石橋政俊
<中小企業の情報化の現状と課題>
パソコンは「生鮮食品」とまでいわれるように、3ヶ月ごとに新製品が出る。携帯で買物もできる時代になった。情報化が身近なものになりつつあるが、中小企業にとってもITの活用なくしては生き残れない時代に入った。今日の情報化経済の特徴は「スピード」と「顧客志向」の実現にあると思われるが、いくつかのデーターから、中小企業の情報化の実態と今後の課題について考える。
<中小企業の情報化の実態>
■ 情報化投資の目的と経営に対する効果(上位6つ)
【目 的】
(1)業務の効率化・迅速化・・・82.6% (2)営業・販売力の強化・・・19.0%
(3)他社との取引上の必要性・・14.4% (4)人件費等一般管理費の削減・・13.5%
(5)組織の簡素化・効率化・・・12.2% (6)調達・在庫コスト削減・・・8.4%
【効 果】
(1)業務の効率化・迅速化・・・82.6% (2)社内経営情報やノウハウの共有化・・29.7%
(3)受発注や決済時間の短縮・・20.6% (4)一般管理費の削減・・・17.2%
(5)顧客満足度の向上・・・13.3% (6)企業の簡素化・効率化・・・13.3%
-出典;総務省「平成17年 通信利用動向調査報告書(企業編)」-
○ 情報化投資の目的は、ほとんどの企業が「業務の効率化・迅速化」を挙げており、またその効果を実感している。特に経理などのルーチン作業でのIT効果が高く、2~3人での作業が1人になったこと、手作業に比べ正確性が増し、また間違いの修正にかける時間が大幅に短縮されたといわれている。
■ 情報基盤の整備状況(上位7つまで)
(1)パソコン導入・・・97.1%
(2)インターネット導入・・・93.9%
(3)電子メール等コミュニケーションの実施・・84.9%
(4)ホームページ開設による情報発信・・・52.3%
(5)情報収集のためのWebページ活用・・・50.3%
(6)社員に対するIT教育・研修・・・46.8%
(7)データベース検索による情報収集・・・35.3%
-出典;「中小企業におけるIT利活用に関する実態調査報告書」平成15年12月
中小企業庁の委託調査 (株)三菱総合研究所-
○ このデータから、パソコン導入、インターネット導入、電子メールと中小企業におけるIT導入は着実に進行し、情報基盤の整備状況はほぼ整ったとみられている。
業務処理関係の情報システムについては、事務の効率化を目的とした「会計管理」(61%)、「販売管理」(58.8%)、「人事管理」(48%)などの導入が進んでいる。
一方、「グループウェアによる事務連絡」(28.7%)、「文書共有」(26.2%)、「モバイルでの業務報告(日報)」(23.1%)などへの対応は、今後の利用拡大が期待されている。
また、IT導入の効果としては、71.3%の企業が「効果がでている」または「どちらかといえば効果がでている」と回答しているが、具体的な効果については、「業務進行の速度」「情報伝達の速度」「意思決定の速度」といったスピードに関する項目、「経営判断の質」「商品・研究開発の質」「販売サービスの質」といった品質に関する項目の割合が高い。しかしながら、売上や利益に貢献したと回答した企業は、2割以下にとどまっており、IT導入が業績に反映されたとする企業はまだ少ない状況である。
■ 電子商取引の実施状況
既に実施済 1~2年内に実施予定 当面実施予定なし 無回答
(1)BtoB(販売) 14.1% 5.3% 55.0% 25.6%
(2)BtoB(購買) 8.4% 5.3% 58.9% 27.4%
(3)BtoC 7.8% 6.0% 65.9% 19.2%
-中小公庫 2005年3月の「中小企業動向調査」の付帯調査-
(註)BtoB(販売):企業向けに販売・受注を行っている
BtoB(購買):企業向けに発注・購買を行っている
BtoC:一般消費者に製品・商品の販売受注を行っている
○ 上の「中小企業におけるIT利活用に関する実態調査報告書」にもあったように、中小企業の情報ツールの導入は進んでいるものの、電子商取引の実施あまり進んでいない。
その理由は何か、「当面実施の予定なし」の企業にその理由を聞くと、BtoB、BtoCの両方で最も多かったのは「そもそも効果がわからない」次いで「対応できる人材がいない」、「セキュリティ面で不安がある」「相手先ごとにシステム導入費用がかかる」の順になっており、これらがボトルネックになっていることがわかる。
<情報化の課題>
中小企業の情報化の課題は人材と資金面での制約である。また、投資してもそれに見合った明確な効果が得られていないのも問題である。中小企業では、社内の人材には制約があり、外部から人材を調達するにしても費用がかかる。さらに投資の失敗による倒産リスクも大企業にくらべて高い。情報化を進めるにあたってのいくつかの留意点を挙げる。
・特に見直しが必要な業務、経営目標達成に必要な重要な業務から段階的にIT化を進める。個別システムごとに仕組みを構築すれば1つひとつの導入コストは、例えばERPパッケージに比べて低く抑えることができる。
・IT化はハードやソフトを導入するだけでなく、いかに活用するかが肝心、その点を明確にしてから投資する。また、ITは経営課題を解決するためのあくまでも手段、過大な期待を持たないことも大切なこころがまえであろう。
・経営トップがリーダーシップを発揮し、プロジェクトに積極的に関与し、ベンダーなど外部人材にまかせっきりにしない。外部専門家を活用するにしても経営とIT双方に通じた人材を選ぶ。推進担当者の育成と社員の意識改革を進めつつ、全社一丸となって情報化に取り組む。
・アウトソーシングや、初期投資を抑えられるASPサービスの活用、またパソコンに比べ、操作が簡単でコスト面で有利な携帯端末の活用も今後は有効であろう。
□石橋政俊(いしばしまさとし) (JZJ05016@nifty.com)
ビーエスマネジメント代表
中小企業診断士、ITコーデイネータ