社団法人中小企業診断協会東京支部 中央支会
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業種別業界別トピックス 「事業承継と株式贈与の留意点」(2007年5月)
糸賀 智子

< 事業承継と株式贈与の留意点 >

 団塊世代の退職が始まる『2007年問題』。同時に経営者の皆様には、「事業承継も大きな問題」と考えている方も多いと思います。自身が親族から事業承継する、親族に事業承継させる、いずれにせよとても大きな問題です。『生涯現役』は少子高齢社会に対し有効なことではありますが、何の準備もなく、突然代表者が死亡してしまうことほど、「後に残された者に負担をかけることはない」ということも考慮しておくべきではないかと思われます。

 すこし古いデータですが、2003年度の(株)東京商工リサーチの調査では、中小企業はほとんどが「同族会社」であるため『親族内承継』は未だ6割に上ります。『相続』の問題も含め、「永遠の命はない」ということを自覚し、承継する価値ある事業を営んでいる事業主の皆様は、少しずつ準備を進めておくことが必要と考えます。

1. 相続時精算課税制度の特例
 65歳以上の親から20歳以上の子への贈与に対し、2500万円までが相続開始までの贈与税が非課税枠となる制度です。平成19年度改正税法により、一定要件を満たす場合、取引相場のない株式等の贈与を受ける場合の相続時精算課税の特例が創設されました。


  【特例の概要】
  推定相続人の一人が平成19年1月1日~平成20年12月31日の間に、取引相場のない
  株式等の贈与を受ける場合、以下の要件を満たす場合に限り、60歳以上の親からの贈与
  についても相続時精算課税制度の適用を可能とし、非課税枠を3000万円とします。

   (1)当該会社の発行済み株式等の総額(相続税評価ベース)が20億円未満であること
   (2)以下のすべての要件を、この特例選択時から4年経過時点で満たしていること
    イ)受贈者が発行済み株式等の総額の50%超を所有し、かつ議決権の50%超を
      有していること
    ロ)受贈者が代表者として、当該会社の経営に従事していること


 この特例を選択した場合、将来の相続開始時点でも贈与時の時価で自社株は評価されます。前回わたしの欄で取り上げた「経営者のみなし退職」でみなし退職金を支給する、また、記念配当するなど、純資産額を減少させることによる自社株評価額引き下げ策実施後、そのタイミングで所有する自社株を後継者に贈与・移転します。

 実際の相続開始時点でも贈与時の株価評価ですので、相続財産は低めに抑えらます。もちろん、贈与後、会社の業績が急激に悪化し、相続時の株価のほうが安くなっているリスクもありますので、注意が必要です。

2. 新会社法による自社株買取
 昨年の新会社法施行に伴い、非公開会社の自社株を取り扱う場合に変化した点があります。すでに子供たちに株を分割した、創業時の資金調達のために、親族や友人に株を持ってもらった、などの場合でも、後継者に株式を集中させていくことも可能となりました。


  (1)自己株式の取得手続きの柔軟化
   「臨時」株主総会で自己株式取得決議が可能となりました。これまでのように「定時」株主
   総会決議の必要はないということです。

  (2)売主追加請求権を持たない
   会社が自社株を買い取る際、他の株主は売主追加請求権を持たないため、後継者のみから
   自社株を買取ることが可能となりました。会社が後継者から自社株を買い取り金庫株として
   持つことにより、後継者が相続税納税資金を調達できます。 

  (3)一般株主への株式売り渡し請求
   定款に定めることにより、後継者以外の一般株主が相続により株式を取得した場合、株式売り
   渡し請求が可能となりました。経営権に不安を与えるなど、株を持ってほしくない株主からの
   自社株買取や、株の分散を防ぐことが容易になりました。(定款変更は一定条件が必要です)


 しかし、相続財産のほとんどが株と不動産というような場合も少なくありません。また、株を買い取りたくても後継者や会社にその資金がなければ、経営を安定させるための株の集中も、後継者の持つ株を会社が買取ることも、相続税の納税資金を得ることもできません。相続財産の売却が難しい場合もあり、資金をどのように調達するかは中小企業経営者にとって大きな課題です。

 このような場合に備えて、生命保険を活用することも有効です。死亡保険金として、「現金」が会社や後継者の手元に入ることにより、上記のさまざまな対応が可能になります。また、後継者以外の法定相続人に対する代償分割(株や不動産をすべて後継者が相続し、代替として保険金を相続財産として渡す)なども可能となります。

  (1)会社を契約者、経営者を被保険者とし、保険料を損金(経費)として参入できる生命保険に
   加入し、万一の死亡保険金受け取りを会社とします。また、解約返戻金のある保険を活用し
   て、退職金原資を確保することもできます。
  (2)経営者が契約者、被保険者となり、後継者(息子)を死亡保険金受取人とします。
  (3)経営者が契約者、被保険者となり、後継者以外の法定相続人を死亡保険金受取人とします。

 平成17年度の相続に関する訴訟は、116,855件にも上り、近年急激に増加しています。
「骨肉の争い」を回避し、ここまで育てた会社をさらに発展させられるよう、早めに準備し、後継の憂いなく、安心して老後を楽しみましょう♪というご提案でした。


□糸賀智子
中小企業診断士・ファイナンシャルアドバイザー


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