社団法人中小企業診断協会東京支部 中央支会
Search
Mail Magazine
詳しくはこちら
グローバル・ウインド [第7回] インドネシアの近況報告(後編) (2008年1月)

Global Wind (グローバル・ウインド)
[第7回] インドネシアの近況報告(後編)

井上義博

中央支会

前編へ

(3)政治・経済の安定;
 インドネシアは第二次世界大戦中の日本支配およびそれ以前の宗主国オランダから1949年に正式に独立を確保した。その後1998年まで、スカルノ・スハルトというカリスマ性をもった二人の大統領が独裁的に国を統治。1997年7月タイに始まったいわゆるアジア通貨危機はインドネシアにも伝播し1998年5月の政変を引き起こし、その後2004年10月のユドヨノ大統領誕生までの6年間に実に大統領が4人代わると言う政治混乱をもたらした。
 これは、スハルト政権が30年を超え、いわゆるファミリー・ビジネスといわれたように大統領一族およびそれにつながる政商が経済利権を独占し政治の表舞台にまで登場するという末期的症状の中でバブル的経済繁栄を謳歌していたインドネシアを通貨危機が襲い、為替の暴落→政府・銀行・民間企業の債務不履行→物価上昇・失業等による民生不安→政権への不満爆発という道筋をたどったものである。
 スハルトの30年ないしその前のスカルノ独裁時代を加えて40年の長きにわたり良くも悪くも強いリーダーシップを持ったカリスマ大統領の箍が外れた政治を引き継いだバビビ・ワヒド・メガワティの3人大統領は、報道の自由を得たメディアの注目の中で民主化・地方分権を推し進めたものの、民衆の要求を満たしきれぬまま再選されぬか任期を全うできず次々と退陣。

 resize0021.jpg
 大統領宮殿。次の主は誰か?

 その後を受け2004年史上初の直接選挙で選ばれたのがユドヨノ大統領である。政権発足当初のスマトラ沖地震による混乱や経済不調を乗り切り、2年目以降インフレの沈静・為替の安定・金利の低下・外貨準備の増加・5%を超える経済成長の持続というように、マクロ経済指標は好調に推移している。
ユドヨノ大統領は国軍出身、ジャワ出身、イスラム教徒という俗に言われるインドネシア大統領になる要件をすべて備えた久々の大統領であり、本格政権の呼び声が高い。清廉・篤実なイメージと共に今も高い国民的人気を保っている。
 課題は2009年7月に予定されている次期大統領選挙であり、すでに有力政治家・政党間で大統領選挙候補擁立に向けた駆け引きが始まっており、連日現地新聞を賑わしている。今後ますます政党間の合従連衡、有力政治家間の自薦・他薦のボルテージが上がっていくが、最終的にはユドヨノ再選の方向に収束してゆくものと予想する。

 政治・経済危機から10年。言論・報道の自由、中央政府統制の緩和・地方自治体への権限委譲、東ティモールの独立に代表される少数民族の自治要求、大統領・地方自治体首長の直接選挙、汚職撲滅委員会など官民での各種監視機関の設立、等々自由化・民主化が大いに進んだが、ここに来て食傷気味、行き過ぎによる逆効果が指摘されているのも事実。
 スカルノ・スハルト強権政治から解放され、その反動に揺れた10年。強いリーダーシップを持つ政治家とその下での秩序の再構築期待論が頭をもたげ、もうそろそろ中庸に向かって舵取りをするリーダーが必要だという意見の説得力は十分あると感じる。それをできると確信させる力を持っているのは、今のところ、ユドヨノ氏以外にはいないように思われる。
 日本の敗戦を受けて独立を宣言した英雄スカルノ氏でもその後の混乱を治めて政権を掌握するまで10年を要していることを考えると、スハルト体制崩壊後10年を経過する今インドネシアが再び安定した歩みを始めたと思いたい。

(4)希望的観測;
 1998年のスハルト政権崩壊後から始まった政治の民主化・分権化と経済・社会の自由化の流れはもはや元に戻ることはなく、10年に及ぶ政治・経済の迷走から抜け出しこれから収束の方向に向かう。そして、2009年にユドヨノ大統領が再選され、政治的な安定の下で経済が緩やかに成長を続け、アジアの安定勢力として日米の頼れるパートナーとしての地位を確保する。というのが、ズバリ私の見通しである。

(5)最後に:
 インドネシアは日本のおかげで独立できたと言ってくれる大の親日国。1990年代以降両国とも調子がおかしくなってしまったが、インドネシアはユドヨノ大統領の下でしっかりした歩みを開始したようだ。日本も政権がかわり、日本の東南アジア外交の基本方針を策定した福田元首相の息子さんで日本インドネシア協会会長でもあった福田康夫氏が首相に就任。新たな日イ関係の始まりが期待できる。当分インドネシアを離れることになろうが、親インドネシア人としてこの国を見つめてゆきたいと思う。

 resize0079.jpg
 町の真ん中にそびえる独立記念塔。


Copyright All rights reserved (C)1997-2010 社団法人中小企業診断協会東京支部中央支会
このページのトップへ