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専門家コラム 「ICタグの動向と今後の課題」(2008年5月)
石橋政俊

< ICタグの動向と今後の課題 >

 ICタグ(RFIDシステム)の利用が導入期を過ぎ急速な普及期に入ったようである。総務省のU-Japan(ユビキタスネット・ジャパン)では、2010年にユビキタスネット社会の実現が展望されているが、次世代バーコードとして、ICタグは今後さまざまな分野への利用が広がると思われる。ICタグの動向と今後の予測、克服すべき課題などを概観する。ICタグの活用は中小企業にとっても経営課題の1つになってこよう。

<ICタグの動向>

■ ICタグの市場規模の推移(数量ベース)
 2003年度      1340万枚
 2004年度      1580万枚(対前年比118%)
 2005年度      2170万枚(対前年比137%)
 2006年度      3200万枚(対前年比147%)
 2007年度(見込み) 5150万枚(対前年比161%)
 2010年度 予測  2億2400万枚(対2007年度比435%)
 2012年度 予測 17億9200万枚(対2010年度比800%)   
-出典;雑誌(印刷界2008.3)からの孫引き。原典:矢野経済研究所調査資料「2007年版RF-ID(無線ICタグ)市場マーケテイングレポート」(2008・1・10)-

○ 2007年はICタグが導入期から離陸期に入り、今後加速度的に普及するとみられていたが、上記データおよび予測はこのことを裏付けている。2007年はICタグ元年という説もある。

■ 需要分野別構成比と今後の予測
  【 現 在 】  2007年度見込 (数量ベース)       
 (1)物流分野(輸送、倉庫関連など)・・・・・・・・・・・25.2%              
 (2)流通分野(小売関連など)・・・・・・・・・・・・・・19.4%
 (3)製造分野(FAなど)・・・・・・・・・・・・・・・・13.6% 
 (4)アミューズメント関連分野・・・・・・・・・・・・・・9.7%
 (5)レンタル・リース関連分野・・・・・・・・・・・・・・2.9%
 (6)その他分野・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・29.1%
  【 今 後 】  2012年度予測 (数量ベース)
 (1)流通分野 ●商品管理用タグ(POS関連)等・・・・・ 55.8%
 (2)物流分野 ●宅配便伝票や配送ラベル     
         ●物流管理(トレーサビリテイ-、SCMなど)
         ●航空手荷物タグなど
               ・・・・ 物流分野合計 37.4%
 (3)その他分野・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.8%

○ 以上は、同調査による算出結果である。現在は物流分野、流通分野、製造分野が多いが、今後は物流分野と流通分野の成長が著しく(2分野で90%を超える)、構成比が大きく様変わりすると予測されている。他分野での利用もあるが、2分野での圧倒的な数量の増加で、相対的に他分野での構成比は僅かになるということだと思われる。
  
■ ICタグの活用例(実験段階を含む)
(1)回転寿司:皿の底にICタグをつけ、値段の異なる皿の金額を一度に読み取り清算。
(2)物流:パレット(荷台)にICタグをつけ、配送拠点での仕分け作業などを効率化。
(3)百貨店:婦人靴(三越、阪急百貨店など)にICタグを貼付し在庫管理。
  店頭でのデザインや色、サイズ別の在庫がわかるので顧客満足の向上に寄与。
(4)製造業:「生産指示書」を文書からICタグに。ラインを通過するだけで作業内容や履歴がわかる。
  リアルタイムに工場の動きがつかめる。
(5)間接部門:従業員にICタグを持たせての出退勤管理と、重要文書にICタグをつけての文書管理。
(6)浜松市立図書館:書籍にICタグをつけて数百万規模で蔵書管理。
(7)学校:生徒証にICタグをつけ子供の登下校や位置確認を行うサービス。
(8)東京都の医療廃棄物追跡システム:有害性の高い医療廃棄物を排出元の病院から焼却する
  までの追跡管理。
(9)日本通運:トランクルームの管理コンテナにICタグを貼付し、自社開発の遠隔在庫管理システム
  で正確な保管場所を管理。
(10)植山織物:シャツ用反物にタグを取り付け検品や棚卸しの精度向上に活用。
(11)食品スーパーのエスコ:同社の物流センターでカゴ車の紛失と誤出荷防止に活用。
(12)京都銀行:書類を支店別・保存年限別に仕分け、保管箱にICタグをつけ集中管理。
(13)ヨドバシカメラ:自社物流センターで注文内容と家電メーカーの納品物が一致するか検査する
  検品作業の効率化(メーカーの物流センターでICタグを貼付して出荷)。
(14)養豚業界:P社等はICタグを豚の出生時に耳に取り付け、出生からと畜、最終的な枝肉段階
  までの各種情報を一頭ごとにDB管理するトレーサビリテイシステムを導入。
(15)金融業界:(12)のほか、三井生保のICタグを活用したパソコンの入出庫管理、みずほ信託銀行
  の電子媒体管理(CD等の媒体ケースにICタグを貼付)。
(16)その他:各業界での実証実験が行われている。アパレル業界の日中企業間SCM、総合
  スーパー業界の賞味期限日付管理、出版業界のICタグによる製本・取次・販売・リサイクルまで
  の業界全を通した流通の効率化、家電業界のアフターセールスまでカバーする在庫管理の検証、
  コンビに業界では弁当工場での中食商品へのソースタギングとICタグ対応レジなど、各業界での
  ICタグ導入実験が進んでいる。

○ 以上のように、実験段階を含めICタグの活用分野は広い。こうみてくるとICタグはバーコードに代替するだけのものではなさそうである。バーコードと違ってICタグにはデータの書き込みもできるし、レジでの一括清算や、在庫も常に把握でき棚卸しも一瞬で終わる。ICタグを顧客サービスの高度化に活用する取り組みも始まっている。例えばICタグを活用すれば、ワインボトルをカウンターに置くだけで、リーダーがデータを読み取り、ワインの産地や特徴などをデイスプレイに表示させることも可能である。活用方法はアイデア次第といえる。今後はICタグを使った新しいビジネスモデルが続々登場してくると思われる。

■ ICタグ普及のための今後の課題
(1)ICタグ低コスト化
 現在の価格は数10円から数100円といわれており高価である。1枚当りの平均価格が06年度の180円から10年度には20円になるという予測がある。また経済産業省の委託事業「響きプロジェクト」では5円を達成できる見通しが得られているが、バーコード(ほとんど印刷代で0円に近い)と比較するとまだ高い。サイズ0.05mm角という小型ICチップが開発され、将来は紙にすき込むことでき、コスト低減に寄与すると思われるが、大幅なコストダウンが必要である。

(2)標準化の推進
 標準化推進団体には「EPCグローバル」と「ユビキタスIDセンター」の2つが
あるが、目指すべき方向に違いがある。前者は流通などに絞った早期の実用化を、後  
者は歩行者への交通情報やトレーサビリテイなど広範な分野での利用を目指している。いずれにしても、普及に向けたデータ項目の策定や技術規格の標準化が不可欠である。

(3)プライバシー問題
 ICタグの性質上、遠隔から所有者に知られることなく通信できるので、消費者が購
入する物品にICタグが貼付されると、本人の了解なしにその物品の所有や、そこに含まれる個人情報、例えば本のタイトルを読み取り主義・主張などの情報が読み取られる可能性がある。お客にタグが渡る時点で読み取りを不可能にしたり、通信距離を短くするなどの機能を付加するなどの防御対策が必要となる。

(4)その他の問題
1) ソ-スタギング:タグは商流の上流部分での取り付けが期待されるが、用途に応じた独自の貼り付け作業や物流過程でのJANコードとタグコードの関連付け作業の負荷がかかる。タグの装着費用を誰が負担するかを明確にし、サプライチェーンにおけるプレイヤーごとの費用対効果の検討が必要である。
2) タグの廃棄・リサイクル:ICタグは貼付された商品などと一緒に廃棄されることがほとんどであろう。したがって、リサイクルにはICチップの分離技術やタグの製造工程での改良が必要となる。
3) その他の技術的課題:読み取り率100%の確保、タグの信頼性、金属対応タグ(特に家電業界)の低コスト化、読み取りエリアの限定(関係のない付近のものを読み込まない)などの課題があると思われる。

○ 以上のようにICタグにはまだ多くの課題があるが、これらを克服しながら普及が進んでいくと思われる。中小企業にとっても、ICタグの活用による問題の解決や、他社との事業差別化のための活用、新しい事業展開など、新しいビジネスモデルの構築が今後の経営課題になってこよう。


□石橋政俊(いしばしまさとし)
 ビーエスマネジメント代表
 中小企業診断士、ITコーデイネータ


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