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専門家コラム 「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」(2008年9月)
石川 秀朝

< 「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」 >

 孫子の兵法にも「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」とあるように、ビジネス(マネジメント)でも、相手(メンバー)の性格と自己の性格を理解した上で行動すれば、成功度は飛躍的に高まります。
しかし、自己の性格や相手の性格を何の基準もなく容易に理解・判断することは困難です。

 そこで今回、イスラム教の門外不出の秘伝の公理、人間学の一つである、ギリシャ語で「九」を意味する「エネア」と「図、書かれたもの」を意味するというキーワードからできた「エニアグラム」を紹介させていただきます。
 エニアグラムには、「人間には9つの性格のタイプがあり、誰もがそのうちのどれか一つを待ち合わせている」という教えであり、この「9つの性格」は、現代の心理学で用いられる性格分類に酷似しており、一人ひとりに与えられた性格を系統立てて説明しています。このエニアグラムを自分の心の動き、対人関係等を理解するために役立ててみませんか。
 以下に、エニアグラムの特徴の一部を紹介します。

■ 3つの中枢(センター)
 人が現実を理解する方法は3種類あります。それは、(1)考える、(2)感じる、(3)直感する、です。つまり、私たちは現実を認識するための「3つの中枢(センター)」があるのです。人によって、このセンターのどれを最も頼るのかは、あとで紹介する9つのタイプによって異なりますが、まずは、この3つの中枢について紹介します。

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(1)思考中枢(タイプ:5,6,7):「思考」を好む
 このタイプは、思考に重きを置き、生き生きとした想像力を持ち、分析能力にたけ、いくつもの考えを
関連付けて検討できます。
 人と交わるのが好きな方であっても、一人でいろいろな考えをめぐらすことにも、心から満足できます。逆にストレス時には無意識ではありますが、このタイプの方の「考える」は、実は将来こうなるのではないか、という危惧を先取りする場合もあります。
(2)感情中枢(タイプ:2,3,4):「感情」を好む
 このタイプは、他人とのつながりを非常に重視します。他人が自分をどう見ているのか、自分とどう関わっているのかをいつも気にしています。意識的にせよ、無意識的にせよ、他人が何をほしがっているのか、どんな気分でいるのかを敏感に察知し、それに応えることができます。また、他人と良い関係をつくることができれば、「感情中枢」の特徴である空虚感や、ないものねだりといった気持ち忘れることができます。
(3)本能中枢(タイプ:8,9,1):「本能」を好む
 このタイプは、現実に存在するものが大切で、行動を通して世の中に「存在」したいと思っています。熟慮を重ねることはあっても、最終的には本能の命ずる行動をとります。
自分が最も優先すべきことに気づかないほど献身的で自分を省みないタイプです。また社会で活躍したいという気持ちが強く、タイプ1と9の方は、この気持ちによって表面化する「怒り」の感情を鎮めることができます。

■ エニアグラムと9つの「性格タイプ」
 人は誰でも、見聞きし、感じたことを、自分だけの「フィルター」を通して解釈します。
 これから紹介するエニアグラムのフィルターの基本的な考え方は、以下の2つです。

1) 誰でもが、9つある「フィルター」の一つを持っている。その「フィルター」を通して、人はものを考え、人生の方針を決める。しかし、その習慣は心の奥深くにしっかり根付いているため、その「フィルター」を本人が意識することは無い。
2) 「フィルター」は、目的も無く作られたものではなく、傷つきやすい人格や信仰、自我と言った人間の本質的なものを守るために作られている。

 上記基本的な考え方をもとに下の図のような9つのタイプに分けられ、そのタイプは、前述の「3つの中枢」に分類され、その特徴が9つのタイプに反映されます。
 各特長は、リーダー、メンバー等の役割によってもそれぞれ異なりますが、今回は字数の制限上、
リーダーに絞って、具体的な9つのタイプにおける強み(特徴)を紹介いたします。

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(1)タイプ1:教師(完全でありたい人)<チームカラー:節度と緊張感>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)完全性、誠実性、信頼性、および責任感がある。
 (2)良心的で節操があって公平で論理的である。
 (3)個人的に高い道徳心、および行動規範があり、考えが明快である。
 (4)組織的に秀でていて、周到で良質な判断を下す。
 (5)合理的で、客観的になるように努力する。
 以上の強みを持った「高水準要求派安定型」のリーダーの組織は「秩序と信頼をモットーに一致団結し、仕事の正しい順序、仕事の質の高さを要求することに焦点を合わせたチーム」となります。

(2)タイプ2:奉仕家(人の助けになりたい人)<チームカラー:チーム一丸>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)メンバーの福祉、利益について心配している。
 (2)自分の時間と資源(モノ・金)を他人のために使う。
 (3)焦点は他人のニーズと共にグループ全体の福祉に置かれる。
 (4)友好的、外交的で愛想が良い。
 (5)情が深く、弱者や部外者に対しても擁護者になれる。
 以上の強みを持った「一緒に仲良く支援型」のリーダーの組織は「温情と相互互換をモットーにメンバーが和で結束し、人が必要とするものと顧客サービスに焦点を合わせていくチーム」となります。

(3)タイプ3:経営幹部(成功を追い求める人)<チームカラー:出し抜き型勝利志向>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)メンバーが目標を達成し仕事を完遂できるよう動機付ける。
 (2)グループ精神を強調する。
 (3)自己のグループメンバーに誇りを持つ。
 (4)働き者で、仕事人間で、有能で、仕事を予定通りに仕上げる。
 (5)個人のスキルの最高水準に見合う仕事をする。
 (6)変化する状況に柔軟に適応できる。
 (7)よいスポークスマンにもなりうる。
 以上の強みを持った「旗振り派実利型」のリーダーの組織は「効率とやる気をモットーにメンバーを組織化し、競争し勝つことと成果に焦点を合わせ、結果を出し成功を収めるチーム」となります。

(4)タイプ4:悲劇役者(特別な存在であろうとする人)<チームカラー:独自性を重視>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)結果や環境の変化が自身やメンバーにどう影響するかに敏感である。
 (2)良好な人間関係スキルを持っている。
 (3)将来のトレンドやアイディアを直感で知り、それらを活かしていく意思を持っている。
 (4)独創的で創意に富む。
 (5)美的なものへの関心と、それを表現しコミュニケートしていく良い送り手。
 以上の強みを持った「感性派個性尊重型」のリーダーの組織は「ユニークさと洗練さをモットーに独自性を尊重して、差別化された想像力の高いものを生み出して行くチーム」となります。

(5)タイプ5:学者(知識を得て観察する人)<チームカラー:思考解析型集団>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)専門領域における深い知識や優れた技術を有している。
 (2)非常に独創的、革新的で新たなモデルを創造する。
 (3)鋭い監察とそれに基づく洞察により、全体像をバランスよく展望できる。
 (4)準備の整った細かい作業遂行が得意である。
 以上の強みを持った「熟慮派システム化型」のリーダーの組織は「客観性と冷静さをモットーに専門家集団をつくり、理性的な構造と批評力のある思考に焦点を合わせて、知識と技能を提供するチーム」となります。

(6)タイプ6:忠臣(完全を求め慎重に行動する人)<チームカラー:協調路線>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)頼りになり、信頼性があり、忠実で働き者である。
 (2)他者がやりたがらない仕事を引き受ける。
 (3)ユーモアのセンスがあり、グループの合意形成の立役者である。
 (4)非常に責任感が強く、忍耐強い。
 (5)個人的な関係と相互のサポート関係を通じてグループアイデンティティを形成、維持するのが得意である。
 以上の強みを持った「全会一致派協同型」のリーダーの組織は「協力と忠実をモットーにチームワークをとって、人間関係と全員参加に焦点を合わせて責任と義務を果たすチーム」となります。

(7)タイプ7:エンターティナー(楽しさを求め計画する人)<チームカラー:ノリノリ盛り上げ型>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)物事に熱心、積極的で、新たなアプローチの試行に前向きである。
 (2)アイディアが豊富である。
 (3)物事を全員で楽しめるものにしたいと考えている。
 (4)生産性が高く、実践的で、熟練している。
 (5)多種の仕事をこなすのが得意である。
 (6)些細なことや規則にとらわれず、柔軟に進めることができる。
 (7)自分の考えを遠慮なく明確に述べることができる。
 以上の強みを持った「興味飛びつき派盛り上げ型」のリーダーの組織は「楽観と熱意をモットーにメンバーをその気にさせて、満足すること、楽しむことに焦点を合わせて、新規のアイディアを提案するチーム」となります。

(8)タイプ8:実力者(強さを求め自己を主張する人)<チームカラー:パワフル集団>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)ビジョンを持ち、率先してリスクをとる。
 (2)困難な決定を避けたり、間違いを認めたりしない。
 (3)他の人々に力を与える明確なリーダシップを提供する。
 (4)参加のメンバーを擁護する。
 (5)資源を動員したり、組織の威力を維持することができる。
 (6)対立を恐れない。
 (7)フェアプレイ、尊敬、そして直接的なコミュニケーションを要求する。
 以上の強みを持った「挑戦派主導権行使型」のリーダーの組織は「権威と自力をモットーに軍団としてまとまり、まずは行動することでテリトリーを支配・拡大していくことに焦点を合わせて、力でぐいぐいと押して行くチーム」となります。

(9)タイプ9:長老(調和と平和を願う人)<チームカラー:おっとり、ゆうゆう型>
 このタイプのリーダーには、以下の特徴があります。
 (1)控えめで、のんき、忍耐強く温和である。
 (2)対立を収束するのが得意である。
 (3)人を信用する。
 (4)楽天的で誰とでも協業でき、メンバー間に調和を構築することができる。
 (5)包括的で、人々を和合させる。
 (6)どの体制にも属さない。
 (7)謙虚で、他の人々が光り輝いたり、より目立って地位に就くことを容認する。
 以上の強みを持った「悠揚迫らぬ派調停型」のリーダーの組織は「同意と平和をモットーにメンバーを和合させ、日常業務に焦点を合わせて、忍耐強く他者を下支えできるチーム」となります。

最後に
 これまで紹介させていただいた「3つの中枢」と「9つの性格」は、どれが優れているとか、劣っているとかを紹介しているのではなく、これらの特徴を参考にし、自分自信に当てはめ、合致させ理解していただき、「自分の性格を味方につける」ことを提案させていただいています。
 自己の性格を理解すれば、その短所の対策を講じることもでき、自分の中の未発掘な可能性を引き出すこともできます。またこの特徴を相手に当てはめ、相手の特徴を理解することにより、より効果的な対応が可能となります。

 字数制限で充分な説明になっていないかも知れませんが、紹介させていただいた「エニアグラム」が、皆様方のビジネスの参考になれば幸いです。

 また今回は、「3つの中枢」と「9つの性格」の特徴を紹介させていただきましたが、自分自身がどの中枢、タイプに当てはまるのかを確認するためには、「エニアグラム・タイプ分類質問表」を使って確認してください。
 確認方法は、今回のエニアグラムの紹介のために参考にさせていただいた以下の書籍から確認するか、インターネットの検索エンジンを使って「エニアグラム タイプ分類質問表」で確認してください。

今回参考にさせていただいた書籍
(1)[TK式]ソニー強いチームをつくるコーチング(士気を高める実践的エニアグラム活用法)
 武田耕一著(大和出版)
(2)図解エニアグラム 9つの「性格タイプ」がわかる!
 カレン・ウェブ:鈴木秀子【訳】(三笠書房)

□ 石川 秀朝(いしかわ ひでとも)
 中小企業診断士 ITコーディネータ


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