加藤 茂
< 中小企業の未来予測経営 >
1.未来を予測する
2002年以降続いていた景気拡大期もどうやら終わりを迎えたようです。米国のサブプライム問題、さまざまな材料の高騰、円高 といった主に海外に端を発する環境要因が影響を与えました。日本は、人口減少、高齢化の急速な進展といた日本固有かつ長期 的なトレンドとしての景気悪化要因も持ってます。 大企業は今回の景気拡大期を上手く捉え、大部分の企業が体力を蓄えること が出来ました。中小企業では体力を蓄えることが出来た企業はさほど多く無いと思います。ドッグイヤー、マウスイヤーと時間 軸が短くなってきている現代において、企業を発展させていくことは非常に難しいと思います。
会社の寿命を超えて、 企業を 永続的に発展させていくためには、新規事業を育成していく必要があります。中小企業は失敗すれば経営基盤が弱いため命取り になりやすいと考える向きも有りますが、大企業とて相対的には同じです。既存事業も安泰ではないのに新規事業に力を入れら れるかと言って新規事業にはとかく背を向けがちですが、既存事業と新規事業の重要性は変わりません。永続的に成長を続けら れる既存事業はありえません。中小企業こそ新規事業に積極的に取り組んでいくべきではないかと思います。
まず、現時点で既存事業の棚卸しをしてみる必要があります。現在の事業の未来を予測できますか。5年後、10年後にどのよう な状態になっているでしょうか。新規事業の重要さはご理解いただけると思います。
2.顧客への販売対象を考える
では、新規事業を始めよう、と思われたとしてどうしますか。ネタがない、人が居ない、お金が無い、という状態に陥るかもしれません。この場合に役立つ新規事業の着眼点に関して、まず考えてみましょう。鍵は「顧客の購入対象は何か」を改めて考 えることにあります。
製品・サービスを顧客が購入する際には、その製品・サービスを購入するだけではなく、「利用、保管、処分費」も考えること になります。たとえば、自動車を購入する際には、保険料、駐車場を借りる場合には駐車場代も考えて購入せざるを得ません。 駐車場代は都心であれば、車のローン以上にもなります。また、購買取引に要する時間や利用するために消費する時間といった 「時間」も考えることになります。たとえば、忙しいビジネスマンであれば値段が安い遠くのスーパーマーケットに買い物に行 くよりは、高くても近いコンビニエンスストアで日用品を買うでしょう。値段以上に時間が重要なのです。「時間」と似ていま すが「手間」も考えます。ネットでお勧めの本を買うという行為は、時間がないためというばかりではなく、本を選ぶ面倒な手 間を省く行為といえます。
つまり、顧客は「金額+時間+手間」に対して総合的に製品・サービスを選択しているわけです。ヒットしている製品・サービ スは、この観点で製品・サービスのカテゴリーを広く捉えたものが多いと思います。レンタルショップ、ネットショップの概念 はその部分にポイントがあります。自社ではなく顧客に重心をおいて、自社の事業の枠を改めて考えてみませんか。新規事業の 着眼点になります。
3.儲けの勘所を考える
着眼だけではビジネスになりません。儲かっている会社・事業には理由があります。それは儲けの勘所を心得ているのです。儲 けられる顧客、儲けられる場所、儲けられるタイミング、儲けられる一部分、といろいろなパターンはあります。
いくつか例を見てみましょう。儲けられる顧客としては、昔の三越の上得意があります。三越ですべて買うという上得意の存在 が利益の源泉と言われていました。一見客は上得意を獲得する際の入口であったと言えます。
儲けられる場所としては、コカコ ーラの自動販売機でしょうか。コカコーラはスーパーの特売、マクドナルド、自動販売機、値段はマチマチです。儲けは自動販 売機、スーパー、ファーストフードへの卸などはブランドを広げるためである、と割り切っています。
儲けられるタイミングと しては、AV機器での普及フェーズ初期が該当します。コモディティ化してしまう過程では価格競争となり儲けは取り難くなり ます。規模の論理が中心となります。儲けられる一部分の例としては、コピー機のトナー・カートリッジがあります。繰り返し 消費するトナー・カートリッジは他社参入もほとんど有りません。
新規事業のアイディアが出来た時に、儲けの勘所はどこかを考えて見ましょう。
また、既存事業に対して見てみましょう。成功しているビジネスであるほど儲けの勘所が明確に上げられるはずです。
4.未来予測経営
既存事業で現在は安泰と言う企業であっても、未来を予測した場合に安泰と言えるでしょうか。
未来を予測し備えた経営を心がけていただきたいと思います。そのポイントとしては次の3つです。
1)自社の未来を棚卸しする。
2)新規事業の着眼・探索を行う。製品・サービスの再定義からスタートする。
3)儲けの勘所を考える
本コラムが、皆様の経営のヒントに少しでもなればと思います。
□加藤 茂
中小企業診断士、
社団法人中小企業診断協会東京支部中央支会所属