岩崎 明
< 原価管理情報の活用で黒字転換を果たしたK社 >
1.トラック運送業を取り巻く環境変化とK社の依頼
燃料費の高騰で中小のトラック運送業者は四苦八苦している。K社も80台くらいの車両を持っているが、赤字経営が続いており、早急な改善が必要とされた。
K社が困っていたことを簡潔にまとめると次のようになる。
(1)原価計算の仕組みが出来ていない。
(2)全体損益の把握は出来ているが、原因の分析が出来ない。
(3)自車、傭車の運行の判断が出来ない。
(4)採算に合う輸送エリアが分からない。
(5)コンピュータ・システムのどこに問題があるのか調査・指摘して欲しい。
2.経営診断の進め方
K社の経営診断に関しては、次のような内容で経営診断を進めることになった。
目的 ⇒ 情報化を通じて赤字の経営体質を黒字にする。
準備 ⇒ 情報診断を通じ、人的レベルと情報化のレベルの関連を理解してもらう。
(関係) (プロジェクト・メンバーの人選)
方法 ⇒ 社長をリーダーに情報化プロジェクトを立ち上げる。
(月2度の会合、ただし宿題あり)
3.原価管理の中心にある売上の把握
(1)財務会計による売上(出発地 ~ 目的地)
(2)管理関係による売上(出発地 ~ センター ~ 目的地)
※センター利用料、中継料を別途計算
K社の場合の原価計算で難しいのは、途中に物流センターが入ることにある。このため、財務会計では出発地で売上を計上すればいいが、管理会計では車両別・荷主別売上そのものの把握が困難であった。ここでの改善の中心は仕組みを作りながら情報部門をいかに巻き込んでいくかにあった。
4.計数を読める人材を育成する
正しい数字が出せれば改善が進むかというと、必ずしもそうはいかない。トラック運送業で現場の管理を進めるための情報として、(1)走行1km当たり売上高、(2)車両1台当たり売上高、(3)燃料1リットル当たり走行キロ、(4)運行効率(稼働率×実車率×積載効率)(5)作業1時間当たり売上高、という原単位が通常使われている。
これらの原単位が読める人とは、「荷物と人と車の気持ちが分る人」であり、自分の仕事に誇りを持っている人でもある。これに対して、多くの職場においては、労働環境の悪化から職場に対して不平不満を持つ人が増えているのである。
5.ルート別の輸送手段の選択
計数は最終的に意思決定につながらなければ意味がない。K社のケースにおいては、ルート別輸送手段の選択につなげることによって採算性の向上を実現した。
(1)採算ベースに乗るエリアの確定(燃料費の高騰でエリアが狭まっている)
(2)配送時間(発・着)と労務管理
(3)有料道路の使用許可
(4)積載車両の選択(10t、4t、2t)
(5)自車を使用するか、傭車を使用するか
(6)運賃・料金の値上げの可能性
(7)人的レベルの向上(配車担当、乗務員)
6.変わる経営資源の重要性
経営資源というと従来は、人、物、金という答えが普通であった。エネルギー高騰、人口減少という時代に「新しい成長」を目指そうとすれば、経営資源はヒト[人材力]、ワザ[技術力]、チエ[情報力]の時代に入る。
情報創造とは、顧客との関係づくりを軸に、業務改善、人の成長を目標に、ITを使って仕事の仕組みを創造し、連続的改善に取り組むことである。
■岩崎 明(いわさき あきら)
株式会社ソウケイ・ハイネット 代表取締役社長
中小企業診断協会 東京支部中央支会理事
経営革新及び情報システム改善コンサルティング
経営再建コンサルティング
著書「幸福企業を作る情報管理」「トラック物流」「トラック経営革新」「トラック環境経営」
「共生共益を実現する人づくりの経営」他多数
連絡先 株式会社ソウケイ・ハイネット
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