田村 雅司
< どうしたら全社員がリーダーシップを身につけることができるか >
リーダーシップは職場の長にだけ求められる能力ではなく、全員に必要とされる能力といえます。なぜかというと、職場の構成員一人ひとりが1階級、2階級上の視点をもつことが業績向上のために大変重要だからです。現場の社員が上長やさらにその上の層としてのものの見方ができれば、必然的に組織目標に沿った行動をとれるようになるので、社員どうしのベクトルが合い、全体ではたいへん大きな力となるに違いありません。このことに気がついた企業が多くなってきたせいか、最近リーダーシップを身につけさせる教育研修が増えているようです。
このコラムの読者ならとうにご承知と思いますが、職場の長に求められる行動はたった一種類のモデルがあるわけではありません。時に強権的な行動が求められる場合もあれば、メンバーの意見を充分に聴き、意思決定に際しては意見を求める民主的な関わり方が適しているとされる場合もあります。それぞれ職場のおかれた状況によってどのような行動をとればよいかが変わってくるわけです。
リーダーシップ行動を促進するための方法としてはどのようなことを行えばよいでしょうか。いわゆるリーダーシップ理論を紹介することも必要でしょう。すぐれたリーダーとは生まれつきのものであるという資質論、課題志向と人間関係志向とに分ける行動論そして部下の成熟度に応じて異なった働きかけを行う条件適合理論というような、主要な考え方を紹介することはたいへん効果的です。なぜならそれらの理論を学ぶことによって、果たして自分はどのような行動をとればよいのだろうかということが頭で理解できるからです。
ここで重要なことはあくまでも「頭で理解できる」ということです。
すなわち、著名な心理学者、行動科学者等の理論をたくさん知っていればすぐれたリーダーになるという保証は何もありません。いくらゴルフのスイング方法を本で勉強してもそれだけでホールインワンを実現することができないことは容易に想像できるでしょう。
リーダーシップ研修を行うと、「理屈はわかった。しかし私はどうしてもリーダーシップをもつことはできない。グループをまとめることはできない。」と自己否定に陥ってしまう人が必ずいます。
これらの人々にリーダーシップをもってもらうためにはどうしたらよいでしょうか。
ひとつの方法としてアサーティブ行動をとらせるように仕向けることが考えられます。アサーティブ・トレーニングとは自己表現訓練と訳され、自身をもって自分の意見や主張を表現できるようにする訓練方法だと言われています。これは単に表現実習を行い訓練するだけでなく、自分自身のありのままの姿を肯定した上で、自分の置かれたシチュエーションでどのような行動をとればよいのかを考えてもらうようにします。単に強くなることを奨励するのではなく、自分の行動の背景を深く考察し、ありのままの自分を出せるようにするところがポイントです。
そうして組織全員がアサーティブな行動をおこせるようになれば議論も活発化し、組織の成熟度も高まり、ひいては業績向上に結びつくことが期待されます。
この研究はまだまだ変化を遂げることが予想されます。最近はいわゆる強いイメージではなく、サーバントリーダーシップ(部下のために奉仕をする)という概念も強調されてきたり、変革者としての役割が求められたりとこれからも研究が進むでしょう。どうか固定化されたイメージにたよるのではなく、個人個人の特性にあったリーダーシップが発揮できる企業風土にしていただきたいものです。
以上
□田村 雅司
中小企業診断協会 東京支部中央支会理事
日本ファシリティマネジメント推進協会準会員
ファシリティマネジャーとして知識創造型ワークプレイスづくりに従事