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専門家コラム 「外国人高度人材の受入について」(2008年6月)
山川 美穂子

< 外国人高度人材の受入について >

 高度人材の受入に関する議論が盛り上がっている。外国人労働者の受入についての議論の中でも、高度人材の受入については少し幅広い視点からの議論が必要である。

1.高度人材とは
 一般に、高度人材とは、在留資格のうち、教授、芸術、宗教、報道、法律・会計、医療、研究、教育、人文知識・国際業務、技術、技能、投資・経営、企業内転勤の専門的技術分野の人をいい、2006年には約15.8万人が日本に滞在している。異なる教育や文化を背景とした発想は、我が国の国際化のみならず、経済社会の活性化のためにも重要であり、政府も高度人材の受入には積極的である。滞在人数は1996年に7.8万人だったので、この10年間に約2倍になってきている。
 こうした人材を受け入れている事業所は、中小企業も多い。事業所規模でいえば、300人未満の規模の事業所に勤務する者が6割以上いる。しかし、その就業状況を見てみると、5割弱は非正規社員であり、また月額報酬も20万円台が65%に上る(資料:法務省)という状況である。
 必ずしも期待どおりの活躍をしていただいているとはいえないようだ。そこで、受入を増やすとともに、こうした人材をもっと活用する政策が必要だ、というのが最近の議論である。

2.外国人労働者の受入の論点
 高度人材の受入を含め、外国人労働者の受入には多くの論点がある。
 実際に、不法就労を行っているとみられる不法残留者数は、この10年間でみれば減少しているものの、2006年に約17万人になっている。こうした不法残留者が我が国の雇用や治安にある種の影響を与えているとの指摘は避けられない。
 しかし、高度人材の受入なしに日本の将来があるかというと、やはり心もとない。例えば、高度人材の在留資格の中で、人文知識・国際業務(英会話学校などの語学教師を含む:在留人数57,323人)に次いで多数を占めているのが、技術(機械工学等の技術者、システムエンジニア等:在留人数35,135人)であり、そのうち6割以上が情報処理分野である。

3.情報処理分野の高度人材の受入は喫緊の課題
 情報処理の分野は、中小企業でも活用が可能な部分なので、少し深く分析してみよう。
 情報処理を始めとしたICT分野は、長く日本が世界をリードしてきた分野である。しかし、近年国際競争力の低下が著しい。携帯電話などは、日本企業が結構強いのではないかと思われる分野である。しかし、実際に世界市場でのプレーヤーは、ノキア、サムソン、モトローラ、LGで、5位にようやくソニー・エリクソンが顔を出す状況である。アジアのICT企業をみても、韓国勢は強いし、中国・インド・台湾も強烈な存在感を示している。
 ご多聞に漏れず、日本のICT分野には世界に伍していく人材が不足している。にもかかわらず、ここ数年、情報工学系学部学科は人気がなく、競争率は下がり続けている(資料:総務省)。学生が魅力を感じる職種は営業企画・営業で、情報システムは人気がない(毎日コミュニケーションズ調べ)。売るモノなしに営業といってもしかたない、と思うのだが。
 ちなみに日本全体で、ICT関連学科の卒業生は毎年3万人ぐらいだと思う。他方、インドのICT関連学科の卒業生は2007年で29万人。この人材の厚みの圧倒的に不利な状況を改善するためには、外国から高度人材に来ていただくしかないという主張も、確かに一理ある。

4.高度人材受入の条件整備
 そこで、人事評価の公平・透明度向上や留学生の就職あっせんの促進などで企業における外国人の活用を促進したり、在留資格の取得要件を拡大したり、英語教育をはじめ外国人が住みやすい生活環境を整えようということになる。既に、平成19年のアジア・ゲートウェイ構想や、規制緩和推進3カ年計画(平成20年3月)などにおいて、高度人材移入に資する在留期間の見直しや「留学生30万人計画」の策定などが提言されている。既に、こうした計画を今後着実に実行していただく、という段階に来ている。

 しかし、ここにいささかの問題が存在する。外国人が住みやすい生活環境を整える上で、英語に弱い国民性は損ではないか。
 欧州にアイルランドという国がある。エンヤとか、ケルティック・ウーマンとか、日本では比較的癒し系の音楽が支持を集めている国である。20年前、アイルランドは貧しい国だった。日本の一人あたりGDPが1万ドルを突破し、「1万ドルの罠」とかいわれていた1985年、アイルランドの一人あたりGDPは5,370ドルだった(ちなみにこの年の日本は11,303 ドル)。2006年の日本の一人あたりGDPは 34,125ドル。アイルランドは 51,920ドルである。この驚くべき成長は、(為替の影響もあるが)アイルランドがユーロ圏で唯一の英語を母国語とする国であるという事情を抜きにして語ることはできない。

5.終わりに
 高度人材の獲得にしても、海外投資の呼び込みにしても、我が国の英語環境が充実していれば(つまり30年前から英語教育に力を入れておけば、という意味でもあるが)、より多くの優秀な人材を我が国に招じ入れることができていたかもしれない。小学校における英語教育が始まる。賛否両論があるものの、 我が国の英語環境の充実に何らかの形で資するものと期待される。
中小企業においても優秀な情報技術者を、語学の壁を超え海外から獲得し活用している企業も多い。人材不足を憂慮する中小企業では、今後はこうした高度人材の活用という選択肢を検討すべきであろう。


■山川 美穂子
中小企業診断士、社団法人中小企業診断協会東京支部中央支会理事。
非正規雇用をはじめとした人材活用分野で、コンサルティング等を行っている。


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