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専門家コラム 「再生の現場から見えてくるもの」(2007年4月)
村山 賢誌

< 再生の現場から見えてくるもの >

 公的な再生支援に取組ませていただいていますが、企業が再生に至る理由の共通点として、投資の失敗、市場動向の読違えや変化への対応不足などを挙げることができます。その中で返済負担に耐えるのに、資金繰りを円滑にするために採算を度外視して売上を確保するということが行われています。忙しいといっているのに儲かっていないという場合が少なくありません。利益を度外視した売上確保のため仕事をしているからです。

 仕事をして忙しいので会社は調子良いような錯覚にとらわれています。忙しいため仕入れ資金などの資金繰りの必要が出てきます。そして、だんだんと必要な資金が増えてくるのです。「?」と思いながらも資金繰りに追われて忙しく日々を過ごしている経営者が少なくありません。そのうちに、金融機関も支援を渋り始めて、やがて支援も止まり行き詰ってしまうということで再生に進んでしまうのです。(再生に進めることができる場合、苦しさもありますが、それは恵まれていると考えてください。再生にむけた支援を受けられない企業も現実には少なくありません。)

 経営者の中には、利益を確保することができていないということが分かっていながらも、(利益を度外視の受注を)“やめられない”人が少なくありません。それは、(利益をとれない)仕事を止めることで、資金繰りが行き詰ってしまうからです。また、(拡大した)生産体制の縮小ができないという悪循環に陥ってしまい、売上や生産の維持のために仕事を受注し続けなければならなくなってしまいます。それがさらなる資金繰りの悪化と財務体制の悪化をもたらすのです。

 再生に至らないまでも、売上至上主義にとらわれ続ける企業は少なくなく、知らず知らずのうちに経営を悪化させている企業も多いのではと考えられます。

 この対応策として、利益が獲得できているかということを常に確認することが求められます。(データの整理ができていることが前提です。データ整理ができていない場合には、データ整理から始めることが求められます。)事業全体としてどうか、部門ごとにどうか、得意先ごとにどうかという具合に事業を分解していくことで、問題個所を抽出していきます。

 問題個所を抽出し認識することができれば対応策は自ずと決まってきます。急激な対処が難しい場合もありますので、計画的に対処(取引の縮小、停止または販売価格の値上げ交渉)を進めていくと良いと思います。

 このような取組について、単独で行うことは難しい、忙しくて手をつけられないということもあると思います。その場合には、公的な機関による専門家派遣などを利用して、中小企業診断士による事業分析や支援(助言など)がお勧めです。

 まとめとして、利益を確保できない仕事は受注しないということです。もちろん、利益を確保できるようにコスト低減の取組も同時に進めることは言うまでもありません。しかし、コスト低減には限度があります。「言うは易く行うは難しい」のですが、仕事のバランスを見て実行していくことが必要です。


 もう一つの問題として、従業員を大切にしない経営者が多いということが挙げられます。もちろん、意識して大切にしないということではなく、苦しい経営が続く中で結果として従業員を大切にしていないと考えられる状況に至っていることがほとんどです。それは、給与に顕著に現れます。

 中小・零細企業の従業員の多くが、低い給与で頑張っていると痛感させられる場合が少なくありません。余談ですが、経営者の意識や態度(自分はそこそこの報酬を取っている)によっては、他人事ながら、怒りを禁じえないという場合が少なくないのも否定できません。

 少ない給与は、従業員のやる気をなくしていきます。やる気がない従業員の仕事では“質”が落ちていきます。そうすると単純な仕事しか受注できなくなり、それが利益の縮小をもたらすということにつながっていきます。また、他の会社に移ることができる(能力がある、若い)従業員は他社に移っていきます。従業員がいなくなり補充にあたっては良い従業員の雇用は当然見込めません。そうすると、利益を確保できる仕事を受注することは困難になり、企業としての成長や発展は期待できなくなってしまいます。

 この対応策としては、従業員に対して経営状況の情報公開を行うことで、理解を得ることがスタートといえます。利益改善の取組みとともに状況の改善にあたっては、従業員への還元を約束していくことです。

 再生の現場では、売上至上主義と従業員を結果として大切にしないという状況が重なっていることが少なくありません。それが、再生を容易ならざるをなくしている原因ともなっています。

 売上至上主義から利益確保への経営者をはじめとして(特に、営業担当の)従業員の意識を転換していくことが必要です。売上ノルマの見直しを図り、自社得意分野の磨きなおしを進めていくことがポイントと言えるでしょう。

 そして、従業員あってこその会社である、従業員の働きに支えられて経営者としての報酬を得ることができるということを思い描いてください。

 再生、そして再生に至る手前や成長・発展に向けての経営基盤強化にあたっては、上記の取組み転換が重要かつ成功をもたらすポイントであると言えます。

□村山 賢誌
社団法人中小企業診断協会東京支部中央支会理事、ITコーディネータ
創業サポートセンター/起業等支援コンサルタント
地域ブランドアドバイザー


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