大脇ひと美
< 人材派遣業の免許や届出を取りたい! >
【質問】 取引先から派遣業の免許を取らないと今後は取引できないと言われました。うちは、派遣業者ではありませんし、そんなものが取れるのでしょうか。
【回答】 最近、思わぬ業種の事業主様から「派遣の許可を取りたい(取引先に取らせたい)」とご相談を頂くことが多くなっています。いわゆる派遣会社と言われる会社ではなく、テレビ番組制作業、建設業、ソフトウェア開発業など様々な業種の会社からです。
理由として考えられるのは、介護関連で問題になった大手派遣会社が偽装派遣で摘発されるなど、厚生労働省の指導が厳しくなってきていることや、コンプライアンスを重視する取引先からの要請などがありそうです。また、1年しか派遣が認められなかった製造業派遣が、平成19年3月から3年の受入を認められるようになったこともあげられるでしょう。そこで、人材派遣業の免許・届出の実際と注意点について、ポイントをまとめます。
● 派遣には2種類あります
派遣業とは、自社の雇用する労働者を、他人の指揮命令下で働かせることを業として行うというものです。派遣の仕事がある期間中のみ雇用契約を結び、登録しているスタッフを、派遣先で就労させるのを一般派遣、自社の雇用する常用労働者を、派遣するのを特定派遣といいます。一般派遣の場合は、厚生労働大臣の許可が必要ですが、特定派遣は若干要件が緩く届出をするだけで派遣業をすることが出来ます。
ただし、許可・届出をしても港湾運送、建設作業、警備業務、一部の医療関係業務に労働者を派遣することは出来ません。
● 派遣と請負 <注意しなければいけない状況>
派遣の免許又は届出をしていなければ、派遣の形態で労働者を働かせてはいけません。業務請負契約であっても、実態が派遣とみなされると、無許可で派遣をやっていることになってしまうのです。
例えば・・・ 製造現場で下請企業の社員に発注企業の社員が指示するのは派遣とみなされます。発注企業の社員と下請企業の社員が同じ場所で混在して作業してはいけないのです。始業時間や終業時間の管理、残業の指示、勤怠管理を行ってはいけません。
● 許可を申請するためには
以下の条件の全てを満たす必要があります。
1.特定企業への派遣だけを目的としていないこと
2.雇用管理を適正に行うこと
3.個人情報を適正に管理するための措置が講じられていること
4.財務的にしっかりしていること
・純資産(資産-負債)が1000万円以上あること
・純資産の7倍以上の負債がないこと
・現金・預金が800万円以上あること
5.組織的にしっかりしていること
・登録者数に応じた職員が配置されていること
・派遣元責任者を置くこと
6.事務所が適正なものであること
・風俗街でない場所に20㎡以上の事務所
・プライバシーや個人情報を保護できるパーテーションや鍵付きロッカーがあること
● 取得した後は?
派遣元管理台帳や契約書など、様々な管理帳簿を整備しなければならず、管理の手間がかかるようになります。雇用主であれば派遣でなくとも当然ですが、社会保険に加入させなければなりません。また、厚生労働省の監督下に置かれますので、毎年、事業報告を出さなければなりません。
● 許可・届出を取るべきか
管理の手間が増えたり、社会保険料負担の増加、資金や事務所の要件などで派遣業の申請を躊躇される事業所様も多いでしょう。しかし、無許可・無届で事業を行っているのがバレて、指導したにもかかわらず改善しない悪質とみなされると、派遣業法違反で業務停止命令や起訴されてしまうこともあります。
現政権は、再チャレンジをスローガンに掲げ、ワーキングプアといった雇用条件の劣悪な労働者の救済を政策としています。コンプライアンスを守り、きちんと雇用管理を行っていかないと、将来的に労働者も集まらない、事業の継続も難しくなるといった傾向になってゆくと思われます。
□大脇ひと美(おおわき ひとみ)
◎ 中小企業診断士、社会保険労務士、行政書士
(社) 中小企業診断協会東京支部中央支会理事(業務推進委員会 副委員長)
(有)叶夢 クライアントサービス事務所 所長