佐々木和哉
< 低炭素時代の見える化手法(カーボンフットプリント) >
地球温暖化や排出量(権)取引などの記事がテレビや新聞等で目につくようになり、地球環境保護への関心が高まっています。また、日常生活においても、エコバックや簡易包装、省エネ家電への買い替えなど、環境へ配慮する消費者が増えています。
今回、二酸化炭素(CO2)使用量の見える化手法の一つとして、2009年度から試行が始まる予定になっている「カーボンフットプリント」について説明し、中小企業が今後取り組む方向性を考えてみたいと思います。
(背景)
2008年7月の北海道洞爺湖サミットに先駆けて、6月9日に福田内閣総理大臣のスピーチ『「低炭素社会・日本」をめざして』の中で、国全体を低炭素化へ動かすしくみとして、(1)「排出量取引」、(2)「税制改革」、(3)「見える化」、を掲げています。
このうち、(3)「見える化」の一つの手法としてカーボンフットプリント制度に言及し、「CO2排出の見える化によって、消費者が的確な選択を行なうための情報を提供することが重要である」と発言しています。これを受けて経済産業省は、制度の実用化や普及に関する検討と、カーボンフットプリントの算定・表示方法のあり方等をガイドラインとして策定し、試行品の拡大、市場への流通、ガイドラインの精緻化を図ることとしています。
(カーボンフットプリントとは)
「カーボンフットプリント」とは、商品・サービスの原材料調達から、生産、流通・販売、使用・維持管理、廃棄・リサイクルに至る商品・サービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスの量をCO2相当量に換算して、商品やサービスに表示していく制度のことです。具体的には商品・サービスに[CO2 ○○g]といった表示が付くものです。
海外では、英国のスーパーのプライベートブランドの飲料や洗剤などを始め、フランスやスイス、ドイツなどで表示を始めています。日本においては、飲料メーカーや食料メーカー、スーパーなどで表示に向けての試行が開始されています。
(カーボンオフセットとの関係)
最近耳にする言葉に「カーボンオフセット」がありますが、これは、日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスについて、(1)まず排出量の削減努力をできるだけ行い、(2)どうしても排出される温室効果ガスについてその排出量を見積り、(3)排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方です。すでに年賀はがきや金融商品、旅行やお菓子などのカーボンオフセット商品が続々と登場しています。「カーボンフットプリント」によるCO2排出量の正確な測定は、「カーボンオフセット」の普及を後押しすることにもつながります。
(カーボンフットプリントの意義と課題)
「カーボンフットプリント」には、以下の意義と課題があるとされています。
(1)意義
a) CO2排出量の商品への見える化により、消費者にCO2排出量の自覚を促すことができること。
b) 環境に配慮している企業であることを消費者にアピールする機会になること。
c) サプライチェーンを通じたエネルギー管理が可能となり、CO2だけでなくコスト削減にもつなげることができること。
(2)課題
a) カーボンフットプリント制度の普及や消費者への理解を深めること。
b) 算出の手間やコストを解消すること。
c) 製造コスト情報が外部に知られてしまうという企業の懸念を払拭すること。
(中小企業としての取り組み)
環境配慮企業であり続けることは、他社と差別化を図る競争優位要因として位置づけることができます。多くの企業が京都議定書でのCO2排出量の削減義務(1990年比6%減)の達成を目指すことなど、種々の環境配慮への取り組みを強化すると思われます。
今後、取引先から部品や材料のCO2排出量の算定を要請されるケースも考えられます。中小企業にとっても日ごろから自社のCO2排出量、産業廃棄物排出量などの環境負荷を把握し、「見える化」していくことが重要であると考えます。
そのためには、自社の省エネ促進や省エネ製商品の開発などの他、ISO14001やエコステージ、エコアクション21などの環境マネジメントシステム、MFCA(マテリアルフローコスト会計)、LCA(ライフサイクルアセスメント)などへの関心を持ち、取引企業へアピールしていく必要があります。
[参考資料]
福田内閣総理大臣スピーチ(2008年6月9日)
経済産業省 「カーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会の進め方について」(H20.6)
日経エコロジー「エコプロダクツガイド2009」
□佐々木和哉(ささきかずや)
中小企業診断士
中小企業診断協会東京支部中央支会理事
化学メーカーで、改善活動の推進や品質関係を担当。
<主な著書>
・「中小企業診断士2次試験 続々・80分間の真実」(日本マンパワー)(共著)
・「図解 REACH規則と企業対応」(日刊工業新聞社)(共著)
・「REACH登録実践マニュアル集」(技術情報協会)(共著)