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業種別業界別トピックス 「繊維製造業で進行する空洞化は止まらない」(2007年1月)
今宿 博史

< 繊維製造業で進行する空洞化は止まらない >

 中小零細の企画販売型アパレル企業の多くは、すでに海外(主に中国)に生産拠点を置いてきている。国内産地の製品では、仕入単価の面で競合に勝てないのだ。東日本橋の現金問屋街も韓国や中国からの製品輸入によって存続していると言って過言ではない。繊維の製造業はもはや完全に海外に移転してしまったといえるだろう。川上の大手紡績業や化合繊企業に至っては周知の通り、国内の工場の多くが閉鎖され、ショッピングセンターとして生まれ変わっている。産地を形成していた繊維製造業も、もはや国内での立地は難しく、力のある企業は早くから中国を中心に拠点を移してきた。国内での生産にこだわってきた産地の有力製造業者は体力を弱め、徐々に姿を消しつつある。

 繊維製造業は、元々卸・問屋業を出自とするアパレル企業の下請的体質が色濃く、有力アパレルの生産キャパ・シェア争いの中でアパレル企業に優遇されて業容を拡大してきた。そのためか、余りにも企業としての脆弱さが目立つ。そこへもって、伝統的に通産省(現経産省)の庇護の下に置かれ、保護されることに慣れすぎてきた。何とかなる、してくれるとの安易さが今日の事態を招いたともいえるだろう。

 このままでは、繊維製造業すべてが国内には存在しなくなるのではないか。

○ 理由は、国際競争力無き企業は生き残れない、という経済の原則だ。経産省の保護下にあろうと国際競争力の無い企業が存続できるはずがないのである。公共事業における「談合」が許されないのと同様に、遠からず政府の保護体制が社会的に許されなくなることも予測すべきだ。グローバル・スタンダードこそが21世紀の企業活動の原点でもある。

○ 生き残るためには、海外の繊維製造工場に匹敵するコスト体制を確立すべきだ。海外の事業者と同じ競争下で受注できるだけのコストに徹底的に削ぎ落とすことだ。中国で千円で生産できるものは、日本でも千円で生産できる体質にしない限り生き残れない。

○ 大手アパレル企業や大手流通企業に「メイド・イン・ジャパン」の流れが生まれ始め、大いに歓迎されている。しかし、全く同じものが中国で生産できるとしたら、これら大手企業が何時までも日本の製造業に発注し続けることはない。一時的な「販促イベント」で終わるはずだ。「産地重視」の商社の方針も直ぐ後退する。

繊維製造業の「SPA」(製造直販型)事業の推進や「産地ブランド」育成等に期待すべきではない。これまでに多くの資金や人材が投入されてきた。これらの政策なり方針は決して間違っていない。海外の後進地域との競合にまともに戦っても勝てないから、商品に付加価値を付け、日本商品ならではの差別化を図るべきだ、との考えはまさに正論である。しかし、現状の体質をのこしたままで、ただ表面上を取り繕っただけの改革など成立し得ない。高コストの工場を抱えたままの製造業者が、さらに高コストで運営するSPA事業が成立するはずはない。

繊維製造業各社のトップだけでなく、工場の責任者、工場で働くすべての社員のコスト意識を根底から変えるべきなのだ。いくらトップが危機感を持って改革に取り組んでも企業の持つ風土、受注体質そのものが改革を否定してしまう。「意図し得ざる事態」である。社員の意識など変えることはできない、入れ替えるべきとの認識をトップ自身が持たなくてはならない。生き残るためには、工場を閉鎖し、すべて下請生産にするなどのコスト構造にすべきなのだ。工場を存続させたままで生き残れるほど甘くはない。

コスト競争から逃げてはいけない。この姿勢だ。中国始め後進国からの製品輸入は、すべて日本のアパレルや大手流通企業が日本の市場向けに発注し、生産している商品だ。完全に日本の産地製造業と同じ土俵上の戦いなのだ。同じレベルの商品であれば、コストの安い企業が勝ち残るのに決まっている。付加価値をどう付けようが、差別化しようが、すぐに追いつかれてしまうし、商社マンやバイヤーは付加価値のある日本製のサンプルを抱えて海外を飛び回っている。ただ、「安く作れるところ」を求めて。

繊維製造業は、自ら国際的競合に勝ち残れるコスト構造を確立すべきだ。そのためにはあくまで自助努力が条件である。官庁を含めて、誰かが手を差し伸べてくれることなどあり得ない。

 繊維製造業に求められる人材は、デザイナーやファッション・コーディネイターの存在ではない。付け焼刃は、いたずらに体力を消耗するだけに終わるだろう。生き残りをかけたトップ自身による徹底したコスト削ぎ落とし以外には再生の道はない。

■今宿 博史(いましゅく ひろし)
 中小企業診断士
 マーケティング・コンサルタント・サービス(MCS) イマック 代表
 ファッションビジネス経営コンサルタント
 文化ファッション大学院大学 非常勤講師
 営業改革プロジェクト、人材育成支援、講演・セミナー企画運営など多数
 (社)中小企業診断協会東京支部中央支会 常任理事 研究会部長
 東京支部登録 ファッションビジネス研究会主宰
 中央支会 ファッションビジネス・リデザイン支援マスターコース主宰


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