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専門家コラム 「キャッシュ・フロー表の作り方」(2007年10月)
江戸繁一

< キャッシュ・フロー表の作り方 >

 中小企業でキャッシュ・フロー経営を実践できるキャッシュ・フロー表がある。キャッシュ・フロー表は
結果ではなく計画である。表に基づいて戦略課題を明確化し、価値観を共有することで会社挙げての
取り組みが可能となる。

1.キャッシュ・フロー経営とキャッシュ・フロー表について

 (1)キャッシュ・フロー経営とは、本業からキャッシュを生み出し、将来の発展のための設備投資
   や借入金の返済による財務の健全化、配当金支払、自己株取得の株主還元などにキャッシュ
   を有効に活用することをいう。そのツールとなるのがキャッシュ・フロー計算書(表)である。

 (2)キャッシュ・フローは現金主義、一方貸借対照表、損益計算書は発生主義で作成され、取引
   の実態に合わせて収益や費用を計上する。従って、利益(損失)と現金の増減は必ずしも一致
   しない。
    このように、利益は会計のルールにのっとって算出されるものであるところから、本当の儲け
   が見えてくるキャッシュ・フロー計算書(表)が、今日企業、金融機関で重視されている。

 (3)中小企業においては、キャッシュの増減は単なる結果に過ぎないとか、キャッシュ・フローの
   管理の手立てがわからないという声をよく耳にし、まだまだキャッシュ・フローを研究する余地
   がある。

    そこでキャッシュ・フロー経営実践のために活用されているキャッシュ・フロー計算書(表)と
   してK社の例を紹介してみたい。キャッシュ・フロー表を経営の軸に据え、役割分担を決めて、
   会社挙げてその計画達成に向けて取り組んでいる。

2.K社のキャッシュ・フロー表

K-cash.bmp


3.キャッシュ・フロー表について

 (1)資金運用表をベースにして3つの部分から構成される。(資金の源泉=調達、使途=運用)

  ア.基礎資金収支(固定面)
   ・経営の戦略的意思決定として重要。
   ・管理可能なもの。

  イ.運転資金収支(流動面)
   ・業種・業態によって、管理の難易度が異なる。K社の場合、期末日の振れが大きく、
    売上回収の促進や在庫を削減することを除いては実質的に管理不可能。
   ・なお、一般論として、現金残高を操作するために、意図的に売上回収を遅らせたり、
    支払を繰り延べすれば、回転期間(収支ズレ)に変化が起こり、金融機関等から合理的な
    説明を求められる。

  ウ.総合収支(a+b)
   ・いわゆる「フリー・キャッシュ・フロー」と呼ばれるものに相当する。
   ・K社は、これを主として短期借入金の返済(約定外)に使っている。

 (2)今日的課題としては、ウ.総合収支 を最大にすること。


4.K社の考え方について

 (1)K社は合弁新社として、総資産の圧縮、含み損の削減、有利子負債の縮減等をコンセプトに
   してきた。
 (2)(X+1)期計画をほぼ予定通り達成し、X期比総資産-5.0%、有利子負債-25.4%を
  実現した。翌期以降もこうしたキャッシュ・フロー表をキャッシュ・フロー経営の羅針盤として価値
  を共有している。

5.まとめ

 (1)K社のようなキャッシュ・フロー表を使うことによって解決すべき課題が明らかになってくる。
  例えば、一定の現金残高を維持しつつ、巨額のイノベーションを行うのに際して、利益増か、
  資産売却か、運転資金収支の改善によるのか、またどのような組み合わせにすべきかが明ら
  かになる。

 (2)このキャッシュ・フロー表は社長が頭の中で描いている計画そのものが具現化されたもの
  である。貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つの相互関係を利用した観
  点からも実践的である。項目を組み替えれば、簡単に営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・
  フロー、財務キャッシュ・フローの3つが作成可能となるメリットがある。


■江戸繁一
中小企業診断士。1級販売士。専門分野 経営計画、企業再編等。


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