岩崎 明
< 取扱荷物の季節変動を吸収して物流効率を向上 >
1.物流効率化と単独企業の限界
トラック物流業界は環境規制の強化と燃料費の高騰で利益を出し難くなっているばかりか、従業員の確保にも苦労している。個々の企業はそれなりの経営努力をしているものの、単独企業では限界を感じている企業も多いのではなかろうか。
かといって、傭車のような形でなく、同業者と荷物を交換するという事例も少ない。その理由は、トラック運送業の場合「発」の荷物に合わせて、トラックを準備していることが多く、他の荷物を運びたくとも車両の手配がつかないことが多いからである。
今回の事例は、青果物を運ぶA社と燃料輸送のB社が、乗務員を交換することによって物流効率化を果たした事例である。この前提には、筆者が両社の経営顧問であり、お互いの困っていることを理解していたことがある。
両社にとって、閑散期の荷物開発は車両編成上かなり困難な課題であったが、それ以上に課題となっていたのが、繁忙期の季節従業員の確保であった。
2.取扱荷物の季節変動
青果物を主体とするA社の場合、夏季が繁忙期となる。車両はバン形式の冷凍・冷蔵車両が大部分で、冬季は遊休車両も出る状態である。現在では倉庫事業もスタートしたので、かつてのような繁閑の差は少なくなってきたが、それでも繁忙期における人材の確保は安全運行の上からも重要課題であった。
一方燃料輸送を業務とするB社の場合、冬季が繁忙期となる。車両はいわゆるタンクローリー車であり、一般荷物を積載することは不可能である。B社では、夏季の閑散期には運送以外の業務を開発しなければならず、逆に冬季に季節従業員を大量に採用することが通例であった。
両社の悩みを知っていた筆者は、何とか両社の間で物流効率化の方策が無いだろうかと考えていた。「新連携」の範疇には入らないが、お互いが良くなる方法があるはずだと考えていたところ、車両の交換でなく、人間の交換をすればいいことに気がついた。
夏季にはB社からA社へ、冬季にはA社からB社へ数名の従業員が出向する。一社だけで考えれば、2倍の人数変動になり荷物の季節変動に対応するには極めて都合のいい方法であることが分かった。
3.企業文化が似ている会社を選ぶ
結果的には単純な解決策であるが、これまでこの業界であまり聞いたことがないのは、従業員教育に差があり、互いの企業文化になじまないことが多いからである。
今回のケースがそれなりの成果を上げたのは、両社が筆者の関与先であり、小集団活動まで行なって、現場の力で物流品質を上げていくという企業文化を持っていたからである。
この前提となる社員教育がしっかり出来ていないと、単純に従業員を交換すればいいということにはならない。
技術の問題もある。A社は青果物を扱っているため、手積み・手降ろしの業務がある。B社はタンクローリー車であるから、手作業はない。このギャップを埋めるための教育が必要となる。一方で、B社は危険物を扱っているため、それなりの資格を持った運転手でないと話にならない。たまたまA社の従業員で、危険物取扱の資格を持っている者がかなりいたのでこの問題もクリアできた。
4.お互いの経済性を考える
実務的にはクリアできる準備ができたとしても、最後は経営者の決断が必要である。それは、荷主からの物流品質に関する要求が急速に高まっているためで、この仕組みを採用することで、品質が低下したのでは何にもならないからである。
この問題の解決のためには、出向する運転手は出向した側の安全教育を受けることを義務付けた。取り扱う荷物が急に変化するので、戸惑うことも多かったが、それなりの才能のある従業員を選出してあったので、かえって出向先の従業員に刺激を与えることにもなった。
もう一つは経済性の問題である。お互いが出向社員からは多くの利益を期待しないという姿勢がないとこの提携はうまくいかない。その点両社が物流品質を落すことなく、季節変動を吸収するという当初の目的を厳守してくれたので、この提携はうまくいったものと考えられる。
5.半年ごとの見直し
経営環境は日々変わっていく。特に現在は流通が大変化している時代である。A社もB社もその取り巻く環境に合わせて、会社の運営組織を変えている。特に、トラック物流業においては、会社の業績に直結するのが荷物編成である。
会社の設立以来この荷物を扱ってきたからという発想では、現在の流通の変化に対応できない。その地域においてどのような荷物が動くのか。どのように荷物・人・車の組み合わせを変えていけばいいのか。どのように従業員教育をしていけばよいのかを常に考えていく必要がある。
A社もB社も今回の成功に満足することなく、「他社の困った問題を解決する」を考えていると、いつの間にか自社の困った問題も解決されているかもしれない。
■岩崎 明(いわさき あきら)
株式会社ソウケイ・ハイネット 代表取締役社長
中小企業診断協会 東京支部中央支会理事
経営革新及び情報システム改善コンサルティング
経営再建コンサルティング
著書「幸福企業を作る情報管理」「トラック物流」「トラック経営革新」「トラック環境経営」
「共生共益を実現する人づくりの経営」他多数
連絡先 株式会社ソウケイ・ハイネット
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