田島 悟
< セル生産導入時のポイント >
雑誌や新聞記事等でセル生産によってコスト削減を行った事例が紹介されると、誤解をする人たちが多い。ベルトコンベアを撤去すればコストダウンにつながる、1人生産方式を行うとコストダウンにつながる等の誤解である。
1970年代後半から80年代にトヨタ生産方式(JIT生産方式)が脚光を浴び始めた頃、カンバン方式という形式だけを真似て、実質的な効果があまり出ない企業が少なからずあった。十分な効果が出せなかった企業には、後工程引取り方式などの本質を追求せずに表面的な真似を行った企業が多かったように思う。
同様にセル生産も、十分な効果を出すためには、1人生産等の表面的な部分だけに着目するのではなく、トータル生産システムとして考えることが必要である。言い換えれば、組立部門だけでなく生産管理部門、生産技術部門、事業企画部門等の協力による総合的な活動が必要であるといえる。
以下、セル生産を導入する場合のポイントについて、述べてみたい。
(1) 部品の供給方式:
セル生産を導入すると、1部品の使用箇所が多くなる。また、セルごとに進度管理を厳密に行うことが難しくなるため、自動倉庫による部品供給は適切でない。そのため、部品置き場のアドレスや部品仕掛量を明確化したうえでの部品の直置きが適切である。また、部品供給は生産管理部門ではなく、組立部門の部品供給者(一般にミズスマシと呼ばれる場合が多い)が行うのが一般的である。
(2) 治工具・生産設備等の小型化・低価格化:
セル生産を実施すると、ベルトコンベアで組立を行っていた時と比べて、治工具や生産設備の数が増える。そのため、治工具・生産設備等の小型化・低価格化を行わないと、コストアップ要因となってしまう。この事態を解消するためには、社内横断的なプロジェクトチームを作り、治工具・生産設備等の小型化・低価格化を行う必要がある。その際によく使われるのが、「からくり改善」である。これは、重力や慣性力等を活用し、電力やモーター等を極力排除して治工具等を作る活動である。
(3) 発注点方式:
セル生産方式と最もよくマッチする生産計画は発注点方式といわれている。これは、製品倉庫の在庫量を組立部門が把握して、製品倉庫から減った分だけを組立部門が作る方式である。この方式を適用することによって、製品仕掛りが減少でき、外部倉庫も減り、市場の需要変動にタイムリーに対応できる。
この方式を更に発展させると、主要な販売店と情報共有することにより、販売店の在庫量までも工場の組立部門が把握し、販売店から顧客が買った分だけを工場の組立課が生産するという究極のサプライ・チェーン・マネジメントを実現することもできる。
(4) 手作りによる作業台や部品箱の導入:
作業台や部品箱を考える場合、セル生産導入後は一般的に市販のものを購入するのではなく、アルミパイプと強化プラスチック板を使って、手作りでそれぞれの作業や部品の大きさに合ったものを作るのが一般的である。その際は、生産技術部門のみが設計し製作するのではなく、できるだけ組立部門のスタッフや作業者が設計し製作することが望ましい。作業者が作業台や部品箱を創意工夫して作ることにより、ものづくりの楽しさや喜びを堪能でき、モチベーションも上がる場合が多い。
(5) 組立作業者への改善教育:
セル生産は導入するまでが重要なのではなく、導入後の作業者による不断の改善努力がむしろ重要であるといえる。改善活動を行う場合は、部品を取る際に手を伸ばす距離を短縮する、作業者の歩行の歩数を削減する等のシンプルな考え方が効果を生みやすい。また、改善を行った場合の改善効果金額が即時に算出できるようなしくみ(計算式)を作っておくと、改善意欲が増し、目標も立てやすい。
(6) 納入管理版等による「見える管理」の実現:
MRP等の生産管理システムを導入している場合、ややもすると、「見える管理」を実施しにくい。例えば部品納入トラックに関して、どの部品メーカーのトラックが何時何分に到着してどれだけの分量の部品を納入するか、また納入遅延している部品は何なのかが、一目でわかりにくい。これを「見える化」する場合、時間帯ごとにどの部品メーカーのトラックが到着するかを納入管理板によって管理すると、トラックが遅延しているかどうかが一目でわかり即座の対応が可能となり、管理レベルが向上する。
□田島悟(たじまさとる)
中小業診断士
中小企業診断協会東京支部中央支会理事