社団法人中小企業診断協会東京支部 中央支会
Search
Mail Magazine
詳しくはこちら
専門家コラム 「成功は失敗のもと」(2008年8月)
大野 晋

< 「成功は失敗のもと」 >

 「失敗は成功のもと」とよく聞きますが、「成功は失敗のもと」ということが起こります。「成功」が、どうして「失敗」に結びつくのでしょうか。

 『韓非子』の中に次の文があります。

 宋人ニ田ヲ耕ス者アリ。田中ニ株アリ。兎走リテ株ニ触レ頸ヲ折リテ死ス。ヨリテ、ソノスキヲステテ株ヲ守リ、マタ兎ヲ得ンコトヲネガウ。兎ハマタ得ベカラズシテ、身ハ宋国ノ笑トナレリ。

 木の切り株に、兎がぶつかり死んだからと言って、そんな事が何度も起こるはすがありません。この話は、もとはおろか者を笑った民話でしたが、韓非子はこのあとで「いにしえの聖人の教えにこだわり、現実に対応できない世間の論客たち」を「ミナ守株ノ類ナリ」と非難し、「世異ナレバ、事異ナル」といって、状況の変化に対応する必要をいっています。

 ビジネスにおいても、一度、成功したビジネスモデルは次の瞬間、もう古いものとなっています。競合他社の戦略、消費者の考え方など環境は常に変化しています。環境が変化したならば、以前に成功した戦略・方策はなかなか通用しません。

 ところが、判っていてもなかなかうまくいきません。何故でしょうか。それは、成功した市場環境への対応が次第に定型化し、そして定型化した行動様式のベースを不変のまま、非効率的な部分のみを改善・修正し、戦略自体を変えることなく経営活動を続けてしまうからです。

 このような経営は、市場環境が基本的に不変である場合には、成長のための有力な手段です。しかし市場環境が変化した時、意味をもたなくなります。 

 成功した戦略・行動様式は、その成功ゆえに硬直化し、刻々と変化する市場環境にそぐわないものとなり、やがて致命的なウィークポイントとなってしまいます。「成功は失敗のもと」とは、まさにこの硬直化と市場環境への不適合によって起こるのです。

 市場環境は、常に変化しています。ぜひ、この「成功」→「行動の定型化」→「非効率部分の改善・修正」といったサイクルに陥らないよう、環境の変化をしっかり捉えコンティンジェンシープランを描き、行動を起こしていきましょう。


■大野 晋
中小企業診断協会 東京支部中央支会理事


Copyright All rights reserved (C)1997-2011 社団法人中小企業診断協会東京支部中央支会
このページのトップへ