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専門家コラム 「効果的な説得の方法」(2008年3月)
藤﨑 学

 人を説得するということは、一筋縄ではいかない難しい作業です。特に仕事はできるが、会社の方針や目標に素直に従わない社員の扱いには頭を悩ますことが多いのではないでしょうか。経験や腕が社員より勝り、有無を言わさず自分に従わせることができれば苦労はありません。しかし、相手のほうがベテランで腕前が上の場合は、一層困難になります。こうした社員には一方的に自分の考えを押し付けても、相手の納得は得られません。かといって問題を抱えた社員を放置もできません。このようなお悩みを経営の前線では日常的にお持ちではないでしょうか。人の説得は、理と情の両面からアプローチしないと上手く行かないと思います。つまり、理性に訴えて合理的な結論へ導く問題解決手法によるアプローチと相手の感情に配慮して傾聴のスキルを駆使するアプローチの両方です。説得のための2つ手法について、詳しくご紹介します。

1.問題解決のアプローチ
 問題解決のステップは、通常は次の段階を踏みます。「問題の発見→問題の特定と構造化→原因究明→解決策の策定→対策の実行」です。まずは問題解決の基本ステップを理解してください。その上で、筋の通った説得に役立ててください。

1)問題とは
 そもそも問題とはどういうことでしょうか。問題を図で表すと下図のようになります。つまり、問題とは、あるべき姿と現状のギャップということです。

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2)問題を見つける
 問題の発見は、常に問題意識を持っていないとできません。問題意識とは問題が顕在化する前に発生の可能性を感じ取る能力ともいわれます。見えない問題を扱ったり、問題を形成する時にこの言葉は用いられます。いずれにしろ、あるべき姿と現状を対比し、問題を俯瞰的に把握する中から的確な問題解決の糸口を見つけることになります。

3)問題の構造化
 問題を特定し、その構造を明らかにするためには、問題の全体像を体系的に把握することが必要です。そのためには、どういうインプット(手段)があって、アウトプット(結果)が生じたのかそのプロセスを解明することが大切です。プロセスの中に多くの問題となる不具合や不手際が生じています。これが解決すべき問題点ですが、その際に重要なのは明らかな問題点だけではなく、潜在化している問題点を推測することです。ここに問題の本質的な原因が潜んでいることが多いのです。

4)原因の究明
 問題を解決するには、その原因を究明することが大切です。トヨタでは、なぜを5回繰り返せという合言葉が浸透していることが有名ですが、問題の所在を広く深く、MECE(モレなくダブりなく)に因果関係や相互の関連性を考慮しながら系統的に究明します。そしてはじめて根本的な原因を突き止めることができるのです。

5)解決策の策定
 問題の解決は、アイデアを沢山並べれば済むわけではありません。原因を突き止めて、問題点を明確にする中ではじめて的確な解決策が打てるわけです。根本的解決策は、繰り返し起きている問題や重要な影響を与えている問題の再発防止ができる対策でなければなりません。相変わらずのもぐら叩きに終始しないように気をつけたいものです。

6)対策の実行
 対策の立案までは上手くいっても、実行し結果を出さなければ意味がありません。目に見える成果を出すには、計画段階でどのように進めるか手順やスケジュールを明らかにしておくことが大切です。そしてどのようなリスクがあるか事前に予防策を講じておければ申し分がないでしょう。

 問題解決のステップは以上ですが、人との対話でこうしたことを、時間を掛け順序だてて進めることは困難です。ある程度この枠組みを活用して論理的に話し合うことが、説得の第一歩になります。

2.傾聴
 相手の立場に立ち、言わんとするところを注意深く聴き取ることが「傾聴」ということですが、そのための心構えとして次の3点があります。

1)相手の自尊心の尊重
 人間は誰しもが人格を持った貴重な存在です。精神的に傷つけられると相手を恨むことになります。したがって、悪い行動の事実は指摘しても人格に触れてはいけません。事実に触れ、人格に触れないのが原則です。

2)相手を理解する
 人の理解の仕方には次の5つのタイプがあります。

 (1)評価的理解=自分の基準で相手の考えを推測するため、相手の気持ちは考えません。
 (2)解釈的理解=自分の枠組みの中で相手を理解します。主観的(自分の頭の中だけで)に
  相手のことを理解したつもりになります。
 (3)指示的理解=相手の問題を全部背負い込み、こうしたらどうかとお節介を焼きます。
 (4)分析的理解=問題点は何か原因を客観的に分析します。しかし、相手の気持ちは配慮しません。
 (5)受容的理解=相手の感じるままに、共感して気持ちを理解します。相手の枠組みの中で相手を
  そのまま理解します。

 ありたい理解の姿は、(5)受容的理解ではないでしょうか。できる限り人の話は全部聴いた上で対応するように心がけてください。

3)相手の話を共感的に聴く
 相手の気持ちを理解するには(1)表層的にうなずきや相づちを打って態度に表したり、(2)深層の相手の真意を理解したりする両面があります。相手の心情に配慮して共感的に聴くスキルにはアクティブ・リスニングがあります。積極的傾聴ともいいますが、相手の感情を理解するときには欠かせないスキルです。コーチングの主要な技法でもあるので、ここでは詳細は割愛いたします。

 このように理と情の両面からアプローチすることで、説得の効果が高まります。クールヘッド・ウォームハートという言葉もあります。問題解決の手法で筋を通して冷静に語りかけ、傾聴のスキルで全てを受け容れ熱く心に飛び込んで、より良い人間関係を築いていただければと思います。


□藤﨑 学(ふじさき まなぶ)
 藤﨑ビジネスサポートオフィス 代表
 中小企業診断士、ITコーディネータ


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