齊藤 民治
< 融資を受けやすくする決算書の作り方 >
はじめに
サブプライムローンに端を発した景気の悪化が、日本の中小企業にも及んできている。このような状況の中で、会社の資金繰りは厳しさを増しており、金融機関から融資をスムーズに受けることは非常に重要となる。そこで、金融機関から融資を受けやすくする決算書の作り方を考えたい。
I 良い決算書
金融機関が企業に融資をする際の判断材料は、経営者の資質や今後の見通し等あるが、最も重要視するのは決算書である。
では、どのような決算書がよいのであろうか?
金融機関は、融資先企業を金融検査マニュアルに準じて格付けを行っている。格付けは、決算書を基にした財務分析により7~8割が決まる。その分析で重要視されるのは、我々が企業診断の際によく使用する下記のような財務指標である。
流動(当座)比率 流動資産÷流動負債×100%
自己資本比率 自己資本÷総資産×100%
売上対経常(営業)利益率 経常利益÷売上高×100%
総資本対経常利益率 経常利益÷総資産×100%
借入金償還年数 (有利子負債-運転資金)÷(経常利益+減価償却)
(少ない方がよい、金融機関により若干の違い)
したがって、金融機関から融資を受けやすくするためには、以上の指標を良くすることが重要となる。
II 利益を増やす
財務指標の数値を良くするには、利益を増やす事が重要である。利益を増やすには、企業の中身を調査し、問題を抽出し、対策を考え、実践していく事である。しかし、それには時間がかかる。
では、簡単にできることはないだろうか?
下記の方法は、経営者が決断をすることでできる、利益を増やす方法である。
1、役員報酬の値下げ
利益を増やすために、役員報酬を下げる(会社の状況や値下げの時期により、役員報酬が税金を計算する上での損金にならない場合があるので注意)。
企業の決算書を見ていると、利益が出ていないにもかかわらず、役員報酬を資金繰りが厳しいため、支払えずに未払額が増えているケースがある。このような場合には、すぐに値下げを検討する。
値下げを行えば利益が増えるので、利益に係る財務指標が改善される。又、経営者の納税額が減少するという効果もある。
2、代表者に対する債務の債務免除
代表者からの債務がある場合、代表者からの債務の免除を受ける。債務免除を行うと利益が増える。免除益が計上されて利益が出ても、繰越欠損金の範囲内であれば、納税は発生しません。
III 見た目をよくする
役員報酬も十分、低く代表者からの債務もない場合はどうだろうか?
このような場合でも、見栄えをよくする方法がある。
1、PL(損益計算書)
PLの見た目を良くするには、収益は上(上から売上、営業外収益、特別利益)、費用は下(上から売上原価、販管費、営業外費用、特別損失、法人税等)にできないかを検討する。下記は参考例である。
営業外収益の中に、受取リベートが計上されている場合
受取リベートを仕入から控除する。これにより、経常利益は変わらないが、売上総利益、営業利益が増加する。
営業外収益の中に、社宅家賃の従業員負担分が計上されている場合
従業員負担分を、販管費の地代家賃から控除する。これにより、経常利益は変わらないが販管費が減少して営業利益が増加する。
企業が不動産を所有していてテナントに賃貸している場合
受取家賃が営業外収益売上に含まれていれば、売上に含める。これにより、経常利益は変わらないが、売上総利益、営業利益が増加する。
費用については営業外費用の中に、資産の除却損や貸倒損失が入っている場合
除却損等を特別損失に計上する。これにより、税引前利益は変わらないが経常利益が増加する。
租税公課の中に事業税や利息や配当を受取ったときに源泉された所得税等が入っている場合
事業税等を法人税等計上する。これにより当期利益は変わらないが、営業利益、経常利益が増加する。
2、BS(貸借対照表)
BSの見栄えを良くするには、資産は上(上から流動資産、流動負債)、負債は下(上から流動負債、固定負債、資本)に計上する。下記は参考例である。
流動負債の短期借入金の中に経営者及び、その親族等からの借入がある場合
経営者等からの借入金を固定負債にもっていくと、流動比率等の指標がよくなる。又、経営者等からの借入については役員借入金等の科目を作り、長期借入金とは別科目にする。これにより、借入金償還年数の計算の際に役員借入金を有利子負債から除外され、償還年数が減少する。
代表者からの借入金がある場合
代表者からの借入金を現物出資する。これにより、負債が減少し、資本が増えるので、自己資本比率がよくなる。
おわりに
決算書の見栄えをよくする方法を、述べてきましたが、企業も人も最終的には中身が重要です。日々の中で会社の無駄な経費を抑えて、売上を伸ばす努力を行い、筋肉質の会社にしていくことが、最も大切である。
■齊藤 民治(さいとう たみはる)
中小企業診断士 税理士
株式会社T・K・S(Tax・Kind・Support)取締役