家コラム 「内部統制と金融商品取引法(日本版SOX法)の取組について」(2006年12月)

平井 哲生

< 内部統制と金融商品取引法(日本版SOX法)の取組について >

1. はじめに

世界市場を大きく揺るがした企業不祥事(エンロン事件、ワールドコム事件)の発生後、米国では、失われた信頼の回復と不祥事の再発防止のため、2002年7月に「企業改革法(サーベンス・オクスリー法:SOX法)」が成立しました。
日本国内においても、相次ぐ企業不祥事の発生を背景にして内部統制に関する法制度化の動きが加速し、今年5月に「新会社法」が施行、6月に「金融商品取引法」が成立しました。この法律は、米国SOX法にならい、国内の同様の法制度を検討し、内部統制の整備と内部統制報告書の提出を規定したことから日本版SOX法と呼ばれています(「日本版SOX法」という名称の法律はありません)。金融商品取引法は、米国SOX法404条関連の内部統制制度に相当する法規制を整備し、“財務報告の信頼性” を確保するための仕組みの整備を求めています。


2. 国内の動向

国内の内部統制に関する主な動向を見てみると、次のようになります。

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3. 内部統制とは

内部統制とは、a.業務の有効性及び効率性、b.財務報告の信頼性、c.事業活動に関する法令等の遵守、d.資産の保全の目的が達成されていることの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいいます。
(⇒業務を遂行する中で発生するコンプライアンス違反、不正操作や誤謬といったリスクを低減するための組織的な仕組みのことです。)

内部統制を構成する基本的要素として、a.統制環境、b.リスクの評価と対応、c.統制活動、d.情報と伝達、e.モニタリング、f.ITへの対応があります。
またITについては、統制活動に対する役割によって、“IT業務処理統制” と “IT全般統制” に2つに分けて考えます。


4. 金融商品取引法(日本版SOX法)の内部統制のスキーム

金融商品取引法では、上場企業とその連結子会社に対して次の事項を求めています。

◎経営者が自社の内部統制を整備、その有効性を評価し、その結果(内部統制報告書)を公表する。
◎外部監査人が経営者の報告書を監査し、その結果(内部統制監査報告書)を公表する。

従って、これらの結果を公表するために内部統制を整備して、それを評価する必要があります。
対応の過程で最も時間を要する作業が文書化です。文書化では、「業務フロー図」、「業務記述書」、「リスクコントロールマトリクス(RCM)」を作成し、各業務プロセスに存在するリスクとそのリスクに対する統制活動を明確にします。この3種類の文書の関連性は強く、“3点セット” とも呼ばれます。
内部統制の整備の流れを次に示します。

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5. 内部統制の整備における考慮点

内部統制の整備において、企業の経営トップが考慮すべき点を次に示します。

(1) 対応を前向きに捉え、費用をコストではなく、業務改革のための投資と考えることができるか。
内部統制の整備が、経営効率を高める業務改革の好機であると、前向きに捉えることができるか。
金融商品取引法では、最終的に内部統制報告書で “財務報告の信頼性” を示すことになりますが、内部統制の第一の目的は、“業務の有効性及び効率性” です。
整備に大きな体力、時間、コストがかかりますが、業務を見直し、文書化することで、手続や操作のミス、無理、無駄を排除することができます。業務の標準化や効率化が図れ、コンプライアンスに基づいた活動もできるため、企業価値の向上につなげることが可能です。仕方なく最低限のことだけを実施するという消極的な考え方ではなく、投資として位置付けることでその取組が大きく変わってきます。

(2) プロジェクトの推進に経営トップが参画し、しっかりとした体制を整備できるか。
内部統制の整備を推進するには、体制の整備が大変重要です。経営トップがプロジェクトの先頭に立ち、内部統制の整備が企業価値の向上につながることを全ての部署、全ての社員に説明、納得させて、重要性を認識させなければなりません。
内部統制の基盤を成す組織文化・風土(統制環境)を作り出す上で、経営トップの姿勢、倫理観、それに基づく行動は、極めて大きな要素となります。
実効性ある内部統制環境を整備するためには経営トップが率先して継続的にプロジェクトに参画することが重要になるのです。

(3) 外部の専門家やITツールを上手に活用して対応することができるか。
内部統制の整備では、ITが極めて重要な役割を果たしますが、あくまでも道具の一つであり、ITツールを導入すれば解決するという訳ではないことを認識しなければなりません。
今までにあまり経験のない文書化作業には、ITツールを使用し、外部の専門家のアドバイスを有効に活用して対応することが効果的です。しかし専門家は、文書化の進め方には詳しくても、業務そのものに精通しているわけではありません。ITツールも個々の企業の業務特性に過不足なく作られてはいません。
外部の専門家やITツールを適材適所で使うことは、とても合理的で効果的ですが、あくまでも対応の主体は、各企業にあります。

(4) 法律の適用対象外企業でも対応が必要になる可能性がある。
金融商品取引法の内部統制報告書作成の対象企業は、上場会社とその連結子会社。新会社法の内部統制整備義務の対象は、資本金5億円以上もしくは負債2百億円以上の大会社です。しかしそれ以外の企業であっても、取引先の上場会社から協力を求められることは十分に考えられます。
取引記録が証拠として残るように個々の書面を提出する、業務委託内容に対する点検や内部監査の結果を提示する等、業務の可視化への協力が求められる可能性があります。


6. おわりに

2008年4月以降の新事業年度からの対応スタートに向け、先行して準備に取り組んでいる企業がある中、注目を集めた実施基準案が11月に公表されました。
内部統制の整備には、かなりの体力、時間、費用を投じる企業が多いと予想されますが、この対応が企業にとって真に意味のある、企業価値向上に大きく寄与するものにするために、経営トップが適切な判断と強力なリーダーシップを発揮し、各企業の身の丈に合った対応をすることが求められています。


□平井 哲生(ひらい てつお)
中小企業診断士、ITコーディネータ、システム監査技術者、情報セキュリティアドミニストレータ 他
大手金融グループの情報サービス会社に勤務。
情報セキュリティ監査、ISMS認証取得支援等、情報セキュリティを中心としたコンサルティング業務に従事。

投稿者 info : 17:38