千葉 清二
< 中小会社における内部統制 >
最近話題となっている内部統制について混乱があるように感じられる。
いわゆるJSOX法(金融商品取引法)における内部統制は、上場会社等に適用されるものであり、しかも財務報告に関して、経営者による評価・内部統制報告書の作成と監査人による監査証明の義務化を定めたものである。
これに対して会社法における内部統制(いわゆる内部統制システム)はすべての会社に適用されるものである。最近の企業不祥事の多発を契機にコンプライアンス体制とリスク管理体制の強化の必要性から内部統制システムの整備が要請されることになった。
会社法では、「取締役に対し、取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制、その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」を内部統制システムと定義し、その整備を取締役会の専決事項としている。そして大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の会社、これ以外の会社を中小会社と呼ぶ)及び委員会設置会社に対し内部統制システムの策定と事業報告での開示を義務付けている。また子会社を有する大会社の場合、企業集団における業務の適正を確保するための体制の整備が求められているため、それらの子会社は中小会社であっても企業集団が採用する内部統制システムの基本方針に従った、内部統制システムを構築することが必要になる。
これらの委員会設置会社や大会社の子会社である株式会社を除けば、中小会社においては、内部統制システムの構築を明文上義務付ける規程はない。しかしながら取締役には「法令及び定款ならびに株主総会の決議を遵守し、株式会社のために忠実にその職務を行わなければならない」という忠実義務があり、コンプライアンス体制とリスク管理体制の整備は当然求められる。そのため、大会社に準じた内部統制システムの整備が求められことになる。内部統制システムは、株式会社の規模、事業の性質、機関設計その他、株式会社の特性等を総合的に勘案して、取締役が必要かつ最適と考える水準で整備すべきものである。
内部統制システムの基本的な枠組みは大会社であっても中小会社であっても異にするものではない。そのため、大会社の基本的な枠組みを参考に、費用対効果も勘案しながら自社に適したシステムの構築が必要となる。
◇中小会社が策定するべき内部統制システムの基本方針の参考例
会社法施行規則100条を参考に中小会社が策定するにあたって採用する内部統制の基本方針として下記の事項が考えられる。
(1) 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制(重要文書の整備・検証等)
(2) 損失の危機の管理に関する規程その他の体制(リスク管理規程の整備・検証等)
(3) 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制(取締役会規程、
組織規程、職務分掌・決裁規程の整備・検証等)
(4) 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
(コンプライアンス規程の整備・検証等)
監査役設置会社の場合は、次の事項の整備も必要となる。
(5) 取締役及び使用人が監査役に報告するための体制、その他監査役への報告に関する体制
(重要会議での決議事項、内部通報情報、内部監査状況等、監査役に対する報告体勢と
報告すべき事項の決定等)
(6) その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制
(監査役の職務分担、監査役と代表取締役との定期的な情報交換等)
今後、中小会社といえども取引先等の会社から内部統制システムの基本方針が策定されているか否か確認を求められることが予想される。
□千葉 清二
中小企業診断協会 東京支部中央支会理事
NPO法人ちゅうおう経営支援理事
(株)ラクーン(東証マザース)常勤監査役