長田 和久
< オフィスの「かんばん方式」について >
かんばん方式=製造業という常識を脱し、事務・開発、サービス業務の現場(オフィス)の改善活動に、かんばん方式を取り入れた「ストア管理」を紹介します。ストア管理とは、トヨタ生産方式の原理・原則を応用した業務改善の手法(松井順一氏の提唱)です。
1.トヨタ生産方式を応用したストア管理
松井順一氏[コンサルソーシング(株) 代表取締役、中小企業診断士]が書かれた、“職場の「かんばん方式」 トヨタ流改善術ストア管理”をもとに、ストア管理を紹介します。
トヨタの生産現場におけるかんばん方式をホワイトカラーの事務現場に適用する「ストア管理」という考え方です。これは、事務作業管理の基点となる作業指示書の置き場所をストアと呼び、このストアによって業務管理を行うものです。
2.ストア管理の概要
ストア管理は、「業務にプロセスがある」「組織管理力が求められる」「人づくりを重視している」という要件を満たす現場でより大きな効果があります。
ストア管理では、作業カードとストアボードを使います。現場グループの業務プロセスを適切な作業単位に分類し、作業カードに起こします。日々の作業カードを改善現場グループのストアボードに張ります。カードは、グループメンバ毎の作業の進行にあわせて、「作業待ち、本日の作業予定、作業中、保留中、作業完了」等の状態欄を移動させます。
作業全体の状況や一人一人の作業を「見える化」することにより、組織管理に必要な調整がやりやすくなります。進行状況から早期に異常を検知し、ムリ・ムダ・ムラを見つけやすくします。グループメンバからの気づきや改善提案が生まれ、作業の平準化ができるようになります。
ストア管理は、各個人のスキルや能力を浮き彫りにし、その向上をはかるとともに、現場全体の状況がみえるようになることによって各自が果たすべき役割を認識するようになり、改善意識を高める人づくりにもつながります。
3.改善活動の進め方
1) 改善ボードを使った改善活動の見える化 - 「目で見る管理」
「改善ボード」とは改善活動において、目で見る管理を行う情報管理ボードであり、以下のような内容を張り出します。
方針と目的、目標、活動体制、管理指標、管理指標グラフ、結果指標、運用手順、改善提案、等
「管理指標」は、目指す姿を「見える化」するものです。「結果指標」は、改善目標の達成具合を示すものです。
例えば、改善目標が“生産性向上20%の場合”、結果指標はその達成状況となり、管理指標は生産性向上のための施策・取組みの状況(例:作業バラツキ幅低減、作業やりなおし回数削減)をはかるものとなります。なお、それぞれの指標は定量的で簡単に測定できるものが望ましい。
2) 改善グループでのミーティング
週会では作業カードの割り振り、改善提案や解決策の検討を行います。毎日の朝会では、作業状況を確認し、作業カードの再割り振りを行います。問題点の抽出と改善提案もボードに張り出します。毎日、改善ボード前で行うスタンディングミーティング(立って行う短時間で効率的な意識あわせ)により、気づきあい、学びあい、改善内容の検証が行われます。
また、改善活動においては、三現主義である「現地」「現物」「現実」に基づき行動する習慣が重要です。
3) 正味作業と非正味作業に分類
ストア管理により、「作業の見える化」ができるようになったら、作業の改善に取り組みます。顧客への価値をもたらす「正味作業」とそうでない「付帯作業」と「ムダ」に分類し、正味作業の拡大と付帯作業の縮小、ムダの削除に常に務めます。「企業は顧客に価値をもたらすことによって、初めて利益を生み出せる」という、ごく当たり前の企業経営の大前提に立って、こうした改善を進めて行きます。
4.改善の基盤づくりは人づくり
改善活動を展開し、推進するためには、「人づくり」が基本です。現場の改善を行う改善リーダーの指導にあたる「改善伝道師」を育てる必要があります。
・他人に成果を出させ、改善を機軸とした管理を実践できる人(改善伝道師)
・組織に目標をつくりだし、動機付けして達成できる人(改善リーダー)
・自ら考え自ら行動できる人(改善メンバ)
改善活動を浸透させていくためには、活動をふりかえり、知恵と学びを共有し、伝承する場を設けます。
改善リーダーは、自グループの現場で現場発表を行い、改善目標の達成状況、改善提案や成果を報告します。
改善伝道師は、マネジメントの知恵を披露する運営発表を行います。他人に成果を出させるマネジメントの知恵が形式知化し、共有されます。
改善活動は、現場主体のボトムアップ的な活動ではありますが、改善成果を出し続け、組織文化として定着するには、トップの「改善」への熱い思いが何より重要です。
□長田 和久(おさだ かずひさ)
中小企業診断士、コンピュータメーカー勤務、テクニカルエンジニア(ネットワーク)